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日常 地域 こんなことあんなことそんなこと

まさかの出来事 潜んでた危険 強化ガラス戸・耐熱ガラス蓋が割れた訳

作者: 池畑瑠七

 みしっ…


 ピシッ…ピシッ…


 ん? なんか音がする…どこから?何の音?


 …バシーッ!!!!


 ドシャーン!!!


 えっ、ええええっ!!??なななななにっ???何が起きた!!??


 背後から突然襲い掛かってきたその爆音と振動に、滅茶苦茶ビックリして反射的にバッと振り向くと。

 目に入ってきたのは、ぐずぐずに崩れ落ちたガラスの山と中身がむき出しになった白い飾り戸棚だった!!!


 ななな何が起きたんだ一体、ここここれってどどど、どういうどうどういうこと????


 予想だにしない突然の事態に事の次第が呑み込めず、頭真っ白、身体はフリーズだ。


 しかし一瞬のブランクの後に「うちの子(先代ネコ)大丈夫かっ!?」

 我に返って砕け落ちたガラス戸のそばにあるコタツの掛け布団をばっ!とめくり中を確認すると、ああ良かった不在だ!!

 別室の日当たりいい出窓のベッドで、彼はスヤスヤと寝入っていた。


 ええと、ええと ととと、とりあえずこの部屋のドアを閉め切ろうか。かかか片付け終わるまでは、彼が入ってこれないように…。


 

 ぱたん。 ここ、これで良し……



 で。


 深呼吸。


 いったいこれは何だ…どうしてだ…いや、それよりもまずここ、これをかか、片付けなくっちゃ……しかしどうやって?

 どっから手を付けたらいいんじゃ……


 天井まである背高家具で、奥行きは15センチ、幅45センチくらい。所謂スキマ家具的な白い飾り戸棚だ。リビング南の角付近の壁を背にして設置してあり、天井を持ち上げるタイプの突っ張り板で転倒防止仕様になっている。

 上部はH60くらいの木戸で、床上180センチくらいから下に上下一枚ずつ片開きの戸。どちらも枠無しの強化ガラス製だ。

 下の丸一枚がその時突然、何の前触れもなく破裂するかのように割れ、一瞬で崩れ落ちたのだった。


 何がどうしてそうなったのか、にわかには分からない。ただ事実として、強化ガラスのはずの扉がものの見事にハチの巣状に砕け、戸棚前の床に粒ガラスの山が出来ているという惨状が目の前に在るのだ。

 自動車のフロントガラスとかが割れるとこういう感じになる。あの細かいつぶつぶ。それらは戸棚の手前半径1Mくらいの範囲に散乱し、中央が高く積み上がっている。ガラスの一部は砕けたままシート状にくっついて戸棚から外れ、山の上に折れ曲がって乗っかってる。そんな状態だった。


 そのとき地震があったとか、何かがぶつかったとか、急に大きな衝撃を加えたわけでもない。ただただ、その日その時突如として、そうなったのである。

 まるで目に見えない誰かがそう~~っと忍び寄ってきて、せーの!でハンマーでたたき割ったのか?とでも言うような。オカルトさながらの現象であった。


 この余りにも想定外な出来事に直面して、咄嗟にとった行動は。スリッパを履きネコの安全を確保することだった。

 …これはOK。


 次は。現場直下にはまだ近寄らず、ホールの収納棚に納まっている新聞紙の束から一日分を取り出してきた。それを広げて、とりあえず粒ガラスの山とその周辺を覆った。


 果たしてその行為が片付けに本当に必要な事だったかは、イマイチ定かでない。それなりに動転していたのは間違いなくて、一旦視界から遠ざけて心を落ち着かせたかった故の行動だったかもなと今は、思う。


 その状態でしばし部屋を見渡し、片付け方法を思案した。

 まずは戸棚の強度確認だよな…。あれがこのあと倒れてきたらそれこそ大変だ。

 ガラスの少ない所からそーっと近寄り、本体に揺れが無いかを確かめる。うん、揺れてはない。天井の突っ張りは効いてる。どうやら大丈夫そうだ。

 一つホッとする要素を見つけて、少々安堵。


 そこから抜き足差し足でそーっと離れまた、部屋と戸棚を交互に眺めて考える。

 棚の下だけじゃなく、砕けた衝撃で周囲にも飛び散っているだろう細かいガラスの破片を取り除かないと、真ん中の山に手を出せないよなあ…。こまかいガラス片を踏みつけたスリッパで他を歩き回るわけにはいかないし。

