37話
「厘くん、侺くん、無事に完了したみたいだね。よかった」
「ヨウさん、作戦が無事に成功してよかったです。それで、他の街に関してはどんな状況ですか?」
そう、この作戦はメイン首都である傭兵団が守っている街と、そのすぐそばにある隣街のみの避難作戦であった。
ここから遠い街に関しては、伝書バトで連絡を入れてはいるが、対応する時間はそんなになかったと思う。
逃げ遅れてモンスターの餌食になった人が少なからずいるだろう。
「まだ連絡が来ていない街も多いが、西側の街に関しては比較的早く伝達出来たこともあって、住人の7割は避難できたらしい」
「ここからは私が。まず西側の街、確かに住人の7割は避難できましたが、戦闘に出ていた冒険者たちや地方の傭兵団はほぼ壊滅で、戦う余力はありません。西北にある街に関しては隣町からの伝達が早かったため、被害は2割程度で収まっているようです。東側の街は傭兵団が奮闘したものの5割程度しか避難が完了しておりません。戦いつつ住人と一緒に逃げるという戦法を取られた模様です。また、北側の街に至っては情報の展開が遅れたのもあるのですが、地方の傭兵団が一切動かなかったみたいで、街ごと壊滅しました。住人の被害に関しては確認中です。どこも街自体は壊滅状態ですね。この街も含めて」
「北の街の傭兵団が動かなかった理由は?」
「私たちからの伝令の信ぴょう性に欠けると…魔物が森から出てくるはずがないと聞く耳を持たなかったようです」
「そうか…北の傭兵団とは昔から折り合いが悪かったから、私たちの言葉は信じてもらえなかったのか」
「そうみたいですね。ただ致し方ありません。助けに行く余裕すらこちらにはなかったのですから」
「それに首都を守らないとそれこそ領土として成り立ちません」
「わかった。すべては守り切れないのはわかってるけど…」
「だから傭兵団はすべて統合して支部として機能させるべきだと言っているのに…」
厘たちは白熱してきた話し合いがだんだんと政治の話になってきたため、邪魔にならない様にその場を離れる。
傭兵団の人たちの怪我の具合を確かめに行こうと思っていた。
「怪我人はいませんか?」
「今アキラさんに見てもらっているが、カイリとマナミが怪我をしているんだ」
「ユウ!いた!カイリ達を見てもらえないか?」
「ヨウジさん!わかりました!」
ユウは得意の光魔法で回復と支援魔法を駆使して戦っていたため、一緒に戦っていたヨウジにはユウが回復魔法が得意という認識があるらしい。
重症者はユウに任せて厘たちは軽傷者の方を見にいくことにした。
モンスターとの戦いで怪我した人はそれなりに居たみたいで、それぞれ治療だったり、回復魔法使える人に痛みを和らげてもらったりしていた。
そこへ、厘と侺は治療しに向かう。
「けが人は今ここにいる方だけですか?」
「あ、侺くん。あぁ、今ここで治療しているところだ」
「僕たちが治療します」
「え?あぁ、ありがとう」
厘は炎、侺は氷魔法のみで戦闘していたため、他の魔法が使用できると思っていなかったみたいで、
微妙な表情だったが、今回前線で活躍したためか快く場所を譲ってくれた。
そこで厘と侺は二人で範囲回復魔法を掛ける。
すると、負傷していた人の傷がきれいに治療された。
「え?」
「傷が完全に治ってる?」
「なんだ今の?こんな強力な回復魔法見た事ないぞ?」
その中で眠気まで吹き飛んだという言葉が聞こえてきて、二人は顔を見合わせる。
それは…もしかして…。ヨウに対して有効かもしれない…??
今度ためしてみようと心に決める二人だった。
「君たちは何者なんだ…?団長が連れてきたからすごい人なんだろうとは思っていたけど」
「想像以上で驚いた!」
「それは、僕たちもヨウさんに強さには驚きしかないのですが…」
「あ、やっぱり君たちもそう思う?チェンジャ―とはいえ他のチェンジャーの比じゃないくらい強いよな」
「でも君たちもチェンジャー並みに強いよね?チェンジャーではなさそうだけど…」
「僕たちは登録されていないだけで、チェンジャーです」
「そんなことあるの?」
「えぇ。もともとオリジンなので、気付かれる事はありませんでした」
「あ、でも内緒にして下さいね。国に管理されるのはごめんですから…」
「わかった、それなのに俺たちには話してくれてありがとう!」
たぶんだけれど、この傭兵団はこれからかなりレベルアップしていくと思う。
もちろん世界のモノとの契約がない分限界はあると思うが、ヨウの魔力の使い方を習得できれば格段に、
それこそチェンジャー並みに力が強くなるはずだ。
国で管理する必要がないくらいにはチェンジャーの数が増えていくだろう。
「厘くん、侺くんこっちに来てもらえるかな?」
「はーい」
「わかりました」




