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月影のもとへ  作者:
34/56

33話

「後で簡単な仕事内容は共有するね。それぞれの得意分野ごとに業務内容はバラバラだから、それも含めて説明するよ」


業務内容の説明自体は簡潔で、普段の生活に伴い食事係、掃除係、武器の作製係、手入れ係、食材の仕入れ係に分かれている。

大きな括りでまずは5等分にメンバーを振り分ける。その後、細かい業務内容はそれぞれの係内で各リーダーが決めていく。

また、上記5つ以外にも業務が発生するから、それは手の空いている人で対応していくという感じだ。

モンスターの討伐依頼や街の住民からの依頼も発生するから、それも随時こなしていくことになる。

思っているより業務内容が多く、日々の暮らしはだいぶハードになりそうである。


「そんな感じの業務内容になると思うんだけど、何か質問はあるかな?」


「はい!業務時間は何時からですか?」


「基本は朝9時から夕方の18時までだけど、食事係はその1時間前の朝8時から夕方の17時までになるよ」


「え、思ったより短い業務時間だ。時間外は自由行動ですか?」


「いや、今のは5つの係の業務時間だよ。依頼や討伐や遠征がある場合はその限りではないし、他の業務もあるからたぶんそんな時間あってないようなものだと思ってほしい」


「え…思ったよりブラックだ…」


「でも、業務じゃない時間は自由行動だし、月に1日程度の休暇制度もあるから」


「うーん。やる事やって終わったら自由行動!で良いのかな?」


「ふふっ。うん、それで大丈夫だよ」


納得がいったのか、厘とユウは自由行動にあれやろこれやろと話をしている。

まるで修学旅行に行くみたいなノリでいる。


「ヨウさん、傭兵団には何人くらいいるんですか?」


「うーん、今で100人いかないくらいかな。で、来月から俺たち5人含めて20人入団予定で、引退者はいなかったから120人規模かな」


「それは、食事係は大変そうですね。どうしましょう?」


「すぅ姉が食事を作ってくれるのはすごくうれしいんだけど…人数も人数だから大変だし、武器の手入れ係が良いんじゃないかな?」


「そうですねぇ。お手入れも得意ではありますから。そういう侺は掃除係ですか?」


「うん、そのつもり。厘は食材の仕入れ係、ユウは武器の作製係かな」


「え?みんなバラバラでいいの?特に厘くんと侺くん」


「えぇ、問題ありませんよ。俺も厘も得意分野が違いますので」


「そうそう、俺に細かい作業は向いてないし!」


「俺もだなー。やっぱり仕事って言うからには得意分野で貢献しないといけないよな!」


そうなんだと驚きながらも納得する。

たしかに、それぞれ得意分野を担当してもらえた方が助かるのだ。

後は実際に行ってから体感してもらうのが一番いいだろう。

傭兵団の説明をしていたら結構いい時間になっていたので、

それぞれ片付けと身支度をして就寝することになった。

世界のモノはみんなでまとまって地下神殿の玉座付近で休むそうだ。

翌朝、傭兵団のあるムトスへ移動する。


「まさか移動方法が徒歩だとは思ってもいなかったよ」


「これは徒歩というのかわかりませんけど」


徒歩にしては移動速度は馬車並みに早い。

風魔法を応用して通常よりもかなり早い速度で歩いているのだ。

これも、魔力操作の一環で足元に風の魔素を集中させて足を浮かせる際に後方に風魔法を出力することで、

進む距離を普段の数倍にしているのだ。

歩いていると表現しているが、実際には飛んでいる様なイメージだ。

この速さで進むのであれば、通常徒歩で3日かかるところを半日で移動することが出来る。


あの夜、ヨウが学園から地下神殿に来るときもこの要領で猛スピードで移動してきたらしい。

さすがにヨウ以外はまねできないので、そんな猛スピードで進んではいない。

今回は急いでいないのと、魔素コントロールのために1日かけて進むスピードで進んでいる。

最初こそバラバラだったが、だいぶ一緒の感覚で進むことが出来る様になってきた。


「このペースで進んだら夜には寮に着くね。このままこのペースを維持していこう」


「はい」


途中の街で休憩しつつ、1日かけて移動する。予定通り夕食の時間くらいには無事に傭兵団の寮にたどり着いた。

すると、学園を中退した先輩たちが笑顔で迎えてくれた。

先輩たちに傭兵団での実際の活動内容や、今までどのようなことを行っていたのかを聞く。

ヨウに聞いた事が大半だが、みんなで協力して実施するため、やる事は多いがものすごく大変というわけではなさそうだった。

先輩たちの話を聞いて、どこの係に所属するかそれぞれ再検討をするが、おおむね初期に決めた係になりそうだった。


それから寮の食堂で夕食を食べて、割り当てられた部屋へ行く。

事前に荷物は送ってあるので、あとは荷解きをするのみだ。

と言っても、荷物は多くなく、着替えなどの必要最低限だ。

家具はすべて寮に完備されているため、用意する必要がなかったのだ。

寮では1人部屋が基本だが、二人で一緒の部屋にすることも可能だったので、厘と侺は一緒の部屋にしてもらった。


「入団式は4日後だから、それまでは街で必要なものを購入したり自由に過ごしてくれ」


「わかりました。ありがとうございます」


「それでは、おやすみなさい」


「おやすみ」


「菫さん、あちらが女子寮の寮長のヒナタさんです。わからないことがあればヒナタさんに聞いて下さい」


「ヨウさん、ありがとうございます。ヒナタさん、菫です。よろしくお願い致します」


「菫さん、よろしく。寮内を案内するから一緒に行こう」


女子寮も男子寮と同じ造りで、違うのはトイレとお風呂が広いということくらいだろうか。

そう言う細かな配慮はされているらしい。

女性の方が多いというだけあって、意見も反映されやすいらしい。


「案内ありがとうございました。それでは、今夜はお暇します。お休みなさいませ」


「あぁ、おやすみ。何か不便があれば何でも言ってくれて構わない」


言葉はぶっきらぼうに聞こえますが、とても細かな配慮が出来るお方ですね。

ここはとてもいい方が集まっているように思えます。

そんな事を考えながら菫は自室へと入っていった。


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