001_4月の叫び
初めまして、あまびとのすえと申します。姓はあまびと名はのすえ、てな感じ。
PNの由来は先祖が水軍衆の一員だったから。 割と有名な水軍衆(海賊)ですよ。
身体を壊して退職した身ですが、軽いリハビリ感覚で小説を書いてみました。
色々資料を集めたりするのも面倒なので、何も考えず、過去の記憶等を参考に
脚色&創作で済みそうなお手軽学園青春物です。暇潰しにでもなれば幸いです。
ストック分(20話)は毎日更新ですが、尽きれば不定期になります。ご了承下さい。
いつも通りの朝、いつも通りの通学路、そしていつも通りの校門を通り抜ける。
いつもより爽やかな心持になれるのは、季節と天候と何より体調が良いからだ。
これだけの好条件がそろえば、普段は煩わしいと感じる雑踏さえもが心地良い。
そんな爽やかなひと時にいつもと違うものを、誰かの気配を背後に感じ取った。
「・・・俺の後ろに立つな」
ふふふ~ん! 人生で一度は口にしてみたかった科白のひとつを使ってみたぞ。
某ロングセラー漫画の、某強面無口な暗殺者さんの名科白だ。 知ってるか?
「後ろに立たれたくないなら移動するが・・・ズボン、汚されているぞ」
何となく匂いで判ってはいたが、声を聴いて本人確認完了、親友の昂輝だ。
昂輝が俺の両肩に手を置き、右耳元にイケメン顔を寄せてきて優しく呟く。
いつもなら軽く肩を叩いて左に並ぶ我が親友殿、何故俺の背後を取るの?
・・・いや、それよりもズボンが汚されているとは、どういうことかな?
そんな疑問が顔に出ていたのだろう。 またも小声で話しかけてくる。
「多分・・・男の体液だな。 お前、痴漢されただろ?」
「えっ⁉ マジで?」 潜めた声に大声で返してしまった間抜けな俺。
その大声のおかげで、周りの連中から注目されてしまったではないか!
それにしてもこいつ、普段からイケボイスだが声を潜めるとイケ度が増幅
されやがる。 どうなってやがるんだ、一体。 羨ましいぞこんちくしょう。
「マジだ。 お前忘れていただろ? 提出日今日だぞ」
提出日と言われても何のことか解からない。 俺のうっかりをフォロー
してくれたのだろう。 イケメンなのに気が利くいい奴だよ、まったく。
おかげで多くの視線が俺たちから外れたが、何人かの視線はそのままだ。
まさか・・・体液に気付かれたのだろうか?
「見るな」 何処が汚れているのか? と確認しようとしたら昂輝に止められた。
そして頭を撫でられる。 一瞬何で?と思ったが周りの視線を上げる為だと理解。
この場合俺はどう動くのが正解なのだろうか?そう考えていたら声が聞こえる。
五十嵐と伊藤のアイアイコンビがこちらに駆け寄って来て、俺の左右に陣取る。
右に陣取る天パショートの美少女が一瞬俺を上目遣いで睨んだ後に小さく呟く。
「あんたは不用心過ぎるのよ」
五十嵐に指示されて左に陣取っただろう伊藤は何のことか解かってないようだ。
五十嵐が鋭いのか? 伊藤が鈍いのか? それともこれが男女の差なのだろうか?
まぁそんなことはどうでもいい。 先ずはズボンの体液・・・汚れをどうするか?
「映研の部室に予備のジャージがあるから、伊藤は鍵を取って来てくれる?」
悪いとは思いながらも伊藤をパシらせる。 こいつ、パシらされ体質なんだよな。
実質雑用係である生徒会副会長なんかやらされてるし、次期会長最有力候補だし。
文句も言わずに「じゃあ、部室で」なんて言いながら職員室に急行してくれるし。
「五十嵐はもう教室の方に行けば?」 「部室の中まで付き合うわよ」
・・・過保護なのか?多分過保護だろう。昂輝もそうだが、五十嵐まで過保護だ。
朝っぱらから・・・何で同級生の2人に保護者面をされなきゃならんのだろうか?
おのれ~っ、男の尻を触るだけでなくぶっかけ迄いたす変態痴漢野郎は許すまじ!
「だから『減るもんじゃない』で済ませていいわけはないと云っているだろ」
俺のボヤキを拾った昂輝の適切なツッコミにはぐうの音も出ない。
でもな、尻触られたくらいでキャンキャン騒ぐのも面倒だしなぁ。
・・・・・・・・・・・・
なんて口にしたら、五十嵐に無茶苦茶怒られるので黙っておく。
◇ ◇ ◇
「やばっ⁉ 開いてる!」
伊藤待ちの映研部室前で、何故か戸を開けようとした五十嵐が発した謎の科白。
WHY? ラッキーだよね? 開いてんなら入ればいいじゃん。伊藤には悪いけど。
「シー・・・黙りなさい。 美倉知らないの? 部室棟の噂」
五十嵐が小声で発した言葉に首を傾げ、未だ背後に張り付く昂輝に目をやる。
「こっそり合鍵を作って部室をホテル代わりに使っているという噂がある」
昂輝の言葉に納得。
「あー、そういや俺たちも去年ホテル代わりに使ったね」 「えええええっ⁉」
何故か酷く驚く五十嵐。 何をそんなに驚くかな? てか、声がデカいし。
ほら、扉が開いて沢瀬が出て来たし。 ・・・てか沢瀬? お前何で居んの?
