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月影のもとへ  作者:
57/60

56話

「魔王様」


「ナイトグルームか。何か報告か?」


「は。魔王様が転送した人間たちですが、レイティアの港に滞在中でして、6人中2名の意識が戻っていないようです」


「そうか…。もう監視を外してもいい」


「…。わかりました。今後の警戒態勢は?」


「しばらくは問題ない。それより被害報告を」


「は。下級悪魔の被害総数は500を超えています。上級悪魔の被害は50、残りの300は軽いけがですでに治療も終えております」


詳細を確認すると、こちら側から放った大砲を逆に投げ返されて、直撃を受けた下級悪魔と一部の上級悪魔が倒れたらしい。

その後に直接突撃しに行った上級悪魔の300匹は見事に追い返されたという状況だ。

しかも全員が軽傷。名無しの悪魔とはいえ、人間よりははるかに強い存在なのにだ。

相当厘たちが強いという事を示している。


「下がっていい」


「は。失礼いたします」


ナイトグルームは謁見室を後にする。

そのまま他の四天王がいる部屋へ向かう。


「ナイトグルーム、魔王様はなんて?」


ナイトグルームは無言で首を横に振る。

ブラッドヴェンジェンスは人間たちの討伐命令を期待していた。

だがその命令は発せられなかった。

チっとした打ちするとソファーにドカッと座る。


「魔王様は…単独行動するなとは言われたけど…人間に攻撃するな…とは言われていない」


「ヴォイドレイス、あなたまさか…!?」


「僕は…あの人間たちを殺しに行く…」


「へぇ?お手並み拝見と行こうじゃないか」


「待ちなさい」


「ダークシード、いいんじゃないか?ヴォイドレイスを行かせてやれ」


「ナイトグルーム!ですが…。はぁ…わかりましたよ」


「ヴォイドレイス、あなたの部下たちは全員連れて行くように。それが条件です」


「わかった…行ってくる」


ヴォイドレイスは出陣の準備をしに出て行った。


「ナイトグルーム、いいのか?」


「えぇ。問題ないでしょう。たとえ負けたとしても問題ない」


「おい!」


「勘違いしないでほしい。あの人間たちには俺らを殺す意思がないよ」


「は?だが実際数人の悪魔はやられてるんだぞ!?」


「それは彼らの街へ出向いて害をなしたからだ」


「なんでそう言い切れるんだよ!」


「先日の悪魔たちの襲撃、生身で乗り込んだ悪魔は誰一人として殺されずに軽傷でした」


「それは、手加減されていたと。つまり…ただの悪魔では太刀打ちできないということですか?」


「そういうことになるな」


「俺も行ってくる」


「えぇ、ブラッドヴェンジェンスならそう言うと思った。ヴォイドレイスは詰めが甘いところがあるから頼んだ」


「チッ」


ブラッドヴェンジェンスはヴォイドレイスを追って出て行く。


「ナイトグルーム、大丈夫ですか?」


「あの2人なら問題ないだろう。ただ、勝てる保証はない」


「…魔王様はなんて?」


「とくに何も言われていない。それと、魔王様はダークシードが連れてきた人間を返しに行かれた」


ダークシードは目を見開いて驚く。

魔王様は普段から人間に興味がある様子だった。そのため、人間の様子を伺いに悪魔を都度人間の学園とやらに侵入させていた。

まさか、その学園を襲うとは思っていなかったのだが、下級の悪魔だったため、自分の欲望に勝てなかったらしい。

1度めは様子見、2度目はモンスターを率いての襲撃、3度目は邪魔された個人への攻撃を実施したと聞いている。

実に愚かだった。1度目は少し魔法を使っただけで大勢の人間が倒れた。

2度目は多くのモンスターを学園内に放ったが、全て倒されたらしい。

3度目で学園に結界を貼った人物を襲撃したらしいのだが、結界を貼れるくらい強い人間という認識を出来ていなかったらしい。

結果、返り討ちにあって倒された。

その後、別の悪魔が再度その人間たちをターゲットに事を構えたらしいのだが、多くの人間を巻き込んで殺したのちにあっけなく倒されたと報告を受けている。

その報告を聞いてダークシード自ら出向いたのだ。

たしかに人間にしてはかなり強く、下級悪魔なら全く歯が立たないだろうとは思ったが…。

我々悪魔の脅威になりそうな人間だったため、魔王様に献上するために連れ去ったのですが。

魔王様は何を考えておられるのでしょうか。

考え込むダークシードを見てナイトグルームは口を開く。


「…。それは、ここに向かってきていた人間が、私が連れ去った人間を連れ戻しに来たからでしょうか?」


「わからない。ただ、人間たちがこの島を目指しているのになんの指示もなかったどころか、

 その人間を船に返されたあとに、船ごとレイティアの南街の港まで転送したらしい」


「それは…」


「たぶんだが、魔王様が港まで転送していなかったらここまで攻めてきたはずだ」


「あの者たちは私より弱いですよ?」


「ダークシードが戦った2人より強い人間が2人いるよ」


「まさか。一番強い魔力の所に向かいましたよ?」


「それはそうだろう。その強い2人は魔力を押さえているから」


「なんですって?人間にそんなこと出来るはずが…」


「魔王様が見抜かれたから間違いない」


ダークシードは底知れない人間の側面を見て戦慄する。

だから魔王様はあの人間たちを返したって言うのか?

わからないことだらけで頭を抱えるダークシードたちだった。

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