32話
「そろそろヨウさんの卒業式終わる事かな?」
「思ったよりあっという間だったな」
「俺も強くなれたかな?」
「えぇ。ユウさんはとても強くなりましたよ」
「ただ…やっぱりヨウさんが一番強いのには変わりないのか」
「そうだな。けど、ヨウさんのおかげで俺たちもかなり強くなれたんだ。あの人は凄い」
そう、ヨウに魔力の流れを理解することで魔法の発動をより正確に出来ると教えてもらったのだ。
まずは魔力が体内でどのように動くかを把握するところからが厘たちの訓練内容だった。
掌の上で魔力を練る。まずはその練習から始まり、
次に手の中に魔力を留める意識をしながら魔力を練る。
それが出来たら、作った魔力を右の掌から左の掌へ、左の掌から左足へ、左足から右足へ、右足から再び右の掌へ移動させる。
その作業をすることがとても難しく、右の掌から左の掌へ移動させるのに2か月かかったのだ。
意識して動かさないと魔力は途中で消えてしまい、新たに左の掌で魔力が練られてしまうのだ。
左の掌から左足への移動がまたさらに難しかった。これには習得まで、3か月半を要した。
というのも、右の掌から左の掌へは腕を通って肩を経由し、再び腕に入り移動させるという単純な経路で魔力を移動させることが出来た。
それに対して、掌から肩まではスムーズに魔力を移動することが出来たのだが、
足方向に進めるのが物凄く難しかったのだ。
まず、どこを通るかは人によって異なった。中央から下へ降ろす人もいれば、体のラインに沿って降ろす人もいた。
問題はその後だった。体のラインに沿って降ろしていった魔力は、そのまま足元までぎこちなく降りていった。
中央から降ろす人は、そのまま中央から魔力が体外に逃げてしまうのだ。
この訓練の中で、身体の中を自在に魔力を移動させることはかなり難しい事だと実感した。
それをいとも簡単にやっているヨウは本当にすごいのだ。
ただ、これが出来る様になれば魔力での局所的な防御に加えて、魔法発動時間の短縮が可能なのだ。
身体の中で魔力を準備することが出来るのだから、無詠唱で魔法が発動できることになる。
そういえばヨウが詠唱しているところをみたことがない気がする。
言葉にしなくても、人に聞こえないような小さい声でも詠唱さえすれば魔法を発動することが出来るから、今まで違和感に感じることはなかった。
まさか無詠唱だったとは思わなかった。
魔力操作の訓練のおかげで、無詠唱で魔法を発動することが出来る様になった。
無詠唱で魔法を発動出来るようになってからは、魔法の威力も格段に上がった気がする。
無意識に魔力を放出するのと、意識して練った力を放出する違いがあるのだと菫は分析していた。
意識せずに魔力を放出すると、魔力が拡散しながら出ていくのに対し、
意識して練った魔力を放出すると結束した魔力が出ていくのだ。
そこの差が魔法の威力にもつながっているみたいだ。
「もうあと少しでヨウさんも卒業ですね。厘、侺、ユウくん。ここを出る準備をしましょうか」
菫の言葉にみんなは頷き、それぞれ荷物をまとめに行く。
明日からはヨウが所属する傭兵団へ入団するのだ。
今日の夜は訓練はやめて、ヨウの卒業祝いとお疲れ様会を実施することにした。
そのため、早めに荷物をまとめ、宴会の準備に移行する。
菫が料理を作ってくれる手伝いをしていると、卒業式を終えたヨウが到着した。
「ヨウさん、ちょうどいいタイミング。今から運ぶので荷物置いて来てください」
「わかった。準備手伝えなくてごめん」
「いえいえ、ヨウさんの卒業祝いでもあるので気にせずに」
準備が完了し、卒業祝い&お疲れ様会の開催だ。
「ヨウさん、卒業おめでとうございます!」
「ありがとう!みんなも訓練お疲れ様!」
「「おつかれさまー!!」」
そんな何気ない感じで始まった宴会、世界のモノたちも楽しんでいる。
-この料理なんて言うの?すごくおいしい-
-こっちもおいしいよ!-
-僕、これ嫌い…-
世界のモノたちも各々好みがあるようで、これ美味しい、苦手とそれぞれの料理を試しているみたいだった。
それぞれ気に入った料理が見つかったみたいで、あとはひたすら自分の好みの料理を食べている。
世界のモノたちは仲が良いみたいで、あーだこーだ言いながら仲良く過ごしていた。
「ユウさん、傭兵団に関する書類は全て提出済みですけど他に必要なものありますか?」
「いや、大丈夫だよ。あとは現地に行って入団式に出席するのみだ。その入団式もまだ先だし、しばらくは荷物の片づけとかかな」
「わかりました。拠点は寮で遠征時はどのような感じになるのですか?」
「遠征時は長期の場合は仮設住宅を建てるよ。短期の場合はどこかの街で宿をとるかテントでの野営になるかな」
「仮設住宅!?すごい、そんなことも出来ちゃうの?」
「ユウ、違うよ。自分たちで建てるんだ」
「え…それも仕事内容なのか…」
「そうだね、自分たちで建てるよ。それ以外にも武器の材料とかも自分たちで取りに行くし、加工もある程度はやるよ」
「マジ?モンスター倒すだけじゃないんだ」
「そんなにモンスターは頻繁に出てこないからね」
「わかった、やる事はいっぱいあるってことだな!ワクワクしてきた」
「だな!俺もだ」
ユウと厘はやる気を出している。
初めは通常の傭兵団と同じ業務で進めていくが、のちのち特務隊として別行動することになるが、今はまだ黙っていよう。
侺と菫は理解していると思うから特に説明する必要はなさそうだ。




