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月影のもとへ  作者:
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29話

そのころ、契約者を探して彷徨っている世界のモノが放つ光が4つほどラルク・ウムグの空に漂っていた。


-ここら辺に気配があったのに、どこに消えたんだよ!!-

-落ち着いて、ここら辺に居るのは間違いよ-

-うーん。ここら辺って…-

-おい、あの場所ってこの辺になかったか?-

-あったと思います。そこに居るのかも…?-


ちいさな4つの光は厘たちが居る地下神殿の方向へ迷わず向かっていく。

地下神殿は、実は世界のモノたちか管理している建物の一つで、

厘たちが使用している場所は時の回廊と呼ばれており、時間の流れを変えることが出来る。

なぜ厘たちがその時の回廊に入れるかというと、世界のモノの力を分け与えられたからだった。

進化者の前にしか扉が出現しないのはその理由からだ。

そして、この世界とは切り離された空間に存在しているため、気配を探ることが出来ないのだ。




厘たちは地下神殿で新しい技の開発、研究、訓練をそれぞれ行っていた。


「厘、今の感じで空から降り注ぐ感じで試してみよう」


「敵の上空でバケツをひっくり返す…みたいな感じ?」


「あぁ、そのイメージの方が分かりやすいな。それでいこう」


「炎龍よ、すべてを焼き尽くせ!」

「氷龍よ、すべてを凍てつかせろ」


厘と侺がそれぞれ魔力を解放する。

人より少し高い位置に炎の龍と氷の龍が互いに絡み合いながら進んでいき、

目標地点に到達したタイミングで炎と氷が一気に落下した。

さらに炎が氷を一気に溶かし、気化させ爆発させる。

これは、細かいコントロールに長けている侺が氷の魔力調整を実施し、

炎に溶かされるように出力を制限したのだ。


「今のは良い感じですね、侺」


菫に褒められて二人は嬉しそうに頷き合う。

菫が満足いくような技が開発できたのだ。

隕石みたいに地面を抉ることなく、かつ素早く発動できる技だ。

ただ、今までの技以上に精密さが要求されるため、二人の集中度も関係してくる。

特に侺の方だ。厘の出力を確認しつつ、自分の出力を調整しないといけないのだ。


「新技が完成したから、あとは練度を上げていく」


「いいな~、俺もそういうドーンって技、欲しい…」


-やっぱりここにいた-


厘たちが技について話していると、子供の声が聞こえた。

目の前に小さな光が4つ飛んできた。

その4つの光が厘たちの周りを飛びながら話を続ける。


-よし、俺様が派手な技を編み出してやる!-


-待って、それは僕の仕事-


-待ちなよ。まずは契約をしないと-


-うんうん、まずは契約しよ-


厘たちはその光を眺めながらきょとんとしている。

その中で一番初めに落ち着きを取り戻した菫がその光に話しかける。


「あなた、もしかして世界のモノ、ですか?」


菫の言葉を聞いた厘たちはさらに驚く。

世界のモノ、それは6年前のあの日、覚醒した日に聞いた声だったと菫は言う。

そう言われてみれば、聞き覚えのある声だったような気がする。

世界のモノが再び自分たちの前に現れた。

それが何を意味するのか…。


-菫、私の声覚えてるの?うれしい!-


-菫は、凄いな-


黒い光が菫の前に来て、話しだす。


-そう、菫。巻き込んでごめんね。ホントはあの双子だけのつもりだったんだけど…-


ホントは世界のモノとのつながりを菫には持たせるつもりはなかったのだと。

でも、あの場で菫にも繋がりを持たせることで菫は死なずに済んだのだ。

あのまま菫まで死んでいたら双子は立ち直れなかったかもしれないから、助けたのだ。


「いいえ、私は彼らと一緒に覚醒出来て良かったと思っています。ありがとうございました」


-ありがとう!けど…更に危険な目に合わせるために、契約しに来たの…。本当にごめんなさい-


「ふふっ。世界のモノって優しいんですね?私は大丈夫ですよ。その契約、お願いしても良いですか?」


-優しいのは菫だよ!何をさせるか聞かないの?でも、契約もOKしてくれてありがとう!この魔法陣に血を一滴落としてほしい-


「何をさせるかですか?ふふ。なんとなく推測出来てます。血を一滴ですね」


菫は素早く所持していたナイフを取り出すと、指先にナイフを当てる。

そして血を魔法陣へと落とす。

するとその血が光となり世界のモノに集まり、更に光り輝く。

そこで菫の中にある言葉が浮かんできた。


「カーディナル」


静かにつぶやくと、世界のモノに光がすべて吸収されたかと思うと、

1人のかわいらしい黒髪の小さな女の子が菫の目の前に現れた。


「あなたがカーディナルですか?」


-うん!そう、私がカーディナル。菫、よろしくね-


「よろしくお願い致します」


すると、ずっとそわそわしていた赤い光が厘の周りを飛び回る。


-次は俺様の番だぜ!厘、菫と同じようにこの魔法陣に血を一滴落としてくれ!-


それを聞いて厘は魔法陣に血を1滴落とす。

すると、また血が光となり世界のモノに集まり、更に光り輝く。

厘にもはっきりと言葉が浮かんでくる。


「キール!」


すると光が全て世界のモノへ吸収されていく。

赤紙の勝気そうな貌をした少年が現れた。


-契約完了!厘、よろしく頼むぜ!-


そう言ってキールはさっそく厘の頭の上に乗る。


「あぁ、キール、よろしく!」


厘も特に気にすることなく受け入れる。


-次は僕の番だね、侺。よろしく-


「よろしく」


侺も魔法陣に血を1滴落とす。

同様に光となり世界のモノに集まる。

ふと頭に浮かんだ言葉を口にする。


「レイン」


侺が静かにつぶやくと、光がすべて吸収されていく。

水色の髪の大人しそうな子供が現れる。


キールと違い、レインは侺を見つめると頷いて、侺の肩に座った。

頭に乗られるの嫌だって伝わったのかな?

そんな事を考えつつ、肩なら問題ないなと思いそのままでいる。


-最後は僕たち-


次々に契約を進める菫たちに驚きつつも、ユウも覚悟を決める。

同様に血を一滴魔法陣へと落とす。

光が世界のモノに集まり、ユウの中に名前が浮かんでくる。


「パール!」


ユウも無事に契約が終わる。


-これでみんな契約完了だね、改めてみんな、よろしく-


「あぁ、よろしく」


こうして、世界のモノとの契約が滞りなく終わった。

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