「蒼君に五十嵐さんに藤堂君? ・・・こんな時間にどうしたのですか?」
いや、それ、こっちの科白だし?
◇ ◇ ◇
「いやぁ~、お互い痴漢には苦労するよねぇ~」 「笑い事じゃありません!」
俺の言葉に静かな怒り顔で応えるのは、映研部部長で幼馴染の沢瀬由佳理。
俺たち全員に敬語を使っているけど皆と同学年。 普段から敬語女子なだけ。
あと、ただ一人の本物の映研部員だったりする。 俺と同好な映画好き女子。
ただ一人の本物というのは、他の部員が幽霊だったり半幽霊だったりだから。
週に1、2回顔を出す半幽霊部員が、俺と伊藤に田辺という少し困った一年生。
滅多に顔を出さない幽霊部員が昂輝と五十嵐の2人。 田辺以外は全員二年生。
そんで、話を戻すが何故朝早くから沢瀬が独り部室に居たかというと、痴漢対策。
驚くことに6時半の電車に乗って来ているらしい。同じ駅スタートの昂輝なんか
8時の電車で間に合っているのに。 各駅停車利用の俺も似たようなもんだし。
「それで朝から部室で本を読んだり、部の雑務を処理したりしてるわけだ」
『鍵が無かったけど』と言いながらやって来た伊藤がコーヒーを飲みながら話す。
うん、伊藤は完全に無駄足だったけど嫌な顔一つ見せず、文句一つ零さなかった。
そんな人格者伊藤には、俺秘蔵の苺ポッキンを進呈したのだが何故か喰ってるの
は五十嵐だ。『あんたは痴漢にされるがままでしょ』なんて言っている。違うぞ。
「どう違うのよ? 好きなだけ触らせて、おまけに体液まで掛けられて」
「電車の場合はたった二駅だからだよ。4分なんてあっという間じゃん。
それに実際触られている時間は3分も無いし。それくらいなら・・・あっ⁉」
そこまで言ったときにしまったと思った。 沢瀬と五十嵐が怒気を発している。
「それくらいならぁ?」 「すんません、失言でした。でも3分って短いよね?」
俺は2人の怒りを鎮めるとともに疑問を口にした。 なのに五十嵐にキレられた。
「あんたは半分以上女なんだから、せめて半分くらいは女として振舞え!」
「俺は百パーセント男だよ! だから女の振舞いなんか無理だよ!」
「沢瀬、今日の放課後時間取れるか?」 「えっ⁉ いきなりどうしたんです?」
俺と五十嵐が言い争う中、唐突に昂輝が沢瀬を誘い始めた。 何、この展開は?
何の脈絡も無くいきなり過ぎるのではなかろうか? しかも口論の場のすぐ横で。
・・・五十嵐も伊藤も吃驚して、清聴モードに移行しちゃったよ。 当然俺もな。
「茜さんから頼まれたんだが、蒼のブラ選びを助けてやって欲しい」
「はい?・・・蒼君のブラ選び? 蒼君のブラジャーですか?」
「あぁ、俺にはちょっと無理だと思う・・・いや無理だ」
「ええっと、あぁ、男性用ブラジャーですね?」「いや、多分違う、これを見て」
そう言って昂輝が手にしたスマホに写るその画像は、昨日姉ちゃんに撮られた俺
のバストアップ写真だった。 風呂上がりに撮られたその一枚は当然に裸。
「 「 「 えええええぇぇぇっっっ⁉ 」 」 」
3人がそれを見て、驚きの余りに絶叫! ・・・正直俺も吃驚だ。
姉ちゃん・・・なんてものを昂輝に送ってくれちゃってるのさっ⁉
そんでもって、なんてお願いを昂輝にしてくれちゃってるのさっ!!!
沢瀬は一限目が自習だと知っています。
別クラスの残り4人は一限目サボりです。
ちなみに五十嵐以外は全員優等生だったりします。
特に蒼と昂輝と伊藤君の3人は、常に学年上位3位を独占してます。
蒼の首席は指定席で昂輝と伊藤が2位3位、沢瀬は4位か5位です。
それと3分は無理とは言いませんが、明らかに短いです。
多分前以てゴムなり何なりに用意していたものを使用したのでしょう。
どうでもいい補足説明でした。