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月影のもとへ  作者:
18/50

17話

そうやって、ヨウは説明し始めた。

曰く、まず魔素を意識するところから始めるらしい。

生物の中には魔素が流れていて、その魔素の量はほとんどの生物が同量の魔素を所持しているらしい。

ではなぜ、魔法が使える人と使えない人がいるのか、また、

オリジンとチェンジャーが存在するのか。

まず、魔法が使える有無は魔素の存在に気付けるかどうかなのだ。

それを子供のころに無意識に覚えた人はオリジンになる。

魔素の存在に気付かないままでいるとノーマルのままであるらしい。

また、その魔素の存在に気付くか気付かないかはかなり重要で、

気付かずに成人するとヒトの体からは魔素が不要のものと認識されなくなってしまうのだ。

次にチェンジャーだが、とある瞬間に魔素の存在に気付くのだという。

実際、ヨウがチェンジャーとして覚醒したのは、16歳になる直前らしい。

ヨウが覚醒したきっかけは精神的ショックだったらしい。

詳細は省かれていたが、心にひどく傷を負い、自分の殻に閉じこもっている時に魔素の存在に気付いたとの事だ。

それをきっかけに、ヨウは雷魔法が使えるチェンジャーとして覚醒した。

実は、他の魔法も練習しており、少しずつだが使える様になってきたといって火を出して見せた。

そうやって、今は全属性の魔法を一通り使えると言っている。

だが、これは国の方には伝えていないし、教師たちにも話したことはないらしい。


「なぜそんなに重要なことを俺たちに…?」


「君たちの事を知りたいと思ったんだ。だったらまずは僕の事を話すのが筋だろう?」


そう言って笑った顔は、作り笑いではなく本当の笑顔に見えた。

少しは信用してもいいのだろうか…?わからない。これも罠かもしれないから不用意にこちらの情報を漏らすわけにはいかない。

だが、チェンジャーだけど全属性の魔法が使えると言われると、

もしかしたら俺たちと同じ進化者か?とも疑う。

だが、きっかけがあってチェンジャーとなったと言っていた。

国にも登録されている。もう少しだけ話を聞いてみることにした。


「チャンジャーに覚醒したときの事、もう少し詳しく教えて下さい」


そう言うと、ヨウはうれしそうにうなずくと、話してくれた。


「まず、体の中に流れる気みたいなものを感じたんだ。たぶん、外からのすべての音を意識的に遮断していたから

 体の中の音や流れが鮮明に聞こえてきた。そして、その流れる気みたいなものが体の外に出たがっていると感じたんだ」


「それは魔法を使うときに感じる魔素の流れですね」


「そう。今だとそれがはっきりと魔素だとわかる。けど、当時魔法を使えなかった僕はそれが何かもわからずに力を解放してしまったんだ」


「え…?」


「それは…」


厘と侺が驚くのも無理はない。ヨウの力は並大抵のチェンジャーの能力ではないのだ。

全力で解放したとしたら、周りへの被害が甚大になったはずだ。

驚く二人にヨウは告げる。


「たぶん、僕が力を全力で解放していたら、この学園と学園にいる人達は全て消えていたんじゃないかな」


そういうヨウの横顔はとてもさみしそうな、それでいて懐かしそうな表情をしていた。


「でもこの学園は今でもあるし、そんな大きな事故が起きたニュースも見てない…」


「うん」


再び見たヨウの横顔はとても悲しそうな表情をしていた。

次の瞬間にはいつも通りの笑みが浮かべられていた。


「止めてくれた人がいたんだ。僕の魔法を全て無効化してくれた」


その言葉に厘が反応する。

それって、もしかして…。侺も同じことを考えた。


「その時の寮で同室だった人なんだ」


「…」


それは間違いなく厘と侺の兄であるリオの事だろう。

なぜこんな話をする?何が目的だ?俺たちがリオの弟だと知って近づいてきたのだろうか…。

その疑問はすぐに解消された。


「その人は、いつも弟たちの話をしていたよ。可愛いだの優秀だのいつも自慢ばかりしていたけど、

 僕はまともに話を聞いたことがなかったんだよね…。

 …お礼を、言いたいだけなんだ。君のおかげで僕は、何も失わずに済んだと。

 魔法の正しい使い方を教えてくれてありがとうって」


ただ、そう言いたいだけなんだと。ふふっと笑うヨウは悲しそうな表情をしていた。

この人、こんなにも表情が表に出る人だったのか…。

そして、居なくなる前のリオはやっぱりどこにいてもリオなんだ。

いつも正しい選択をして、周りの人を助ける。いつもかっこいい正義の味方。

居なくなる前は、厘にとっても、もちろん侺にとっても自慢の兄だったのだ。

二人はリオの事が大好きだった。


「もっとちゃんと話を聞いておけばよかったってずっと後悔してた」


そう言うと、いつもと同じ笑顔になった。

そうか、この人は自分の表情を隠すためにいつも笑顔を張り付けているのか。


「そのおかげでこんなにも時間がかかってしまった。やっと二人を見つけることが出来たよ」


ヨウは立ち上がると、厘と侺の前に移動する。

そして、深々と頭を下げた。


「お願いだ、リオの居場所を教えてくれ!」

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