プロローグ
すごく懐かしい夢を見た。
それは、とても優しい記憶…もう2度と戻って来ない人と過ごした夢だった。
-早く行こうよ!-
-…早く来て-
そう言って、二人の弟たちは先に目的地へと出発した。
明るく元気いっぱいでとても優しいが、少しヤンチャなところがある兄と、寡黙だけど人一倍熱い心を持っている物静かな弟の双子たち。
すぐに行く!と言い、準備してあるカバンを持ち、家の戸締りをしてから、先に走って行った弟たちを追いかける。
目的地である、家から数分のところにある海岸に到着し、二人と日が暮れるまで貝を拾い、砂山を作ってトンネルを掘ったりして遊んだ。
とても楽しかったのに、二人の笑顔を思い出せない。
もう2度と呼んでもらえないであろう“お兄ちゃん”という悲痛な叫び声と最後に見た泣き顔しか思い出すことが出来なくなった。
あんなにも大好きだったのに。今でも愛しているのに…。もう俺に笑いかけてくれることは一生ないのだと思うと胸が張り裂けそうになる。
「そろそろ…か」
その声に反応したのか、側に突然執事然とした男が目の前に現れた。
「お呼びですか?」
「あぁ、アイツらをここに集めてくれ」
「は、かしこまりました」
命令を受けた男は消えた。
ここからが本番だ。覚悟を決めろ。
そう気合を入れると、執務室へと向かうのであった。