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月影のもとへ  作者:
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1話

「ふぁ〜…ねみぃ…」


目元に掛かる明るめのベージュの髪を掻き上げながら目を擦る。

右の瞳が紅く、左の瞳が翠色のオッドアイ、右耳にだけ赤色のピアスを付けた厘が眠たそうに次の移動教室の為に教材を順次している。


「厘、次の授業は寝たら補習になるから寝ないようにね」

「おー、がんばる…寝そうになったら起こしてくれよ、侺」


そう言ってテキパキと準備を進めるのは、厘とそっくりだが、右の瞳は蒼く、左の瞳が緑色のオッドアイ、左耳にだけ青色のピアスを付けた侺だ。厘の人懐っこそうな見た目と反して、侺は無表情で少し冷たい印象が残る。


「目元を凍らせたら目を閉じなくて済むかな?試してみるか?…準備出来たなら行くぞ」

「おう、行く!ってそれ瞬き出来なくて目が痛くなるやつ!」

「冗談だ」


先の準備を終わらせて待っていた侺は、それ以前に冷たくて耐えられないし凍傷になったら大変だなぁと考えながら、準備が出来たらしい厘を急かして次の授業の教室に移動を開始した。

歩き出したら眠気が飛んだのか、凛はキョロキョロと周りを観察しだした。


「お、あの花もう咲いたんだ。後で写真取りに行こう!侺?」

「あぁ」


侺は厘を見ると軽く頷く。

そのすぐ後に厘は違う場所に目線を向けている。

忙しなく動く視線を追いながら、次の教室までの道のりをペースを落とさず進む。

その間もいろんなところにスマホのカメラを向けて写真を撮っている。


「ホントはもっとちゃんとしたカメラで撮りたいんだけどなぁ」


さすがに授業中まで一眼レフカメラを持ち歩くわけにはいかず、ロッカーにしまってある。

放課後は一眼レフを持っていろんな場所へ写真を撮りに行っている。

小さい頃から厘は写真を撮ることが好きだった。

海に出かけるときでさえ、カメラを持っていくから濡れて壊れないかいつも心配しているのは侺の方だった。

手入れを欠かさないため、壊れることなく今も現役で使用している。

今でも昔の写真をカメラの中に保存しており、いつでも見返せるようにしている。

こっそり家族の写真をたまに見ているのを侺は気付いていた。


ー今でも厘はアイツの事を…ー


侺は憎く思う。自分たちを、厘を裏切った兄だった人のことを。

それでも、厘はまだ兄だった人の事を想っている。

今でも厘はアイツのことを兄だと思っている。

そのことが物凄くもどかしい。侺はどうしても兄だった人の事を許せないでいるから。

けど、どうすることもできないから心の内に留めておく。

暗い感情が溢れそうになったが、今は次の授業のための移動中だ。気持ちを切り替えないと。


「ほら、厘。急がないと授業に遅れる」

「ごめん、すぐ行く!」


準備自体もたついていたたね、周りにはもう人は残っていない。

早歩きで行けば十分間に合う時間だろう。

そう思い、いつもより少し速い速度で歩き始めた時、校庭の方から爆発音が聞こえてきた。


「厘!」

「侺!」


お互い呼び合うと、目線を合わせて頷きあう。

ここまで大きな爆発音がしたとなると、何か大きなトラブルがあったと考えられる。

あまり多くの人には知られていないが、世の中には危険な生き物が多く存在しているのだ。

例えば、悪魔のように人間をいとも簡単に殺せるような生き物も。そういった類の生き物だった場合、被害は甚大になる。

厘と侺は次の授業の教室には向かわずに、校庭の方へ引き返す。

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