第106話 悪魔の目覚め
「まとめると、大悪魔デストロメアは、ノステルリーグ王国の地下に悪魔1体とともに魔力を封じられて幽閉中。だが魔力の回復は疎外できない為、250年経った今、自力で魔力封じの腕輪を破壊する可能性がある。大悪魔デストロメアの魔力は理の制御を越えて、他の世界と繋げられるってことかしら?」
「そうですね。これを持ってノステルリーグ王国が大悪魔デストロメアの消滅を実行してくれれば良いのですが・・・」
「どちらにしても憶測の範囲は越えられないってことよね?」
「はい」
これ以外は手掛かりがなさそうだった。
保管していた本に関しても、簡単な記述しかなかった。
クーリエが、「これって・・・殆ど神の力ではないですか。大悪魔のレベルでこんな事が可能なんですか?」
と聞いてきた。
スコットは「大悪魔デストロメアの魔力が桁違いなだけです。実際、実力も高ければ大悪魔ではなく、もっと高位の悪魔となれていたと思います」
「復活されたら・・・もう・・・またこれ絶対厄介事じゃない・・・」
また、巻き込まれているわ・・・
「スコット、他には情報はないの?」
「すいません。これ以上は何も」
「これを確認するために、ルーク島に行ったの?」
「はい。記憶はあっても内容が思い出せなくて・・・危険な内容だったら、早めに誰かに知らせなければと思っていたのですが。結構な内容でした・・・」
スコット自身も内容には衝撃を受けていた様だ。
「ヒューゴ。ウィンストン王を通して、ノステルリーグ王に伝えるべきなのではないかしら?」
「そ、そうですね。とりあえず、今の内容でウィンストン王に報告してみます」
ヒューゴは書簡をしたためて執事に、ウィンストン王に大至急届ける様に指示をだした。
「困ったものね。一体誰が大悪魔なんて召喚したのかしら?」
「どこにでも神とは違い、悪魔を崇拝する者はいます。召喚自体は偶然だと思います」
「スコット、あなたもそうだったの?」
「はい。偶然召喚されました。理由は不明ですが」
「そう」
・・・巻き込まれるこっちの身になって欲しいわね・・・
「英雄譚には、地下深くに閉じ込められたと記述がありますし、だとすると地上にいる分には異変に気付きにくいかもしれませんね」
とクーリエがページを捲りながら話す。
「なんか残念な方向に進んでいる気がするわ・・・魔力の蓄積にも十分過ぎる年月だし」
「250年ですしね・・・どうして消滅させずに、幽閉したのでしょうか?」
とクーリエは聞いてきた。
「さあねぇ。当時の、なんだったかしら?ああ、モルト王にでも聞いてみない事には分かりっこないわね」
「困りましたね。阻止出来れば良いのですが・・・」
とクーリエは、本を閉じてそう言った。
そうして、数日後。
オーガッタ大陸は、250年ぶりに悪魔の目覚めを経験することとなった。
ノステルリーグ王都の王宮から、大きな爆発音とともに赤い光が空まで柱の様に伸びていく。
大悪魔デストロメアと悪魔ゴーンの復活だった。
王宮は混乱し、護衛騎士達が討伐に出向いたが、大悪魔デストロメアと悪魔ゴーンは、そのまま空高く飛び上がって赤い光の柱とともに消えた。
その後の調査隊の結果、地下深くに幽閉されていた大悪魔デストロメアと悪魔ゴーンの姿が見えないことから、先日の事件は幻ではなく真実である事が確認された。
その直後にウィンストン王を通じたマリー達の進言がノステルリーグ王に届いた。
進言は間に合わなかったのである。
とはいっても、混乱したのはノステルリーグ王国の王都だけで、他国はただ赤い光が空まで柱の様に突き抜けた様な光景が見られただけで、不思議な現象程度の感覚だった。
クライネル領で、その赤い光の柱を見て、間に合わなかったと思った者は、本当に数人だけだった。