6話
「ユウ、大丈夫か?」
保健室へ行くと、ユウは目を覚ましてベッドの上で座っていた。
「厘、侺。大丈夫だ。ありがとう」
「そうか、良かった」
「俺さ…服についた血の量を見る限り、かなり重症だった気がするんだけど…。大きな傷は全部塞がってて。でも学園に回復魔法師いないだろ?」
「さっき教会から回復魔法師が派遣されてきたけど、その人たちが回復していったんじゃないのか?」
「そうなのか、回復魔法師の人がきてくれたんだな」
「あぁ、ユウが元気になって良かった」
顔に陰りもなく、元気そうな姿を見て二人はホッとする。
「二人とも心配かけてごめん。でも何があったんだろう?二人はあの爆発に巻き込まれなかったのか?」
「俺たちは爆発の音を聞いてグラウンドに向かったんだ」
「そうなんだよ。だから巻き込まれてないんだけど…。ユウはなんでグラウンドにいたんだ?移動教室でグラウンドとは反対方向に向かってたはずなんだけど」
「そっか。巻き込まれなかったなら良かった。俺も移動教室でグラウンドとは反対の方向に向かってたはずなんだ。なのに気づいたらグラウンドにいて、大きな音と共に衝撃が襲ってきて…」
話しているうちに頭が痛くなってきたようで、顔色が悪くなる。
侺は慌ててどこか怪我がないか確認するためユウに近寄る。
気づかれないように怪我の有無を確認する。
さっき全て完治したはずなのに。
「大丈夫か?無理するな。もう一度休め」
確認したが、怪我はないようだ。
侺はユウに寝るように促すが、ユウは首を横に振る。
「ありがとう、侺。でも大丈夫。今、声が聞こえたと思う」
「「声?」」
「うん。さっきグラウンドにいた時にも聞こえた。目覚めろ、もう時間は残っていない。そう言ってた」
厘と侺は顔を見合わせる。
二人も前に一度だけ、ユウが聴いたものと同じ言葉を耳にしたことがある。
もう時間は残っていない、とは言われなかったが、目覚めろ。と聴いた。
その声を聞いた時、チェンジャーとして覚醒したのだ。
そのことを考えると、ユウも覚醒したのかもしれない。
「ユウ、ユウも俺たちと同じ、オリジンだよな?」
「あぁ、そうだよ。ただ、俺はかなり力が弱いからほとんど魔法は発動できない」
ユウはオリジンだが力が弱いらしく、水を出したり、火をつけたりは出来るが、攻撃できるほどの威力が出ないらしい。
また、回復魔法は使えるが、切り傷を治す程度の力しかないらしい。
あの声を聞いたってことは可能性がある。
「ユウ、少しだけ風魔法を発動してみてくれないか?」
「いいけど、俺はそよ風程度にしか風は出せないぞ?」
「うん、ちょっと確認したいことがあるんだ」
「確認したいこと?わかった」
訝しそうにしながらも魔法を発動してくれる。
やっぱりユウは優しいなと思いながら注意深く魔法を確認する。
侺は一応三人を覆い囲むようにバリアを発動しておく。
「いくぞ」
「あぁ、いつでも大丈夫だ」
ユウが風魔法を発動させる。
すると、三人の周りに強風が吹き荒れる。
「え?なんで?」
やっぱりといったように、厘と侺はお互い顔を見て頷きあう。
ユウも覚醒したのだ。
しかも、オリジンからチェンジャーに。
どの能力が覚醒したのかは魔法を使いながら確認するしかない。
魔法の波動を確認する装置はあるのだが、教会が管理しており、そこで測定するとチェンジャーとして国に登録されるため避けた方がいいだろう。
ユウの家族としてはその方がいいかもしれない。
あとでそのことについてはユウと話し合う必要がありそうだ。