27話
「あぁ…厘くんと侺くんの顔が…動いている?」
円盤から浮かび上がった四角い光に厘と侺が透けて見えている。
実際にそこにいるかの様に動くのだ。今は全力で両手を振っている厘が見える。
『びっくりしますよね!これ、お互いの映像を映しながら会話ができるんです!
すぅ姉の発明品なんですけど、遠くにいても普通に会話できるからかなり重宝するんですよ!』
興奮気味に話す厘の顔を呆然と見つめる。
驚きすぎて少し理解が追い付いていなかったが、ヨウは一呼吸おいていつも通りの調子に戻るとすぐに顔を引き締める。
「すごいものを発明しているんだな、菫さんは。これは世の中にばらまいたらすごいことになりそうな…」
『これを世に出すときには使用料をしっかりと受け取りますよ。ふふっ♪』
どうやら菫もすぐ近くにいるらしい。顔は見えないが、声が聞こえてきた。
どう考えても世界がひっくり返るくらいの発明をしておいてそんな軽い調子だなんて、すごいなと思う。
遠方にいる人との会話は手紙でのやり取りでしか出来ない。数日のラグは必ず発生するのだ。
中には、風魔法に乗せて手紙を運ぶ人もいるが、片手で数えるほどの人しかそんなこと出来ない。
厘たちと出会ってまだ数か月しか経ってないのに、とんでもない情報量が入ってくるから、頭の整理でパンク寸前である。
「聞きたいことは山ほどあるんだけど…とりあえず、これからの事、教えてもらってもいいかな?」
そう言うと厘と侺は顔を見合わせる。
そして今どこにいてこれからどうするのかを説明し始める。
『生徒会長、俺たちは今、すぅ姉の家にいる。ラルク・ウムグの南、海岸の近くです』
ヨウは頷く。事前に調べた菫、厘と侺の出身地はラルク・ウムグの海岸に近い位置にあった。
「ユウくんも一緒なんだよね?」
『俺もいる!』
ユウの声だけ聞こえる。
『はい、4人一緒に居ます。そして、この後近くにある、俺たちが地下神殿と呼んでいる場所に移動します』
まず今の時点で質問したい内容が2点あった。
ヴァルバスからラルク・ウムグまで馬車で向かっても2,3日はかかるのに、彼らはたった半日でたどり着いているという事。
そして地下神殿呼んでいるという場所。この世界に宮殿と呼ばれる場所が数か所存在していた。
そのすべは不思議な力が宿っており、教会が厳重に管理していた。
ただ、教会が所有している宮殿は全て地上に存在しており、地下神殿というのは初めて聞いたのだが…。
少し考える素振りを見せたヨウを見て、侺は補足する。
『今回は急を要していたので、転移魔法を使用しました。さっき言った地下神殿に魔法陣が準備してあってそこに転移という方法です。
そして、その地下神殿なんですけど、俺と厘が小さいころに遊んでいたときに見つけた宮殿です。
教会も村の人たちも誰も存在を知らない場所だから、安全なんです』
「存在を知らない…?地下というくらいだから見つかりにくい場所にあるのかな?」
『ごめんなさい、これに関しては俺たちにもわからないんですが、地下神殿に入る入口が俺たちの前にだけ現れるんです』
『昔、地下神殿を見つけた時に、村の友達を連れて地下神殿の入口のある場所に行ったら、どこを探しても入口が見つからなかったんです』
『俺と厘、すぅ姉だけで行った時は入口が存在して中に入ることが出来るようなんです』
『え?俺は?俺も一緒に入れたよな?』
『そうなんだよね、ユウも入れるみたいなんだ』
またしても疑問しか浮かばない内容が出てきて、何をどう聞いたらいいかわからなくなってきた。
「つまり、君たち以外の部外者がその地下神殿に入ることが不可能という事かな?」
『おそらく、そういう認識で問題ないと思います』
「それは、僕も入れないという事か…」
『おそらくは。たぶん、きっかけがあれば入れるようになります』
曰く、世界のモノの声が聞こえて力を授けられた人のみがその領域に入ることが出来るらしい。
ただ、これは菫の憶測だという事だ。だが、信ぴょう性は高い。
それから、リオの事も聞くことが出来た。
内容はかなり衝撃的だったが、それでもヨウはリオに逢いたいし、感謝している。
そして、今後の事を確認した。
ヨウは予定通り半年後に学園を卒業、その後傭兵団の団長になる。
厘たちは、地下神殿で技の開発と強化を行うらしい。
これはさらに衝撃の事実だが、地下神殿では現実世界とは時間の流れが異なるらしい。
大体5分の1ほどのゆったりとした時間が流れているらしい。
ということは、ヨウが卒業する半年の間に、2年半分の修業が出来ることになる。
それだけでかなりの戦力強化になるだろうという事だった。
ヨウ自身も戦力アップを図る必要がありそうだ。
一度、半年後、ヨウが卒業したらラルク・ウムグに集まることにした。
ヨウも地下神殿に入れるか確認するためだ。
蜜に連絡を取ることで約束し、その日の会話は終了した。
また、この円盤型の連絡機は真ん中に埋め込まれたマイクが入った部分を取り外すことで持ち運ぶことが出来て、
声だけの会話をすることが可能らしい。
持ち運べるが、しっかり充電していないと電源が切れてしまうため、使用できなくなるようだ。
寝ている間に充電し、明日以降はマイク部分とイヤホンを持ち歩くことにする。
まずは状況もわかったし、明日からは学園の方でもいろいろと対応に追われるだろうから今日は休もうと準備をする。
「世界のモノとやら、僕にも力を分けて欲しいな?なんてね」




