18話
厘がビクリと体を揺らす。
侺は目を見開くが、すぐにいつもの無表情へと戻る。
ヨウの事情は分かったし、単純にリオの居場所を探していることも理解できた。
だが、アイツは…アイツは突然姿を消したんだ。
あの日、全てが消えた。家も、村も、人も…両親も…。そう、リオは全てを燃やし尽くして消えたんだ。
俺たちと菫以外、全てを…。だから、俺たちも居場所は知らない。
「すみません、生徒会長。俺たちにも居場所がわからないんです…」
「え…?」
頭を上げたヨウと侺の目線が合う。
侺はヨウの顔を目をそらさずに見つめる。
すると、ヨウは侺が嘘を付いていないと感じた様で、姿勢を正す。
「そう…なんだ」
俺たちなら知っていると期待していたのだろう。
ようやく手掛かりが見つかると思ったんだけどなぁと呟いている。
「ただ…」
ヨウは、その先を促すように俺の方を向く。
「たぶん、たぶんですよ。近い将来、リオには会わないといけない、だから会いに行かなきゃとは思ってます」
「侺…?」
厘が驚いた顔をして侺を見る。
厘には言ってないことがある。
あの時、リオが居なくなる直前に、リオから告げられた言葉があった。
『絶対に、会いに来て。その時は俺の事を-。約束だよ』
厘は大量の魔力を浴びて気絶していたから知らないのだ。
「そうなんだ、なら君たちと行動を共にしていたらいつかリオに逢えるかな?」
「そう、かもですけど、それがいつになるかわかりません」
「うん、それでも、今はそれしか望みがないから。俺も他の方法でリオの居場所は探しているから、
何か進捗があれば伝えるし、何かわかったら教えて欲しい」
「…一つ質問していいですか?」
「なぁに?何でも聞いて」
「なんで俺たちの部屋に居たんですか?そしてなんであんなにも険悪な雰囲気を出していたんですか?
正直、最近の生徒会長を見ていて、今の方が自然体であの日の方が異質に思えてて…」
「…。ごめん。厘くんと侺くんの帰りが思ったより遅くて…眠かったんだよね」
「…眠かった………?」
「ごめんね、同室の子によく言われるんだけど、僕、眠いと人が変わったように態度が悪くなるらしくて…」
僕自身は眠気に必死に対抗してるだけのつもりなんだけど、眠くなると自分の意志じゃなく別の人格っぽいのが表に出てきて…
つまり、眠くなると人格が狂暴になるらしい。そして本人にその自覚がないらしい。
不思議に思っていたんだ。普段や食堂で合った時には全くプレッシャーを感じないどころか、
柔らかい雰囲気を醸し出していたから。
そのほかの時も観察していたが、一度も寮で会った時の様なプレッシャーは一度も感じなかった。
だから、今の言葉を信じてみることにした。
ただ、あの噂の件もあるからそれも確認する必要がある。
「わかりました。もうひとつ、良いですか?」
「うん」
「生徒会長と親しくしてた人はみんな揃ってこの学園を退学していってるんです。それはなんでですか?」
「侺!?」
あまりにも直球な質問に厘が驚いている。
だが、侺がヨウと話して感じたことは、ヨウは悪い人ではないし、嘘はついていない。
力が強く、プレッシャーも強かったが、あの日以外もずっと観察していて、
一度もプレッシャーを感じたことはなく、いつも柔らかい雰囲気しか出ていなかった。
ヨウが素を隠しているのかと最初疑ったのだが、さっき話を聞いた限り、とても誠実だ。
もしこの前みたいに力を無理にでも解放したら厘と侺だとしても大怪我は免れない。
それこそ、力ずくでリオの情報を聞き出すこともできるほどの力を持っているのだ。
それなのに、力ずくではなく、頭を下げてお願いしてきた。
それは、リオの、恩人の弟たちだからなのかもしれない。だが、それ以上に悪い人に思えないというのが侺の感じた印象だ。