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月影のもとへ  作者:
56/56

55話

『相変わらず優しい子だね。今回は戻りなさい。今はまだその時じゃないよ』


そう言われてからの記憶が一切なく、気が付いたら船ごと港に戻っていた。

後で聞いた話立だと、突然現れた自身が作った船に驚いてカイルは船に乗り込んだら全員が甲板に倒れていたらしい。

一番初めに起きた菫が厘と侺の様子を確認しに行くと、二人は同じ部屋のベッドに寝かされていた。

すみません、と菫が呟く。菫は魔王が魔力を練っていることに気が付いていた。

だが、止めることをしなかった。それに対しての謝罪である。


「菫さん、大丈夫ですか?」


ついさっき起きてきたらしいヨウが入ってくる、


「えぇ、私は大丈夫です」


「よかった。ユウくんも今起きたので、すぐに来ると思います」


「よかったです。いえ、私たちは眠らされただけなので、問題はないと思います」


「あの、菫さん…。何が起きたんでしょう?」


「魔王に船ごとレイティアの港に転送させられました」


「魔法を発動する素振りが全くなかったんですけど…」


「えぇ、私も…魔力を練っているのはわかったのですが、発動のタイミングは全くわかりませんでした」


話していると、勢いよく部屋の扉が開けられる。


「厘!侺!」


ユウが大きな声と共に入ってきた。


「ユウさん、大丈夫ですよ。少し疲れて眠っているだけですから。じきに目を覚まします」


「よかったぁ…俺、なんにも出来なくて…全く動けなくて…」


「仕方ないわ。でもあそこでは動かないことが正解だったのよ。ユウは間違っていないわ」


「ブレティラさんも、大丈夫でしたか?」


「もちろん大丈夫よ。菫は知っていたのでしょう?魔王は私たちに害を与えないって」


「菫さん…?どういう事…?」


「すみません、二人が起きてから説明させて下さい」


「…。わかりました」


ただ、ヨウにも心当たりがある。あの場では気付けなかったが、今思い返してみると…。

厘は精神的に疲弊していたため、もう少し睡眠が必要なのかもしれない。

侺は睡眠魔法を掛けられた形跡があるため、もう少し眠ったままになるそうだ。

そのため、菫、ヨウ、ユウ、ブレティラの4人で夜ご飯を食べに行くことにした。

ヨウは事前にリサーチしていたデザートがおいしいカジュアルなカフェを提案。

菫の承諾が1瞬で取れたので、そこへみんなで向かう。

菫はご飯は少なめのメニューをチョイスし、デザートにボリュームのあるパンケーキを選んでいた。

ブレティラもそこは女の子らしく、ご飯は普通のメニューだったため、デザートは少し軽めのプリンを注文していた。

ヨウとユウはご飯をがっつり食べて、デザートはなしで食後のコーヒーを注文する。

みんなそれぞれ注文したものを食べながら会話をする。


「僕たちがジャウザに行こうとした目的は侺くんの奪還だよね。という事は、目的は達成できた、で良いのかな?」


「えぇ、そうですね。いずれまたジャウザに行くことになるとは思いますが…今の戦力では無理なことがわかりましたので、

 しばらく地下神殿に籠る予定です」


「ねぇ、菫。地下神殿って何?」


「世界のモノが管理する、正式名称は時の回廊でしたよね、カーディナル?」


-そうよ。時間の流れを変えることが出来る場所。ドライアドであるブレティラも時の回廊には入れるわよ-


「カーディナル、ありがとうございます。では、ブレティラさんも一緒に行きましょう」


ブレティラに時の回廊に関する情報を説明する。

ブレティラは、最近ユウと接近戦の訓練を実施しており、時の回廊での訓練にかなり乗り気だ。

もともとブレティラは殺傷能力のある植物を召喚して戦わせたり、蔓で縛り上げたり投げ飛ばしたりと魔法に頼ることが多かった、

ユウの、身体強化して肉弾戦にもっていくスタイルにひどく感銘を受けたみたいで、

事あるごとにユウと訓練を実施していた。ユウも、訓練相手が出来て楽しそうに訓練していた。

新しい投げ技を開発したいなどユウと楽しそうに話していたのを菫も聞いていた。


「楽しみだね!ユウ、いっぱい技を考えましょうね!」


「おうよ!」


そんなことを話しながら食事を終え、一度、厘たちのいる病室に顔を出してから宿に戻る。

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