 ああやって、こうやって、真ん中の山の周囲から片付けていくよりほかないな……。よし。


 そして、掃除機をスタンバイ。玄関の土間帚とチリトリと厚手のゴム手袋、ついでに段ボール箱も引っ張り出してきた。普通の袖のないエプロンからつるつるした生地の丈長な作業着に着替えた。

 不燃ごみ用の大きな袋を2重にした中に新聞紙を広げて、段ボール箱にセット。

 さささ、さあ、これでいいかな…やるぞ。


 もう一度、深呼吸。

 新聞紙を被せてない所に散らばったガラス片をホウキとチリトリで除去。そのあとを掃除機掛け。

 それから新聞紙を一枚ずつ外しながら、山になったガラス片を取り除いていった。


 足元が大方片付いたところで、次はこたつ。カバーや敷物を外して内側に丸め、ベランダに出て柵の外側へ思いっきりパタパタ。

 そして掃除機掛けを施す。


 コタツが終わったらやっと棚の中だ。剥き出しになったミニカーとか飾り食器とかを一つ一つ点検しながら、置き場といっしょに掃除機で吸い取っていった。

 棚の中が元の状態に戻ったらもう一度、部屋中を隅々まで強モードで吸ってまわり、最後にスリッパも丁寧に掃除機掛け。


 割れたガラスの片づけはこれにて一応終了、掃除機内のごみを袋に移して、ぎゅっと口を閉じた。

 ひとまずほっと胸をなでおろす。


 でもまだ大仕事が残っていた。

 もう一枚のガラス戸をそのままにはしておけない。原因はまだ確定されてないけど、同じ状況で使用している同じ材質のもの。同じことがもう一枚にも起きる可能性が十分にあるからだ。

 これを外さねば……。


 長方形のコの字型金属部品が上下2か所隅っこに取り付けられていて、それでガラス板を挟み込んでいる。その部分が蝶番で木製棚の側面板に留められている。

 開閉側は上部の角1か所だけにマグネット式ラッチがついていて、グッと押せばポン!と開く方式になっていた。この、棚との接合部蝶番をドライバーで外して、慎重に上の扉も取り外した。


 さあ。あとは剥き出しのこの棚を、修理するまでとりあえずなんかで塞いどかないと。

 その年には大きな台風の襲来が2度あった。近隣でもかなり大きな被害が懸念されたため、一斉にみんながブルーシートや段ボール、養生テープなどを求めてホームセンターに殺到した夏だった。

 我が家もその時に窓の養生に使った大きな段ボールが残っており、それを使う事にした。


 でっかい段ボールを棚前面と側面にガバっとあてがい、黄緑の半透明の養生テープでしっかりと固定した。薄茶色の段ボールでくるまれ、盛大な米印状=ばってんに貼り付けられた黄緑色の極太養生テープ。白くてちょっとばかし見た目に洒落っ気もあった(?)華奢な飾り棚は、あっという間に見るも痛々しい様相へと変貌した。


 しかーし。こんな事態を誰が予想しただろうか!身の安全に勝るものなし、見た目なんてクソくらえである。



 これで、よし……。


 まだ動悸が収まらないようなソワソワした感覚はありつつ、一方で興奮状態のせいか妙な達成感も少々覚えながら。使用した備品、集めたガラス片入り段ボールを粛々と片付けたのだった。


 そしてこの突然降ってわいたかのような、オカルト的現象の原因であるが。冷静になって考えてみると、思い当たる要因は複数重なっていたように思われた。


 1.強い西日が毎日、ガラス戸にあたっていた。

 南西に面した小窓の傍に据えてあったため、その扉には午後イチから日暮れまでずっと西日が当たり続ける状態だった(2年間くらい)。

 ガラスが微細な伸縮を日々繰り返したことと、浴びた紫外線により劣化が進んだのではと推察。


 2.棚の前の床に、振動式健康器具を置いて使用していた。

 振動を吸収するゴムマットを敷いてはいたが、完全に吸収しきれるわけではない。器具を使用するたびにその振動がガラス戸に伝わり、金具と細かく衝突し続けたことで徐々に接合部に傷が入り、そこからヒビが入っていったのではないか。


