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ベランダにアレが落ちていた

作者: 155

 目を覚ます。

 朝日が痛いくらいに眩しい。

 昨夜はカーテンも閉めずに寝てしまったようだ。流石に疲れすぎだろうと思う。


「ん? 何だあれ」


 猫の額ほどのベランダに何か赤いものが落ちているのが見えた。



 掃き出し窓を開けてその赤いものを手にとって見る。


「これって……」


 パンツ、パンティ、ショーツ。言い方は色々あるらしいが端的に言えば女性物の下着だ。

 昨夜は風が強かったからどこからか洗濯物が飛ばされてうちのベランダに落ちてきたのだろう。



「どうしよう」


 マンションの掲示板に【落とし物】として貼り付けておくこともできないし、わざわざこのために交番まで届けるのも逆に下着泥棒と思われて取調べされそうで嫌だ。

 かといって落とし主が名乗り出るまで保管しているのもおかしなものなので、ここは一つ全部なかったことにして捨ててしまうのが一番だと思う。


「あの、すみません」


 ベランダで赤い下着をつまんだままあれこれ考えていたら隣の部屋の方から声をかけられる。


「あっ、はい」


 とっさに今持っていた下着をポケットにしまい込んでしまった。だってお隣さんは黒髪清楚なお嬢さんなんだもん。

 こんなものをまじまじ見ているのを見られたら一発でヘンタイ認定されてしまうのは確実だろう。


「いま、ポケットししまわれた下着……わたしのなので返していただけますか?」





「申し訳ございませんでした! なにも盗もうなんてことは一っつも考えていませんでした。なんとなく、ついとっさにとってしまった行動ゆえどうかお許しを」


 お隣の北村サン宅へ赴き平身低頭、土下座も厭わないほど謝罪を繰り返す。


「気にしないでください。悪いのは夜まで洗濯物を出しっぱなしにしていたわたしの方ですし」

「本当ですか? ありがとうございます」


 北村さんは怒っていないようで心底ホッとした。ブラック企業勤めだけで疲弊しているのに犯罪歴までついたら生きていけない。


「ところで、村田さんはヘヴィメタがお好きなようですが?」

「あ、煩かったですか? 申し訳ないです。今度からヘッドホンして音楽聞くようにします」


 メタルは耳じゃなくて全身で浴びるように聴くのがベストだけど近所迷惑だしな。


「いえ違います。わたしもメタル、大好きなんです。メガデスの武道館ライブにも行きました」

「へ? 俺もそれ行きました」


「CDとかお持ちですか?」

「山程あります。ビデオもたくさん」


「お伺いしても?」

「ぜひとも」


 清楚だけどロックな彼女ができた。


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