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それから数日後、私はお城を抜け出していた。
抜け出した、と言っても確認が終わればすぐ帰るつもりではいる。
侍女達に「考え事をするからしばらく1人にしてほしい」と伝えこっそり抜け出してきた。
バレないうちに早く帰らないと大変なことになるかもしれない…。
そんな危険を犯してまでしたい確認とは、リリーがどれだけ強いか、だ。
いくらチート級のラスボスと言ってもどんな魔法が使えるか詳しくは分からない。
なので私が思いつく限りの魔法は試してみようと思う。
まずは移動系の魔法を試し、次に攻撃魔法を試そうと思っている。
移動系って言ったらあの言葉だよね…。
魔法を使えることにワクワクしならがらその言葉を発した。
『テレポーテーション』
シーン…。
あれ、何も起きない…?もしかしてリリーは攻撃特化型で移動系の魔法は使えないの?
うーん、もしかして想像力が足りてないのかな?
よく、魔法は想像力が大事できちんと思い浮かべないと魔法が発動しないって言うもんね。
次はゲームにもよく出てきた、レベルをあげられる森を思い浮かべる。
詳しい場所は分からないけど、森だし多分行けるよね。
よし、今度こそ…!
『テレポーテーション!』
ふっ、と一瞬暗くなり気がつくと周りに沢山の木が生い茂っていた。
やった!成功だ…!
初の魔法成功に嬉しく思う。
きょろきょろと当たりを見渡す。
ゲームと同じ森…な気がする。正直私には森の違いなんか分からない。
とりあえず魔獣がいればいいのだからなんでもいい。
さて、早く魔獣を探そう。
◇◆◇◆
しばらく歩いていると「グオオオオオオ!」と咆哮が聞こえた。
声が聞こえる方へ行ってみると―――居た。
身長はゆうに5mを超え、爪も牙も鋭く、見た目は…熊に似ている。歩く度振動が伝わり、額に汗がたらりと流れる。
で、でかい…これは見つかったらやばそう…。
そう思い、草陰に隠れ慎重に様子を伺った。
魔獣がこちらを見ていないすきに…
―――今だ!
『火 球!』
そう唱えると火の球が魔獣に当たった。
やった!と思った瞬間―――魔獣はその場に倒れた。
え、一撃…?
流石に一撃で倒れるとは思っていなかったのでなんだか拍子抜けしてしまった。
さすがラスボス…と思うと同時に、そんな事ある?リリー強すぎない?とも思った。