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月影のもとへ  作者:
59/60

58話

二人も病院から引きあげて、宿泊している宿に移動する。

そこで今までのことの共有と、これからのことを話し合う。

まずは、一度今までの内容整理を。厘がかいつまんで話したが、個々の感想含め共有を。


「魔王には、僕たち全員でかかっても勝てる気が全くしなかったよ…」


「そうですね。今の私たちでは、世界のモノの力を借りても、歯が立たないでしょう」


「悔しいかな、俺は一歩も動けなかった…」


「私も、さすがに魔王と戦うのは無謀だと思ったわ」


「俺は…」


厘は言葉に詰まって俯く。

侺が厘の頭をポンと軽く叩く。


「何としても、魔王を倒す必要がある」


「待って、侺くん、それは僕たちがやらないといけないことなの?」


「前に言いませんでしたっけ?兄に。リオに逢いに行く必要があると」


「言ってたけど…?それと今の話に何の関係が…?」


「ヨウさん、すみません、一つうそを付いていました。本当は兄の居場所を知っていたんです」


「え…どこなんだい?」


「ジャウザです」


「え…?シャウザって、魔王が住んでいるという島だよね。なんでリオはそんなところに…?」


「リオは、魔王として覚醒しました…」


ヨウは絶句する。

ユウも隣で息をのむのが聞こえた。

菫は俯いていて顔が見えない。

ブレティラは、興味深そうに話を聞いている。


「世界のモノが言いましたよね?魔王を倒すことが使命だと。

 それが俺たちに課された使命なんだ」


「待ってくれ。だってリオは君たちの兄だろう?それに、リオは人間だろう?」


「魔王は…人間が覚醒して魔王になるんです。歴代の魔王も、もとは人間だったとそう記述が残ってました」


「なんで君たちは魔王についてそんなに詳しいんだ?」


「もともとリオが魔王に興味があって、幼いころからずっと調べていたんです。

 今となっては、リオは自分が魔王だってことにずっと気付いていたのかなって思います」


「気付いていたけど…それでも彼は、人であろうとしていました」


「すぅ姉…」


少し長くなるけどと前置きをしてから話し出す。

あの日はリオの成人の祝いをするために親戚一同が集まっていた。

二人ももちろんその式典には参加していた。

菫は、式典後にみんなでお祝いパーティーを開くために厘たちの屋敷で食事の準備をしていた。

朝から晴れて天気にも恵まれてよかったとみんなで談笑していたのだが、

式典が始まる頃に急に雷雨になって、みんな急いで屋敷の中に入った。

急遽屋敷の広間で式典を行うことにして、急いで準備を整えて式典を開始した。

リオに対する成人の祝いの言葉を父が述べて、成人の証である帽子をリオに被せたところで、屋敷に雷が落ちた。

木造の屋敷は燃えてみんな大パニックになって屋敷から出ようとしたのだが、急にみんな倒れていった。

厘と侺は何が起きたかわからず、リオのもとに駆け寄る。

周りを見ると、倒れた人たちから精気がなくなっていき、干からびたミイラみたいな見た目になっていた。

両親の姿を見た厘はショックのあまり意識を手放してしまう。

厘を抱き留めて、侺はリオの方を伺うと、両親や親せきの人たちから出ている精気が全てリオに入っていくのが見えた。

リオ?と声を掛けるが、反応がない。しばらくして菫も広間に到着する。

リオに駆け寄るが、様子がおかしいと気付いて、侺の方へ様子を伺いに来る。

侺は訳が分からず、菫に顔を横に振る。それを受けて、リオを凝視していると突然リオが咆哮する。

侺と菫は必死にリオと呼びかけるが返事はなかった。

ひとしきり咆哮するとうつろな瞳で3人の方を見る。

厘…菫、悪い。そう言ってリオは侺の方に来る。

侺、俺はこれから行かなきゃいけないところがある。

絶対に、会いに来て。その時は俺の事を”殺してくれ”。これは厘と菫には出来ないことなんだ。侺…ごめんな。約束だよ。

たぶん、侺に話をしている間は閉鎖魔法を使っていたか、時間を止めていたんだと思う。

あとで菫に聞いたら侺に掛けた言葉を聞いていないと言っていたから。

それを聞いた厘と菫は愕然としていた。知らなかったとはいえ、侺だけに辛い思いをずっとさせていたのだと…。

言ってほしかったって思ったけど、言えるわけがないと理解できるから、何も言わずに侺の話を聞いていた。

そして次の瞬間、菫の家と屋敷にある離れ以外を村ごと燃やし尽くすリオをただ眺めるしかなかったのだと…。

ずっとリオに呼びかけていた気もする。けど、リオが侺たちのことを見ることは二度となかった。

村が焼き尽くされるのを見届けてから、リオはどこかへ飛んで行った。

その時、世界のモノの声が聞こえて進化した。


「侺…」


「厘、そんな顔するな。俺は大丈夫だから」


泣きそうな顔の厘に向かって笑って見せる。今までずっと一人で重責を担ってきたのだ、大丈夫なはずがない。

少しの間沈黙が流れる。


「ヨウさん、すみません。リオに会うにはジャウザに行くほかないんです」


「…侺くん、話してくれてありがとう。そのうえで聞きたい。魔王を、リオを討伐するつもりかい?」


「もちろんです」


一瞬の迷いもなく言いきる侺に、厘は驚きを隠せない。


「でも、侺!兄貴は!侺を助けてくれたんだ!!」


「厘、さっき話した通りだ。俺は、リオを殺すために、リオに生かされている」


「厘、リオは魔王であることを嘆いています。だから、侺に殺してくれと言ったのでしょう」


「すぅ姉、兄貴は昔の優しい兄貴のままってことだよね?じゃあなんで殺さないといけないの??」


「厘…それは…。リオが魔王だからです…」


「そんな…」


その日は解散することにした。

また後日改めて今後の方針を話し合うことにする。

しばらくは今日話した内容の整理の時間にあてられる。

それぞれ思うところはあると思うため、急いで結論を出さなくていいだろうという判断だった。


「侺、ごめんね」


「なにがだ?」


「リオのこと。侺には負担をかけていたんだなって…」


「それは厘のせいじゃない」


「でも!」


「気にしなくていい。俺が黙っていたことだ」


「…うん」


「厘、俺はリオを殺す」


厘の様子を伺うが、俯いたまま動かない。

そっと厘の横に座り、覗き込む。

すると厘は顔を上げる。


「他に方法はないんだよね…」


「あぁ。それは厘もよく知っているだろう?昔からリオと一緒に魔王について調べていたんだから」


「それでも俺は…」


「だから、俺が殺すんだ。リオもわかってて俺に託した」


「…わかった。でも、侺だけにそんな嫌な役割をさせれないから、俺も…侺と一緒に戦うよ。一人で背負い込まないで」


「厘…」


リオの話をしたら厘がこう言うことはわかっていた。

だから今まで話さないようにしていたのだ。厘にはリオを殺すという剛を背負わせたくなかったから。

それでも、侺ひとりよりは厘も一緒に戦ってくれる方が、侺としてもうれしいのは間違いない。

俺の方こそごめんな、と思いながらもありがとうとつぶやく。


「みんなはどうするのかな?」


「どうするにしても、俺たちとすぅ姉はリオの所には行く。それは変わらないよ」


「そうだね。ユウは巻き込んで悪いけど、ヨウさんはリオに会いたがってたし…ブレティラは付いてきそうだね笑」


「そうだな。みんなの判断に任せよう」


「うん。侺、おやすみ」


「あぁ、おやすみ」

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