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ヴァーベナル英雄物語  作者: 猫じゃらし
巻き込まれハーフエルフの英雄譚
108/117

第108話 憎悪の念は、誰よりも深く、そして広く

幽閉していた大悪魔デストロメアと悪魔ゴーンが脱出した話は、ノステルリーグ王により各国に連絡が入った。

ただし所在は不明だった。


北西の大森林で、魔物が活性化している事が確認出来たが、小競り合いが少しあるぐらいで、大規模な戦闘にはなっていなかった。


そんなか飛空船の失踪事件が発生した。

神聖国とヘルンを飛ぶ飛空船が、相次いで失踪したのだ。

墜落した形跡が無く、完全に詳細不明であった為、神聖国とヘルンの間の飛空船の運航は取りやめになっていた。


「大悪魔の復活に飛空船の失踪事件なんて・・・急に物騒になったわね」

「本当ですね・・・無事だといいのですが」

とクーリエが読んでした本から顔を上げる。


「そういえば、スコット君はどうしたのでしょうか?」

「ヘルンに帰ったわよ」

「そうですか。マリー様。スコット君を放っておいても問題ないのでしょうか?」

「アスコットに関しては、あの時魂ごと切って焼失させたはずだから、復活ってことはないと思うわよ。記憶があるのが不思議だけど」


記憶がある時点で私も疑った。

でも、確かに魂ごと焼失させたというのも間違いない。

それは確認している。

不安はあるけど、大丈夫だと思っておこう。



ヘルンに戻ってきた。

悪魔アスコットの記憶通りに紙は存在し、中身も確認した。

大した内容では無かったが、黒い騎士の件に関しては、ほぼ完成していると言っていいだろう。


あの時は話をはぐらかしはしたが。


記憶に存在するハーフエルフに会えたのは、偶然だったが最高についていた。

ルーク島ではがっかりしたからな。


人は簡単に人を裏切る醜い生き物だ。

生まれ変わったら、なんて思わなければ良かったと、本気で思う。


悪魔の方が、まだずっと仲間意識があった。

魔物の方が、魔獣のほうが・・・


とにかく目的は達成した。


どうしようか?

黒い騎士を試しておきたい気持ちはあるが・・・


クライネルで前世の仕返しでもするか?

神と仲が良いとは言え、神を呼び出せるはずはないだろう。


250年だ。

ハーフエルフも、もうずいぶんな年だろう。

あのクーリエとかいう娘が気にはなるが、まあいいだろう。


悪魔アスコットとしては、やはり復活は出来なかったわけだが。

もし記憶が無ければ、こんな気持ちにもならなかったのかもしれないな。


さて、ではクライネルに行くとしようか。

全ての醜い人族への鎮魂歌の序章とさせてもらおう。



スコットは港町のブランに生まれた。

家族は仲が良く、決して裕福では無かったが、幸せに暮らしていた。


15歳のある日、突然悪魔アスコットの記憶が呼び起された。

あまりの事に、数日困惑した。

そのうち悪魔アスコットについて、調べ始めていた。

どの本にも書いてあることは、記憶にある事のほんの一部でしかなく、参考にならなかった。


記憶があるとはいっても、悪魔ではなく人族であり、名前はスコットという自分である事は変わりはない。

しばらくすると、気にすることもなくなっていた。


20歳のある日、全てを失った。

信頼していた人に騙され、スコットの家族は財産を全て奪われ、そして殺された。


スコットは絶望した。

記憶にある悪魔は、仲間意識が強かった。

人はなんて醜いんだと、どうして人に生まれ変わりたいなどと願ったのか。


スコットは、自身から全てを奪った人を惨殺した。


しかし、気持ちが晴れることは無かった。

騙されたという他人の話も聞いてはいたが、それはどの種族でも起こりうる事だ。

スコットの憎悪の念は、誰よりも深く、そして広く、全ての人族に向けられてしまったのだ。


深い憎悪を持つスコットではあったが、自身は一般的な魔導士より、魔力が多いと言われている程度であり、決して強くはない。

なので、悪魔アスコットの記憶にある、黒い騎士の召喚方法を求めたのだった。


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