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あれから数日がたち、私は再び街に行っていた。
最初は断られてしまったが、頼みに頼み込んで仕方なしに承諾してもらった。
護衛の数は増やされてしまったけれど。もうこの際仕方ない。
今日は、この前見つけた宝石や服を売れそうな店に行ってみようと思っている。
もしカインなになにか聞かれたら「サイズが小さくなってしまった、宝石は趣味が変わった」と言うつもりだ。
実際私は宝石なんか興味が無い。
見ている分には綺麗だな~とは思うけど。
実際こんな高価なもの身につけるのが怖い、と言うのが本音ではある。
早速目星をつけたお店に向かおうとしたらルイスを見かけた。今日もお使いかな?そう思い、
「ルイス様」
と、声をかけたがふいっとそっぽを向かれてしまった。
あれ、聞こえなかったかな?まぁいいやそんな時もあるよね。なんて思い目当ての店に行こうとした―――ら、ルイスの隣に女性の姿を見つけた。
一瞬でぶわっと嫌な汗をかいた。
ただの女性ならそうはならない。
あの、見覚えのある姿は…。
―――このゲームの主人公だ。
肩までの綺麗な銀色の髪、身長は少し低めでルイスの胸くらいの大きさだ。
これだけじゃ主人公だと特定するのは難しいかもしれないけれど、絶対に主人公だと私は確信した。
それは、腰のところにでかいリボンが付いているあの服装だ。
ゲームをやっている時やパッケージの写真を見た時はあまり違和感を感じなかったけど…実際にこうして目にしてみるとすごく目立つ。
…リボンでかすぎない?
でも、さすが主人公と言うべきか、あんなでかいリボンでも似合っている。
リリーは背が高めなので、あんな格好をしたらすごくアンバランスになってしまうな、と思ってしまうほどだ。
主人公ちゃん可愛いな~なんて思っていたけど、よくよく考えると焦りが募ってくる。
え、なんでここにいるの?なんでルイスと一緒に?
など、疑問は沢山浮かんでくる。
もしかして、もうカインと出会ってる―――?
最悪な考えが頭をよぎる。
もし、出会っていたら、私は―――。
ひとまず考えるのをやめ、目的を果たすため足を動かした。
私は最悪の事態を避けるため、ここに来たのだから。
◇◆◇◆
目星の店を何点か回ってみたけど、いちばん高く買い取ってくれる所はここかな…。
ドアを開けると、チリンチリン とすずの音が聞こえる。
店に入り、前に目を向けると店主と目が合い、
「いらっしゃい」
そう、ぶっきらぼうに挨拶される。
「宝石と服を買い取ってほしいのだけれど…」
「…品物は?」
「こちらに」
そう言い、収納魔法で持ってきた宝石とドレスを侍女に出してもらった。
「ちょっと待ってな」
そう言い、店主は品物を持って奥に行った。