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月影のもとへ  作者:
12/50

11話

朝、二人が起きると寮の外から騒々しい喚き声の様なものが聞こえてきた。

その呻き声はあきらかに人ではない何かである。

今、この学園にはシールドが貼られているはずなのに、なぜだ?

先日貼ったシールドは、昨日寮へ帰ってきた際に確認し、問題なく発動していた。

シールドが直接壊された気配はなかった。ということは、補助アイテムが破壊された可能性がある。


二人は急いで準備すると、補助アイテムの確認へ向かおうとしたが、思った以上にモンスターが多く、

苦戦している生徒も多い。そのため、まずはモンスターを倒すことにした。


「はぁぁぁ!てや!とうっ!」


「…あれ、ユウ?え、何あの破壊力!?」


「たぶん、光魔法で身体強化して素手で戦ってるんだと思う…」


無茶苦茶な戦いを繰り広げているユウが目に入った。

とりあえず、加勢しに行くことにした。


「ユウ、暴れてるな?」


「よ、厘、侺、やっと起きたか。お寝坊さんたちだな?」


「余裕だな、ユウ。俺たちの加勢は必要なさそうだ」


モンスターを前に冗談を言う余裕があるらしい。

ここはユウに任せても問題ない気がするが、どうするか…。

そう考えていると、ユウの方から声を掛けてくれる。


「ここは俺で対応出来そうだ。お前たちは向こうの方に行ってくれないか?さっきから悲鳴がすごくて…」


「あぁ、その様だな。わかった。俺たちは向こう側に行ってくる。ユウ、何かあったら叫べ」


「りょーかい!お前たちの手を煩わせないように頑張るよ!」


そう力強い言葉をもらったため、二人は悲鳴が多く聞こえる方へ向かうことにした。

複数の箇所にモンスターが侵入しており、そこら中で戦いが繰り広げられている。

モンスターと戦っている生徒たちに気付かれないように助太刀しながら、素早く補助アイテムの確認をしに行く。

全ての補助アイテムは正常に作動しており、やはりシールドが破られた形跡は一切ない。

となると、内部の人間がモンスターを学園内へ誘導している可能性が出てくる。

が、今はそれどころではない。目の前のモンスターを倒さないことには、まともに移動することもかなわない。


「厘、あそこに見えるリザード、倒せるか?」


「あぁ、余裕だ」


「わかった、俺はあっちのオーガの方に行ってくる」


「りょーかい!」


そう言うと、厘はリザードの前へダッシュで向かう。

周りに倒れている生徒や、逃げ惑っている生徒がいるのが見える。

まずは、周りの生徒の状態確認を始める。


「厘、けが人は私に任せて、リザードの対応をお願いします」


厘は突然話しかけられて振り向く。そこには、1学年上の先輩であり、幼馴染の菫だ。

菫はけが人の治癒をしていた。


「すぅ姉!」


菫は、厘と侺の幼馴染というよりは、二人の1つ上の兄の幼馴染だ。ずっと一緒にいたため、実の姉の様に慕っているのだ。

もともと住んでいる場所がかなり遠いのに、この学園に通い始めたのは、菫が通っているからだった。

週末には買い物や食事などは一緒にしている。今でも姉的存在なのだ。

また、進化について知ってる数少ない人物でもある。


「厘、今この学園はモンスターの軍団に襲撃を受けています。おそらくほとんどの人が無事ではすまないでしょう」


「な!?くそっなんでこんな大群のモンスターに気付かなかったんだよ…」


「…仕方ありません。モンスターの大群は校舎の中から這い出てきてます。おそらく、誰かが召喚魔法でおびき寄せているのでしょう」


「校舎の中…まさか、学園内にあっち側の人が混ざっていたって事か!?

 ヤバイ、すぅ姉、学園の外にも、もしかして…」


「えぇ、居ます。かなり強力なモンスターが。この前の悪魔もいる様です」


この前、悪魔と対峙したことは菫には話してある。

シールドを学園の敷地に展開したこともだ。

そして、今、学園内に召喚魔法でモンスターの大群を呼び寄せている人がいる。

学園の外にはこの前の悪魔がモンスターを引き連れて来ている。

問題は、シールドだ。学園内のモンスターはシールドの外に出れない。

学園内のモンスターから逃げるのには、シールドの外に逃げれば済む。

だが、シールドの外には悪魔が待ち伏せしている。挟み撃ちだ。

唯一の望みは、悪魔でさえも二人が貼ったシールドを壊すことが出来ないという事実だ。

シールド内にいる限りは、学園内に湧いて出てくるモンスターと対峙するだけで済む。

問題は、どのくらいの量のモンスターが召喚されているのか、だ。

今の状況を見ると、数百匹はいる様に思える。

幸い、一般の人がかなわないような強いモンスターはいないように思う。

とは言っても、群れで連携してくるタイプのモンスターにはかなり苦戦を強いられることになる。


「まずは、目の前のモンスターを倒す。考えるのはそれからだ!」


さっきから素早い動きでこちらの攻撃をかわしながらも攻撃してくるリザードに集中する。

リザードは、個体がそれなりに強いため、群れで行動することはない。

1対1であれば、厘の方が得意なのだ。1点に集中する。

なかなか厘の攻撃が当たらない為、リザードに隙が出来た。その一瞬を厘は見逃さない。


「炎龍よ、すべてを焼き尽くせ!」


リザードに向かって炎の龍が一直線に向かっていく。

リザードは、思わぬ攻撃にかわそうとするが、炎龍の進む速さに対応できず、直撃した。

一瞬でリザードは燃え尽きる。厘は、すさまじい集中力で、相手の隙をついた攻撃をするのだ。

倒したリザードから出てきた魔石を素早く回収すると、校舎の方に向かう。

菫も、厘がリザードと戦っている時に周りの負傷者を回復し終えた様で、一緒に校舎の方に向かう。

一部の動ける人に、動けない人の避難を依頼する。


「厘、ユウくんの方はどうでしたか?やっぱり…」


「うん、進化してた」


「進化?あぁ、確かに、覚醒よりは進化の方がしっくりきますね」


菫は頭の回転がかなり早い。いつも、全てを説明する前に理解をしてくれるため、ついつい説明を省いてしまう癖がついてしまった。

ユウについて、学園に向かいながら菫に説明する。


「そうですか。これで進化した者が”5人”ですね」


「…うん、そうなるね。ねぇ、すぅ姉?」


「厘、話はあとの方が良さそうです」


学園内からおびただしい咆哮が聞こえてきた。

新たな召喚魔法で呼び寄せられたモンスターだろうか。かなり強い魔素を感じる。

厘と菫は校舎へと急ぐ。

校舎に近づくについてれ、倒れている生徒の数も多くなる。

学園内トップクラスの生徒たちと教員たちが湧き出てくるモンスターと対峙していた。


「厘、おそらくどこかに魔法陣を展開しているはずです」


「あぁ、けど、この学園にそんな魔法陣展開できるようなやついたか…?」


教師は数名がチェンジャーで、生徒にはチェンジャーは3名しかいない。

その数名のチェンジャーを中心に、複数の教師と生徒が、湧き出てくるモンスターと戦い続けている。

把握しているチェンジャーは全員戦いに参加しているということは…。

こんなに次々と湧き出てくると、こっちの魔力が尽きるのが先になりそうだった。

大元を潰すしかないな。


「まずは、建物の中に入るか。わらわらモンスターが湧き出て来てる」


「えぇ、行きましょう」

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