20話
突然後方から聞こえた声に驚く。
「すぅ姉!?」
「もちろん、君たちの保護者的立ち位置な君も一緒に勧誘しないと、断られそうだからね」
そう言ってヨウは菫が居たことを知っていたかのように菫の方に向かって話をする。
菫は気配を殺すことにかなり長けている。
厘と侺、ユウが菫の接近に気が付かなかった様に。
そしてユウもいろいろな意味で驚いている。
「俺も!?」
自分とは関係ない話だと思い、途中から発言をしていなかったユウだが、
ここに呼ばれている時点で関係なくはないのだが…。
そんなこんなで、あれこれと話を進めるうちに、傭兵団に入れてもらった方が動きやすいという事もあり、
特殊部隊で自由に動いてもいいのであればという条件で承諾した。
何はともあれ、4人の就職先が決まった。
ただ、学園自体は卒業しておいた方が何かと都合がいいので、俺たちは今までの生徒会長信者とは違い、
卒業してから傭兵団へ入団することとなった。
すぅ姉は1年早く傭兵団へ入団するのだが、男所帯に女性が入るのはどうなのか?という問いにヨウは答える。
「大丈夫、身の回りの世話をしてくれる女性もいれば、前線で活躍する女性も多いんだ」
曰く、男女比は侍女含めて女性の方が多いらしい。
なんでも、ムトスは女性の方が男性よりも多いのだ。必然的に、傭兵団に限らず他の職場でも女性の数が圧倒的に多い。
その噂を聞きつけた男性が外部から来ることも間々あるみたいだ。
むさくるしいイメージをしていたのだが、思ったより華やかな職場になりそうだった。
あれから数週間経ったが、毎日みんなで集まって情報共有をしている。
生徒会長という立場上、ヨウから得られる情報はかなりの量だ。
その代わり、ヨウ自身も忙しそうではある。
また、学園の復旧作業と、魔術師の操作が同時進行で進められ分かったことも少なからずある。
「モンスターたちを召喚していた人物は、3年の蘭。彼女は大人しく、いつも一人でいる様なタイプの子だったかな」
あの一件依頼、彼女の行方がわからなくなっているらしい。
そこで、彼女が犯人で逃亡したのだろうという結論だそうだ。
だが、その蘭という女性、オリジンで力もかなり弱く、とても召喚魔法が使える様には思えないとの事。
だから、内通者として外部から人を入れ込んだ可能性も考慮して操作をしているそうだ。
ただ…外部からの侵入者の足跡、魔力の残滓など、普通なら出るはずの痕跡が一つも出てきていない。
操作が難航している理由もそこにあるとの事だ。
まずは彼女の行方を捜しつつ、更なる調査を行うことになっている。
オリジンと偽って能力を隠して潜入していた可能性もあるのだが…。
厘、侺、菫、更にユウまで力を隠しているから、一概にただのオリジンじゃないかもしれないとも言えないのがつらいところである。
まだヨウにも話していない為、なかなか言い出しづらいのもある。
「学園の復旧の方は、教会の助力もあって来週にも終わりそうなんだ。授業も開始できると思うよ」
ここ数日間は復旧の手伝いと課題ばかりで飽きていたところだったから、授業の再開は厘にとって吉報だ。
勉強は好きじゃないが、授業は嫌いではないのだ。
「今日の手伝いは終了したから、街の方に買い物に行かない?」
「買い物?いいですけど…何か欲しいものがあるんですか?」
「ただみんなとお出掛けしたいだけ。ダメかな?」
侺はちょうど蛍光ペンがそろそろなくなりそうだから、インクを購入する必要があると考えていたところだった。
出掛けついでに文房具屋に寄ってもらうという条件でOKを出した。
だが、今は学園から出るべきではなかったのだ。




