表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/2

人でなし

個人の意見ですが、悪いことを悪いことと感じなくなった時、人は人ではなくなると思っています。



 弥次郎と別れてから俺は、様々な人と出会い騙し騙されの日々を送っていた。相手を騙し鎖を移すことに初めは抵抗があったものの、数を重ねるごとに騙した相手に対する罪悪感というものは薄れていった。


 地獄に落ちてから何年がたったのだろうか。地獄での生活にも慣れ、月日を数えなくなった頃、気づけば俺の体を縛る鎖はなくなっていた。


 ここでの生活をしている間、何度も聞くことになった鎖を引かれ空へと連れていかれたものの悲鳴。次は自分の番かと恐れていた頃もあったが、怯える必要もついになくなったのだ。


 ここでの生活にも慣れ、少し物悲しい気もするが。天国での生活はもっといいものだと信じ、街の中心にある底の見えない巨大な穴へと向かった。


 地獄に来てから何度か見に来たことはあったが、底が見えないというのはやはり恐ろしく感じた。


 俺は階段を見つけるため大穴の周りを一周した。階段を見つけると一段一段底の見えない階段を慎重に下った。


 時折謎の光源が大穴の中を照らしてはいるが、光は小さく頼りない。壁伝いに階段を下り、数時間がたったであろう頃、ようやく底へと辿り着いた。


 大穴の底はただただ暗く、死んだ後地蔵に引きずられた何もない闇の中を思い出させた。


 俺が天国があるというのは嘘だったのかと落胆し引き返そうと振り向いた時。背後から大きな手に鷲掴みにされ何も見えない闇の中へとて連れていかれた。


 大きな手はゴツゴツと固く、肌で感じる全てが大きな手の持ち主が異形であることを伝えた。


 階段から離れてしまい地獄に戻る手段を失った頃。お地蔵様の時のように小さく光が闇の中で一際輝いていた。


 大きな手の持ち主は光へと向かっており。きっと天国へと案内してくれているのだと確信した。


 目と鼻の先まで光近づいた時、ようやく大きな手の持ち主が姿を現した。上で人間の代わりに働いていた鬼は小さく恐怖の対象ではなかったが、三メートルにも及ぶ鬼の姿は恐怖を抱かずにはいられなかった。


 俺が鬼に恐怖を抱いたことなど気にもとめず、鬼は光へと向かっていく。


「天国じゃなかったのかよ……」


 光を抜け俺を待っていたのは本当の地獄だった。

 

地獄の沙汰はお前次第を読んでいただきありがとうございます。この話は元は長編の予定だったのですが、始まりと終わりさえ書けば、伝えたいことが伝えられると気づき優先して執筆しました。


この作品の世界観では天国か地獄どちらに送ればよいものか分からない人間は【地獄】と亡者たちが呼んでいる場所に送られます。


この【地獄】では誰かに罪悪感を抱く、つまりは悪いことをしてしまったと感じた時に鎖の数が増えていきます。


この【地獄】に住む人は空へと連れていかれる人を見て勝手に鎖の先には本当の地獄があると考えてしまいました。


ですが考え方を変えると、罪悪感を抱くということは罪の意識があるということ。逆に鎖の少ない、または繋がれていない人間は、余程の善人か人でなしなのでしょう。(まぁ善人なら初めからここに来ませんが)


とっここら辺で【地獄の沙汰はお前次第】のあと語りを終わろうと思います。次からはまた【異世界海物語~人魚と作る異世界水族館~】の執筆に戻ります。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