第105話 そうよねぇ。伝説だものね
私達はスコットを連れて、クライネルに戻ることとなった。
そして、そのままクライネル領主の屋敷に向かった。
屋敷でヒューゴを呼んでもらう。
程なくして、ヒューゴがやってきて、おじぎをしてきた。
「マリー様、ご用件をお聞かせ頂けますでしょうか?」
「250年前から伝わるあの謎の白紙の紙と本の事よ」
ヒューゴが一瞬考えて、ああと思い出した。
「なるほど。意味が無い物ではないかと代々伝わって来ていたのですが、意味があるものだった言う事ですね?」
「たぶんね」
「たぶん?」
「そう。厳密には良く分かっていないのよ。このスコットが分かるという事よ」
「ふむ。なるほど。その方は信頼される方ということで、よろしいのですね?」
「ええ」
「わかりました」
ヒューゴは執事に、持ってくるように指示を出した。
「しばらくお待ちください。何しろ厳重に管理する様に代々伝わっている代物ですから」
「そうよね。私がそうしてねって言ったもの」
執事が物々しい箱を持ってきて、テーブルの上に置いた。
「マリー様、こちらです」
そう言って、ヒューゴは鍵を渡してきた。
箱を開けると、あの時回収した紙と本が入っていた。
「あ、見覚えがあります。あの時のですね」
とクーリエは横から覗きながら言ってきた。
「そう。あの時のよ。スコット。これよ。確認してくれる?」
「わかりました」
とスコットは言って、紙を確認する。
「白紙だけど、分かるの?」
「魔法で記載しているので、見えないだけなんです」
と言って、スコットは紙をテーブルに置き、魔法を掛ける。
すると、文字が浮かび上がってきた。
「これは黒い騎士の召喚方法の解読をしていた紙ですね、まあ、うまくはいかない訳ですが・・・こっちは・・・ああ!これです」
そう言って、文字が浮かび上がった紙を見せてきた。
「大悪魔デストロメアは、秩序と理が復活した後に悪魔3体を呼び出していることから、理を超える噂通りの魔力の大きさがあるものと考えられる。魔物・魔獣は秩序と理の回復前に放ち、大森林と呼ばれるところに生態系を作っていた様子。大悪魔デストロメアの目的は不明」
「これだけ?」
「いえ、他の紙にも調査した事が書いてあるはずです」
スコットは別の紙の文字も、浮かび上がらせる。
「大悪魔デストロメアは魔力を封じられ捕縛。悪魔2体は人族により消滅。1体は大悪魔デストロメアと同様に捕縛。ノステルリーグ王国の地下に幽閉。殺して消滅させなかった事は疑問。魔力封じがどこまでの効果があるのかは不明。利用価値はあるので、助け出す方向で考える」
最後の紙は、
「ウィンストンの英雄達と遭遇。あの3人は厄介だ。計画を早める必要がある」
「大して有益な情報とは言えないわね」
「そうですね・・・すいません。あの時はまだ調査中で、魔力が大きいから理の力では抑えきれず、他の世界と繋げることが容易に出来るらしいということが分かったところだったのです・・・」
「ノステルリーグ王国の地下に幽閉されているのは本当みたいね」
「間違いないですね。当時の記録ですから」
「この計画って言うのは何?」
「これは・・・お恥ずかしい話なのですが、世界を支配しようと考えておりまして・・・この世界でたくさん人形を作って、他世界を侵略というか・・・若気の至りですね。大悪魔デストロメアを助け出して、他世界と繋いで侵略しようと・・・」
「だいぶ困った事を考えてくれていたのね」
「そうですね。それで手始めにブランデデ王国だったのですが・・・」
「私達に阻止されてしまったという訳ね」
「その通りです」
「待ってください。話が見えてこないのですが、スコット君は何者なのですか?」
とヒューゴが割り込んできた。
「ああ、この子はこの記録を書いた本人の記憶を持っているのよ。だから、白紙の紙の読み方や、この記録を記した当時の事を話す事が出来るの。一応人族で、私と神に近いを立てさせているから心配はないわ」
「・・・マリー様がおっしゃるのであれば、ひとまず信じましょう。この記録は誰の記録なのですか?」
「悪魔アスコットよ」
「そうですか・・・ええ!?あの、マリー様達が討伐した悪魔ですか?」
「そうよ」
「それでは、この青年は・・・」
「考えている通りよ。もっとも、今は人族で敵対する気はないらしいわ」
ヒューゴは固まっている。
そうよねぇ。伝説だものね。