第107話 不思議な空の陸地
大悪魔デストロメアは地下深くで、静かに時を待っていた。
どれくらいの時だろうか?
この魔力封じの腕輪のせいで捕まってしまったが、そろそろ腕輪を書かい出来るぐらいにはなっただろうか?
大悪魔デストロメアは魔力を込める。
ピシ・・・ミシ・・・パキッ
音を立てて魔力封じの腕輪は壊れ地面に落ちた。
そして自由になった大悪魔デストロメアは、部下のゴーンの拘束も解く。
「どれくらいの時が経ったのだろうな・・・とりあえずこの薄暗いところから抜け出すとしようか。ゴーンよ・・・」
「はい。デストロメア様」
地上まではどれくらいだろうか?
大悪魔デストロメアは、魔力を込めて空に向けて解き放つ。
大きな爆発音とともに、瓦礫が落ちてくる。
魔法の壁を張り瓦礫を防ぎ、砂埃が収まるのを待った。
空が見えた。
「行くぞ。ゴーン」
大悪魔デストロメアと悪魔ゴーンはふわりと空に昇っていく。
外に出たところで、騎士達が戦闘態勢に入っているのが見えたが、構わずそのまま空に昇って行った。
雲を越えた所で、空に浮かぶ陸が見えた。
あれはなんだ?
丁度いい。
「ゴーンよ、あそこの空に浮かぶ陸で今後の事を考える事にしょう」
「はい。デストロメア様」
空に浮かぶ陸に降り立つ。
大きさは海にある島ぐらいか。
木もあり草もあり・・・なんとも不思議なところだ。
大悪魔デストロメアは深くため息をついた。
前回は、悪魔らしく世界征服でもと考えていたが、その夢はあっさり人族に打ち破られた。
静かに暮らそうと考えてみたが、どこの世界も悪魔は忌嫌われ討伐の対象となるし、この世界でもそうだ。
どこの世界でも、神の敵対者という扱いになる。
しかも、この世界の人族の国に侵攻してしまったこともあり、この世界では確定的だ。
困ったものだ。
世界を渡っても、どこも同じだ。
悪魔の世界は殺伐としていて好きになれなんしな。
この不思議な空の陸地は、ひょっとしたら静かに暮らせるのではないか。
であるならば、ここでひっそりと静かにしていれば大丈夫なのでは?
「デストロメア様?」
「おお!なんだゴーンよ?」
「今後はどうなさるおつもりですか?」
ううむ・・・好戦的な悪魔だったな・・・ああ、そうだ。
「ゴーンよ。大森林にて魔物・魔獣を統率し、勢力を保て。状況により進軍も許可する」
「は!」
「私はここを拠点とし、今後に備えておく」
「それではデストロメア様行って参ります!」
「うむ。無理はせぬ様にな」
悪魔ゴーンは、大悪魔デストロメアの魔法の力により、夜ひっそりと大森林に降ろされた。
それを見届けた後、大悪魔デストロメアは空に浮かぶ陸地の奥に向かって歩きながら、本当に困っていた。
森に入りしばらく行くと、正面に明かりが見えた。
何かが居るのかと、そっと近づくと廃墟があり、そこには野盗の様な人族達がいた。
ここに先客がいたとはな・・・
大悪魔デストロメアはその場を離れ、近くの山に見つけた洞窟内に身を潜めることとした。