59話
ヨウとユウの部屋でも、さっき聞いた話について会話がなされている。
「ユウくん、侺くんの話どう思った?」
「うーん、俺は難しいことはよくわからないけど…侺が、侺と厘が決めたことなら俺は協力する」
「そう…だよね。前にも話したことがあるけど…リオは俺にとって恩人なんだ。そんなリオを殺すと言われて正直ありえないって思った。
けど、リオは魔王で倒すべき存在で、そのための力を世界のモノから与えられて、何もしないわけにはいかないって…わかってる」
でも、と言ってヨウは黙り込む。
ユウは、リオのことは知らない。兄弟同士で殺し合うというのはとてもつらいし悲しい事だとは思うが、
他ならぬ、当事者たちが乗り超えて前に進もうとしているのに、部外者が口を出すべきじゃないと思っていた。
だが、ヨウはリオのことを知っていて、更に恩人だという。
そう簡単に納得は出来ないだろうと思う。
それでも、魔王という立場、殺してほしいというメッセージ、それらを総合しても戦いは避けられないように感じている。
「ヨウさん、別に世界のモノと契約したからって絶対に魔王と戦わなきゃいけないってことはないと思います」
-ユウ、それじゃ何のために契約したのか…-
ユウはパールをペチンと叩いてポケットにしまう。
「俺は、ヨウさんの決断を尊重するし、厘と侺だってそう言うと思いますよ」
「ふふ、ユウくんありがとう。君たちは本当に優しいね」
その日ヨウはあまり眠れなかったみたいで、朝から不穏な雰囲気を醸し出していたらしい…。
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一方、菫とブレティラの部屋では、菫がブレティラの質問攻めにあっていた。
「人間たちの兄弟って仲が良いのよね?なんで殺し合う話になってるの?」
「そうですね、仲が良い家庭が多いと思います。なぜかと言うと、仲が良いからこそ兄弟に頼っているのです」
「頼る?頼ると殺すことになるの?」
「一言では表現が難しいですね。まず、魔王という存在がいかに人間界に被害をもたらす存在かご存じですか?」
「うん、なんとなく。魔王がいるだけでモンスターが増えて活発になって人々を襲うって聞いたよ。今も各地で被害が増えてるんだよね?」
「そうですね、被害報告はいたる所から聞き及んでおります。そのため、魔王を倒す必要があるのですが、それ自体は世界のモノに選ばれた人間が対応しているみたいです」
隣でカーディナルが頷いている。
その様子を伺いながら菫は続ける。
「魔王は、定期的に出現しているのですが、今までの魔王全てが人間からの覚醒です。また、討伐記録を確認する限り、近しい親、兄弟、知人が討伐していることがほとんどでした」
カーディナルが気まずそうにそっぽを向いている。
「世界のモノは、魔王の近しいものに力を与えて討伐させているということですね」
-違うの!菫!魔王に覚醒するほどの人のそばにいる人たちだもん。優秀なのよ!さすがに私たちも力がないヒトに力を与えてもうまく扱えないわ!-
「そうですか…確かに、私たちは一番近くで彼の力を見てきて、一緒に切磋琢磨してきました」
-そうでしょ?私たちの見立てだと菫たちがこの世界のトップクラスのヒトなのよ!-
ブレティラは首をかしげる。
「なんで人間が魔王に覚醒するの?」
「そこが最大の謎なのです…調べてもわかりませんでした」
-それはあれよ、ヒトって繁殖能力低いわりに、生存能力高いじゃない?定期的にヒトの数を減らすために神が定めたシステムで…-
「なんですって?」
-え?いや…その…私たちが選んでるわけじゃないのよ!たまたま、強い人が選ばれるってだけで…-
「それはたまたまとは言いませんよ、カーディナル。もしそれが分かっていれば強くなんてならなかったのに…」
-それは無理よ、菫。生まれた瞬間にその運命は決まっているの-
「…。嫌な運命ですね」
「それで?なんで兄弟同士で殺し合うことになるの?」
「さっきのカーディナルのお話しでいくと、魔王に覚醒するほど強い方の周りには必然と能力の高い方が集まるそうです。
その強い方たちと世界のモノが契約することで、魔王に匹敵する力を手に入れることが出来る。
その力を使って魔王を討伐するというのが世界のモノ、神が定めたシステムということです」
「つまり、神様が意地悪ってことね」
-ちょっとブレティラ!いくらドライアドだからって神に対して不敬よ!-
「だって、私たちドライアドですらうっすらと兄弟愛みたいなものは存在するのよ?
人間ならなおのことその絆は強いはずでしょ?なのに殺し合わせるなんて…趣味が悪いわ」
そうは言っても、魔王が人類の敵である以上、討伐するほかないのだと言うことは嫌というほど伝わった。
どちらにしろ、ブレティラは魔王との戦いには参加するつもりでいた。
菫も、戦わないという選択肢はないように見える。だが、心境はかなり複雑そうに見える。
話が終わったところで、就寝することにする。
みんな、それぞれの思いを抱えながら。




