35話
ヨウが入ってと言うとすぐに扉が開き、長身細身の男性が入ってきた。
「団長、召集により馳せ参じました」
「相変わらず固いよ、アキラ。説明している暇はない、道中侺に聞いてくれ。すぐに隣街に出発してくれ」
「かしこまりました」
「僕が侺です。よろしくお願いいたします」
「侺くん、申し訳ないけどアキラを隣町まで運んでくれる?」
「はい、では行ってきます」
「侺さん、運ぶとは…?」
「アキラさん、申し訳ないですけど、担がせて頂きます」
そう言って侺はアキラを軽々担ぎ、窓から一気に飛び降りる。
アキラは突然担がれた驚きと猛スピードで窓から飛び降りてその勢いのまま進む景色の流れに何も言えないまま侺にしがみつくのだった。
そして、簡単な説明をし始めたのだが、風切り音と猛スピードのせいでうまく聞き取ることが出来なかった。
ヨウはその光景を見て、まずは魔法が使えるメンバーに魔素コントロールを教え込むのが先かなとつぶやいていた。
「さ、僕たちはグラウンドへ行こう」
「隣町までどのくらいの距離なんですか?」
「ん?徒歩で2時間程度だから、侺くんなら5分で着くんじゃないかな」
「わかりました、ではスクリーンも用意しましょう」
「すぅ姉了解」
残ったメンバーは急いでグラウンドへ行き、それぞれ準備を始める。
厘とユウはスクリーンの準備を。菫はプロジェクターの準備をし、侺との通話を開始する。
『すぅ姉、ちょうどよかった。隣町のどこに行けばいいかヨウさんに確認できる?」
「それなら町で一番高い建物に行けば大丈夫だよ」
「了解です、アキラさんは少し休ませますので、繋げたままでお願い出来ますか?」
「もちろん、そのまま町長のいる建物に向かって」
「はい」
侺から映し出されている画像を見る限り、すぐに到着しそうだった。
これなら隣町と傭兵団メンバーへの説明はまとめてやった方が早いだろう。
そう思ってたぶん厘も菫も準備をしているに違いない。
「みんな、集まってくれてありがとう。すぐに説明を始めるからもう少し待って欲しい」
集まったメンバーに話しかけると、メンバーたちは佇まいを正してヨウの言葉を待つ姿勢に入った。
かなり統率が取れているし、ヨウへの信頼も厚い。
ヨウは今まで学園に居たのにもかかわらず、傭兵団メンバーはヨウが自分たちのトップであることを認識している。
定期的に帰省していたのだろう、みなヨウの顔も知っていたし。
すると、侺から再び声が掛かる。町長宅に着いたみたいだ。
菫がその映像をプロジェクターへ投影する。
グラウンドにいる傭兵団メンバー全員が見えるほどの大きさをした巨大な画面が出来上がった。
入口の門兵が見える。
「こんにちは、傭兵団団長のヨウです。町長にお目通り願いたい。このような形で申し訳ないが、取り次いで頂けないでしょうか?」
「傭兵団の…は、少々お待ち下さい。すぐに」
画面越しに取り次ぎをお願いすると、すぐに対応してくれた。
町長が出てくる。隣街の町長はまだ若く、ヨウも何度か会話したことがあるが、芯の通った優しい人だった。
「ヨウさん、お久しぶりです。変わった機械ですね?このような形での連絡という事は、急を要することでしょうか?」
「さすがリュウさん。そうです、一刻の猶予もないと思って下さい。うちのメンバーへも同時に説明しますので、よろしくお願いいたします」
ヨウは説明を始める。
森に悪魔が来ており、モンスターの魔石に魔素を注入していること。
その結果、何が起こるかというとモンスターが凶暴化する。
森の中でモンスター同士の争いがおこる。
争いの果てに負けた種族が森から追い出されるようになる。
追い出された結果、街への襲撃が発生する。
そのために、街の外でモンスターの襲撃に備えて防壁を建てて迎え撃つ必要がある。
また、可能な限り森から出てきたモンスターをすぐに討伐する必要がある。
5人1部隊を作成し、森の手前に配置する部隊、防壁を作成する部隊、住人誘導班に分かれて行動開始!
すると一斉に動き出す。すでに緊急時の人員配置は決めてあるので、あとは動くのみだ。
「森に配置する部隊はそれぞれに俺、厘、侺、菫、ユウを配置する。
入団前でしかも最前線で行動してもらうことになって申し訳ないが、お願いする」
「わかった、大丈夫です」
「それと侺くん、侺くんの配置は隣町前の森になるから、他のメンバーが到着するまで一人で耐えて欲しい」
「問題ありません、この街の指示はアキラさんに任せればいいですか?」
「うん、問題ない。アキラ、よろしく頼む」
「かしこまりました。すぐに動きますので、御前失礼します」
「すでに森から凶暴化したモンスターたちが出てき始めているので、向かいます。通信は必要あれば繋げて下さい」
「了解、気を付けて」
そこで通信が切れる。
「さて、僕たちも動こうか」
西側の隣町から等間隔で配置される前線部隊には、西から侺、厘、菫、ユウ、ヨウという順番での配置に決める。
物見からモンスターが数体森から出てきているとの報告を受けた為、すぐに街の外に向かう。
「組んだ前線部隊の5人はそれぞれ隊列を組んで対応出来る様に訓練してある。フォローしつつ対応してほしい!」
「了解!」
「わかりました」
「わかった!」
それぞれの持ち場へ向かう。すでに前線部隊の移動は開始されており、悪魔が居た付近の森の前ではすでに戦闘が開始していた。
ヨウは到着するや否や魔法による援護を行う。
前線部隊の邪魔にならない様に器用に魔法を駆使し、モンスターを倒していく。
森から出てくるモンスターの数が増えているが、世界のモノと契約したヨウは格段と強くなっており、
更に範囲攻撃を得意とするヨウは、もれなくモンスターを倒すことが出来そうである。