 3.当時頻発していた中規模地震や、近くの自衛隊演習場から響いてくる砲撃の衝撃波振動。

 これらによる家の揺れももしかしたら、劣化や傷みを加速する遠因になってたかもしれない。


 4.ガラスが安物だった。

 これは残念ながら、十分あり得た。その家具自体が通販で購入した手頃価格な輸入品で、「強化ガラス」とはいっても品質はまあそれなり、だったかもしれない。



 素人なりの原因分析は以上で、このような複合要因によって徐々に劣化していったガラスが臨界状態に達した瞬間、あのように破断したのではという結論になった。


 それを受けて家族で相談した結果。

 戸棚本体は無傷なのでそのまま使用。壊れた扉にはアクリル板を取り付けることに決まった。

 同サイズの透明アクリル樹脂板2枚を知り合いの加工業者に依頼、ラッチと蝶番は元の物を再利用する事となった。

 そして、振動式健康器具はネコ部屋に移動。


 この時以来、せっかくの飾り戸棚だがその前面に常時カフェカーテン風な布を吊るし、西からの紫外線と熱射を避けるようにしている。

 お客さんが来た時だけ、布を外しお披露目している 笑。



 そうそう。ガラスと言えば、もう一つ忘れられない失敗談がある。

 台所で夕食のホワイトシチューを煮込んでいた時だった。煮込みナベに8割がた出来上がって、仕上げのルーを投入。それを溶かし切り、とろみ付けの為に弱火加熱を続けていると。

 ナベの上に少しずらして被せていた耐熱ガラスの蓋が、突然バン!という大きな音と共に破裂したのである!


 ええっ!!


 予期せぬ事態にビックリ仰天、心臓が早鐘を打つ。それでも咄嗟にガスの火は消した。そして恐々、ナベの中をのぞき込んだところ…。

 蓋のステンレス製リング枠をそこに残したまま、砕けたガラス片は煮込んでた完成間近なシチューの中へ全て、綺麗に吸い込まれていたのだった。


 それは頂き物の割と高性能なナベで、使い勝手が良かったので長いこと愛用していた品だった。

 いつものようにかき混ぜながら煮込んでいて、ナベの中にステンレスお玉を差し込んだ状態。ガラス蓋は噴き上がる蒸気が抜けるようにと、少し斜めにしてそこへ載せていた。

 長い時間その不安定な状態で、熱とぐつぐつの微細な振動が続いたことが破損の原因だった。


 ダイヤモンドのような細かい粒ガラスが大量に混ざりこみずっしり重たくなった、キラキラ光る白いシチューが、そこに在った。

 ガス台の周囲に破片も具材も飛び散らず、また私以外の人間が近くにいなかったのは不幸中の幸い。

 …誰もケガ、火傷とかせずに済んで、本当に良かったと胸をなでおろした。


 その日の夕食は、弁当用の買い置き冷凍食品をチン!して賄うこととなった。

 忘れられない大失敗の一つだ。



 ナベの取説やフタの注意書きシールとかもそういえばあった…だけどナベの取説とか必要?って感じで、ちゃんと読んだことも無かった。

 この後、別のガラス製鍋蓋を取り出してきて破損した奴とすげ替えようとしたときだった。

 驚きの事実が潜んでいた。そのフタにはちーさく「※こちらは耐熱性ではありません」と芥子粒みたいな文字が書かれたシールが、ぺろっと貼られているじゃあーりませんか!


 ありゃりゃりゃりゃ!そうなんか!勝手に思い込んでいたけど、ガラスの鍋蓋ってそもそも、どれもこれもが耐熱性ってわけじゃないのね!!

 耐熱ガラスがあんなふうに割れるんだからそうじゃないものはもう、推して知るべしである。


 耐熱とか強化、って書かれている製品にはそれまで漠然とした安心感を抱いていた。そしてそれ故、めんどくさがりな自分は使う時に扱いがどっか雑になってしまってたって事は、否めない。


 勝手な思い込み・過信は禁物だなあ~、入手時にしっかり確認するのは勿論だけど、使用前に取説や説明書き、めんどくさくても一応目を通すことを習慣にしていかなきゃ…と強く想いちょっぴり反省した「まさか」の出来事でありました。

















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― 新着の感想 ―
お疲れ様でございました。 強化ガラスの特徴がよく出ていました(笑 強いと言われる強化ガラス、小さなヒビがきっかけで粉々に割れる事があります。 そりゃもう背後からスナイパーに撃ち込まれたんではないと思…
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