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月影のもとへ  作者:
5/46

4話

「いくよ!侺!」


「あぁ!」


二人の力が悪魔に向けて放出された。

厘から放たれた炎の龍と、侺から放たれた氷の龍が絡み合いながら悪魔に向けて凄まじい速さで飛んでいく。

余裕の表情を浮かべていた悪魔も、迫り来る二頭の龍を見て目を見開く。

だがそれでも悪魔には少しだけ余裕があった。


「人間の中にこれほどの力を持ったやつらがいるとはねぇ」


その悪魔は一瞬考えた末に、今回は引くことを選んだ。

仲間との考え方の違いにイライラしており、たまたま目についたこの学園を襲っただけで、特に目的があるわけではなかった。

ただの憂さ晴らしである。

本気で闘ったら負けるはずないと思うのだが、無駄に怪我をして帰るのも悪魔の矜持に欠けるため、今回は引くことにしたのだ。


「あの二人、誰かに似ている気がする…。気のせいか。人間が悪魔に似てるはずがないよねぇ」


その悪魔は二頭の龍が到達する1日手前で姿を消した。

行き場のなくなった二頭の龍はそのまま悪魔がいた場所を通り過ぎる。

二人は悪魔がいた場所を見て呆然とする。


「は?消えた…?」


一瞬固まったが直ぐに気を取り直した侺が叫ぶ。


「厘、このままだと体育館に直撃する!!」


「え?マジか!やべー!!!」


叫びながらも厘と侺は急いで龍と体育館の間に滑り込む。

体育館には怪我人が運ばれたり避難している人がいるはずなのだ。それを二人の力で吹き飛ばすわけにはいかない。

二人は落ち着いて手のひらを龍に向けて突き出す。

すると、龍たちはそれぞれ手のひらに入っていった。


「おかえり、炎龍」


特に厘と侺が放つ龍に意思があるわけではないが、なんとなく厘は自分が放つ龍に感情移入している。


「それにしてもなんで急に消えたんだよあの悪魔!」


「厘、気持ちはわかるが、とりあえずこの場を去ろう。誰かに見られたら面倒だ」


「そうだな、行こう」


二人の力を今はまだ、誰にも知られるわけにはいかないのだ。

二人は急いで校舎の方へ向かう。

向かう途中で厘が足を止める。


「厘?どうし…」


「おい、しっかりしろ!ユウ!」


厘は倒れている生徒の方へ駆け寄った。

二人のクラスメイトであるユウが、頭から血を流して倒れていた。

ユウも爆発音を聞いて駆けつけてきたのだろう。

悪魔の放つ攻撃魔法を受けてしまったようだ。

侺も慌てて駆け寄ってくる。

厘とは違い、侺は落ち着いてユウに回復魔法をかける。

すると、傷が徐々に塞がっていった。


「ユウ…!侺、ありがと。ユウを保健室に連れていこう」


厘はユウの顔色が良くなったことを確認し、安堵の息を吐く。

すぐに気持ちを切替え、ユウを担いで保健室の方へ移動する。


厘と侺の得意な魔法はそれぞれ異なる。

チェンジャーとして目覚めた能力も、炎と氷で違う属性だった。

侺の方が回復魔法が得意だった。

厘も回復魔法は使えるのだが、時間がかかる上に大きな怪我は治る前に厘の方が力尽きてしまうのだ。

前に幼馴染に見てもらった時に言われたのは、厘の回復魔法は魔力を全力で垂れ流ししているだけで、運良く相手にあたれば回復ができる、だそうだ。

かなり効率が悪い。

そのため厘は普段回復魔法を使わないようにしている。

個々の能力は偏りがあるが、厘と侺はお互いが得意な魔法を補い合って、すべてのことができるようになる。

一人ひとりだと欠点もあるのだが、二人揃うとかなり優秀なのだ。

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