30話
「ところで、流れで契約してしまいましたが、何がどう変わるのでしょうか」
-それはね、私たちの力を渡すことが出来るのと、私たちも人間界に関与することが出来る様になったの-
「人間界に関与?」
-まずは試してみるか!厘、俺様の力を受け取れ!-
「え?」
キールが厘に向かって魔力を流し込む。
厘が赤く光る。
「うわ、これ凄い!魔力量がどんどん増えてくる!」
-感覚的にはそんな感じだ。俺たちが魔力を渡すから、魔力切れを起こすことがほぼなくなる、更に少しパワーアップするぜ!-
カーディナルに魔法を発動してみてと言われ、厘は魔力を解放した。
すると、普段の倍以上の威力で魔力の塊が飛んで行った。
「うわっ!何この威力!?こんなの放ったら街が吹き飛ぶ…!」
「すこしどころかかなりなパワーアップだな。調節する必要があるな」
「これはもしかして…ふふっ」
「え?え?何?何が起きたんだ?」
みんなそれぞれの感想を言いながら自分の新しい力を試している。
その様子を満足そうに見ていた世界のモノたちだが、不意に扉の方を注視する。
その様子に気付いた菫が声を掛ける。
「どうかされましたか?」
-菫、何か…強大な力を持った何かが近づいて来てる-
「それは、悪魔…ではなくて?」
-下級悪魔程度なら俺様たちでも簡単に撃退できるが、これは…そのもっと上だな-
「ということは、魔王…ですか?」
普段、穏やかな優しい声の菫が放った暗く低い声に驚きつつ、なるほどと納得する。
それは、俺たちのパワーアップを確認しに来たのか、たまたま今のタイミングだったのか…。
分からないが、一つ言えることは、今から来るのは力の強い敵。
しかも悪魔なんかと言えるくらいに強い世界のモノですら敵わないような…。
俺たちの…敵。
「すぅ姉?侺…?」
不安そうに菫と侺を見つめる。
すると不意に菫が顔を上げる。
「いえ、魔王ではないですね」
いつもの穏やかな声色に安堵するとともに、魔王ではないとすると…いったい誰なんだ?
「今は外の時間だと、夜中の1時くらいでしょうか?」
「そうだね、そのくらいの時間だ」
「一度、外に出ましょうか?」
世界のモノたちもいつの間にか警戒を解いていた。
話しを聞いていると、仲間が契約者を連れてきたらしい。
俺たち以外にも契約者が居ることにも驚いたが、何故その人物がここを目指して来ているのだろうか。
更に世界のモノたちが話している内容を確認すると、その人物は学園の人で、
俺たちと仲が良かったと言っている。…つまり?
夜中にあの人を連れてここに向かっている…。
「ヤバイ、厘。生徒会長が来てるっぽいんだ。すぅ姉、ここに籠ってやり過ごすこと出来ないかな?」
「侺、それは不可能です。生徒会長は世界のモノと契約したと言いました。ということは、ここにも入れます」
「侺?なんで生徒会長がここに来ることがまずいの?ここの存在も打ち明けたよね」
「問題は今の時間帯だ。厘、今外の世界の時間は…深夜1時だ」
「うん。それはさっき…えぇ~!?」
「なんだなんだ?厘、侺、俺にも分かるように教えてくれ…って、厘、固まってるけど大丈夫か!?」
「あ、うん。大丈夫…。生徒会長、普段はものすごく優しくていい人なんだけど…眠くなるとものすごく…なんというか…怖いんだ…」
「プレッシャーが半端じゃない。あれはトラウマレベルだ…」
実際に厘はあれがトラウマでしばらく生徒会長とまともに話す事も出来なかったのだ。
生徒会長と初めて会話した日の事をユウに説明する。
するとユウは血の気の引いたような顔をしていた。
「…だから最初のころ生徒会長の事あんなに警戒していたんだな」
「どうしよ…俺、あのモードの生徒会長かなり苦手…」
1度しかそのモードに出会っていないというのに、すでにここまで苦手意識を持っているということはそういう事なのだろう…。
しかも普段冷静な侺までもが動揺しているのを見たユウも不安になってくる。
どちらにしろ、ここに向かっているのだ。なるべく刺激しない様に早めに寝てもらう様に努めようと心に決める。
「来るぞ」
突然地下神殿の扉が開く。
すると、先日別れたばかりの生徒会長が地下神殿の中に入ってきた。
なんだこのプレッシャーは…この前とは全く違う…。




