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ここは獣人が収める国、シュバルツ王国。
獣人とは人間より高い身体能力を持ち、魔法適正も高い優れた種族と言われている。
私はその国の王太子の番だったみたいで、それは、もう、熱烈にアピールされた。
最初はどうして私が?と思ったのでお断りしていたが、
結局絆されて受け入れてしまった。
侯爵令嬢だったこともあり、話しはトントン拍子に進み晴れて王太子の婚約者、となるはずだった―――。
前世の記憶を思い出すまでは。
私は生前、日本に住んでおり交通事故にあい亡くなった…はず。
亡くなった時のことはあまり覚えてないけど、ここは生前好きだった乙女ゲーム「グリモワールの花束」の世界。
何周もプレイしたから覚えている。
その乙女ゲームはバトル要素もあり、攻略対象との絆が深まるほど主人公も愛の力とやらで強くなる仕組みだ。
攻略対象は主に3人で、その内の1人「カイン・シュバルツ」とはこの国の王太子。
つまり私の婚約者だ。
◇◆◇◆
ある日森に迷った主人公は魔獣に襲われ、そこへ偶然魔獣討伐に来ていたカインに助けられる。
相手を萎縮させまいと王国騎士と身分を偽り主人公と接するカイン。
主人公と接しているうちに、惹かれている事に気づく。
そうして2人は仲が深まり、主人公の秘めたる力が発覚し主人公は王室に招待される。
そこで出会う攻略対象達。誰を選ぶかは選択肢次第で決まる―――。
大まかなストーリーはこんな感じだった。
選んだ攻略対象により、エンディングが大きく変わってくる。
例えばカインルートだと悪役令嬢の「リリー・ウェルネスト」つまり、私がラスボスだ。
チート級のラスボスであり、婚約者を取られたリリーが怒りで魔力暴走をおこし、それを鎮めるため主人公達が立ち向かっていく。
カインの好感度を最大まで上げておくことは大前提で、その他色々やらなきゃいけないイベントが多々あったりそれはもう大変だった。
リリーを倒した後は主人公に数々な嫌がらせをしていたこともあり、リリーは牢獄行きとなった。
悪役令嬢などと言われているが、実際この立場になってみるとカインの方が酷い人だと思う。
だってリリーのことを番だ!と言い、婚約したはずなのにぽっと出の主人公に心を奪われリリーを捨てるようなやつだからだ。
公式いわく、リリーが番なのはカインの「勘違い」らしい。
本当の番は主人公の方だったみたいだ。
なんだそれは、と言いたくなるが公式が言うからどうしようもない。