47話
レインは侺の前に姿を現した。
キールも厘の前に出てきた。
「レイン、俺たちが光魔法を使用したのがそんなに嫌だったのか?」
レインとキールは氷と炎を司る世界のモノだし、契約したことにより威力も倍増しているはずなのに、
わざわざ違う属性の魔法を使用してしかも今までで一番の威力を出したことによって、
レインとキールは焦りと怒りの感情が出てきたらしい。
-嫌だった…せっかく契約したのに…僕たち不要?-
「そうじゃない、その逆だよ。契約してくれたから出来ることが増えたんだ」
威力面だけで見れば、氷と炎の魔法の方が最強ではあるのだが、
どうしても爆発を伴う攻撃になりがちで、周りへの影響が大きすぎるため全力で発動出来ない。
光魔法であれば、爆発が起こらない分精度を上げることで一転集中の攻撃が出来る。
そのこともあって、今回は光魔法を使ったのだが、それが世界のモノたちにとっては由々しき事態だった。
だが、これは世界のモノと契約したから出来た事であって、契約前だと二人の光魔法ではここまでの威力は出なかったのだ。
「それに、俺の氷と厘の炎の魔法がより強力になったおかげで、威力は確実に一番だ」
「そうそう!俺たちまで吹き飛ぶくらいの威力が出たんだ!」
「…たぶん俺たちが氷と炎の魔法を使ったら半径10kmは確実に吹き飛ぶ」
「うん…だから氷と炎の魔法を封印して光魔法を使ったんだ」
-なーんだ、そうだったのか!まぁ俺様が契約したんだし当然だよな!-
その言葉と共に、レインとキールの姿が現れる。周りの景色が砂漠から森の中へと変化していく。
レインの幻影魔法を解除したんだろう。
-僕は、契約解除しない!-
-じゃあどうするの?このまま森にいるんだったら契約している意味がないんだよ?-
-…。侺と一緒に行く-
-はぁぁ…。んで、キールは?-
-もちろん俺様も行くぜ?俺様の力が必要なんだろ?-
そう言って、厘の頭の上に座る。
「キール、おかえり!」
-おぅ!-
-とりあえずこれで解決ね。全く、世話が焼けるんだから-
-侺、ごめん-
「俺たちの方こそごめん。ちゃんと説明しておくべきだったな」
「ごめんな、キール」
-いや、さすがに今回は俺たちが悪かった-
-キールが謝った!?-
-なんだよ!俺様だって善悪の判断は出来るんだからな!-
-そうね、キールもやっと成長したって事ね-
-キールは僕について来てくれたんだよ-
-おい、レイン、余計なこと言うな-
-そっかぁ。あのキールが、ねぇ-
-厘と侺の契約者として、レインといる事が増えたから情がわいたんだろうね。いい傾向だ-
-それにしてもキールがそんなに面倒見が良いとは思っていなかったから驚いたわ。もちろんいい意味でね-
-お前ら、もうその辺でやめろ-
-はーい-
-はぁい-
「そろそろヨウさんのところへ戻りましょうか」
「すぅ姉りょーかい」
厘たちはドライアドに挨拶をしてからすぐにヨウのもとに帰ることにした。
理由は2つ。1つは悪魔を2体も倒したことにより、以前より奇襲が増えていること。
もう1つは各地でモンスターの動きが活発になっているらしい。
その対応に傭兵団が駆り出されているのだが、どうにも人数が足りていない。
手薄になった傭兵団拠点に下級だが悪魔の襲撃が多数発生しており、大混乱中という事だった。
しかもアースもこっちに来てしまっているため余計戦力が減っている状況だ。
ヨウからも出来れば早く帰ってきて欲しいと連絡があったばかりだ。
「待ってください」
「ドライアドの長さん?」
「はい、私はドライアドの長、クリビアと言います。無理を承知でお願いします。娘も連れて行って下さい」
一方通行のワープホールをユウの個人部屋に残してきた。
それを使って帰ろうとしていたときにドライアドから声を掛けられる。
長、クリビアの後ろから10歳くらいの子供の見た目をしたドライアドが顔をのぞかせている。
「その子を、ですか?」
「はい、この子はブレティラといいます。このドライアドの森で一番幼い子です」
「連れて行くのは構わないのですが、意図をお伺いしてもよろしいでしょうか?」
クリビアは頷くと話し始める。
「ドライアドは長らく子が生まれなかったのですが、つい最近この子が生まれました」
ブレティラがクリビアの後ろから出てきて話し始める。
「私はヒトに興味があるの。一緒に行ったらダメ?」
クリビアは小さくため息をつく。
「この子はヒトの世界に行ってみたいと言ってきかないのです。ですが、今ここに残っているドライアドはみなヒトとの関りを持たない個体ばかりで、このブレティラを連れてヒトの世界に行ってくれる個体がいないのです。あなたたちは世界のモノとの契約者ですから、私たちもこの子を任せるのには問題ないと判断しました」
「私も、あなたたちの役に立つと思うよ!」
クリビアはブレティラの頭を撫でながら話を続ける。
「あなたたちは使命を持ちこれからその困難に立ち向かう事でしょう。ブレティラの力はたしかにあなたたちの役に立つと思います。ブレティラの見聞を広げるためにも協力いただきたいのです」
厘たちはお互いに顔を見合わせる。
断る理由が特にないのと、ドライアドの力を借りれるのであれば願ったりだ。
「ありがとうございます。それでは、私たちにお力添えをお願いします」
「すぅ姉がいいなら俺たちは問題ない」
「ありがとうございます」
「やった!ありがとう!」
そうしてバタバタになってしまったが、ブレティラを連れてヨウのいるムトスまで戻ったのだった。




