第112話 お前らか!派手に脱走しやがったのは?
どれくらい時間が経っただろうか?
見張りの野盗も、捕まっている乗客達にも、睡魔が訪れてきている様だ。
見張りがこの様子だと、交代もあり得る。
交代前の油断している今かしら?
私はクーリエの方を向き、頷いて親指で行くわよ、となんとなくのサインを出す。
クーリエは気づいたようで、船長に近づき始める事を伝えてくれている。
船長が皆に伝え終わった所を見計らって、見張りに向けて風の魔法で壁まで吹き飛ばし気絶させた。
同時にクーリエが、光のハンマーで牢を叩き壊す。
「今よ!走って!」
船長達は飛空船に向けて、走り出した。
私達は、野盗の出入り口から、一気に上階まで上がって、とりあえず目に入るものをひっくり返したり、投げ飛ばしたりしながら、注意を集めつつ進む。
「な、何事だ!お前、どうやって出てきた!」
数人の野盗が扉を開けて出てくる。
「邪魔よ!」
風の魔法で吹き飛ばし、気を失わせる。
今いる部屋が牢の見張りの詰め所だったかもしれない。
であれば、私達が上ってきた入口を壊しておけば時間が稼げそうだ。
「クーリエ、この入口を使えなく出来る?」
「任せてください!」
クーリエは土の魔法で壁を作り、入口を塞ぐ。
「よし!これで下は大丈夫そうね!どんどん進むわよ!」
「はい!」
私達は上を目指して上がっていく。
野盗は何人いるのか、どんどんやってくる。
2人でねじ伏せながら、さらに上がると地上に出た。
「ここが地上になるのね。草も木もあるわ。空なのに不思議ね」
「これは、何かの遺跡でしょうか?」
クーリエは、少し離れた所にある崩れた建物が複数ある所を見ている。
「それっぽいわね。これの発掘の為に攫われたのかしら?」
だとすると、先に捕まっている人が居る可能性が大きいわね。
今は、船長達を逃がすことが先決だわ。
野盗は達は、私達が出てきた建物を取り囲む様に立ち塞がっている。
「お前らか!派手に脱走しやがったのは?」
「だとしたら、どうするの?」
「この人数だぞ!取り押さえろ!」
こいつが野盗の頭目かしら?
全員倒してしまってから考える事にしましょう。
戦いは一方的だった。
年を取ったとはいえ、元白金級冒険者であるマリーに、思った以上に脳筋天使クーリエ。
相手が悪かったと言わざる負えない。
全てを蹴散らし、マリーは野盗の頭目らしき人物に、
「あなたが頭目さんかしら?」
と聞く。
「いや・・・おれじゃねぇ・・・」
「じゃあ、どこにいるのかしら?」
野盗は、一軒の家を指さした。
「あそこだ・・・」
「そう。ありがとう」
そう言って、マリーは野盗を地面に叩きつけ気絶させる。
「クーリエ。下に戻って、船長達が無事脱出出来てるか確認してきてくれる?」
「わかりました・・・マリー様、1人で行かないでくださいね?」
「じゃあ、待っているわ」
クーリエは、走って元来た道を戻る。
「心配してくれているのかしら」
それとも・・・
その気持ちはとてもありがたかった。
しばらくして、クーリエが戻ってきた。
飛空船は無くなっていた様なので、無事脱出出来たのだろう。
「さて。頭目さんにご挨拶に行きましょうか」
「そうですね」