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36話 国選冒険者、初めまして

「モーギュウ?」

「うん、今回のクエストはそいつと取り巻きの討伐だね」

「あー名前のまんまだと思っていいか?」

「うん牛型の魔物だよ。『麒麟の角』と共同クエストした時と状況が似てて、現地の冒険者だけじゃクエスト攻略ができなかったみたいで更にお金を出して冒険者を募ったみたい」

「ソニアさんが持ってくるクエストそういうの多いなあ」


 確かに、とガーベラは頷いてから補足を入れた。


「もしかしたら協会から直接クエストを貰ってるのかもね。書類じゃなくて」

「そういうのもできるんだ」

「ソニアさんS級だしギルドマスターだから情報網はとんでもないんだと思うよ」


 ツカサははぁ〜と嬉しさを滲ませた、深い肯定のようなため息をつく。


「それじゃ気合い入れてこうか!」

「うん!」


 ♢

 

「必要ないわ。帰りなさい」


 ショートの赤い髪。服は軽装で動きやすさを重視したような、けれどどこか高貴さを感じる佇まいの女性が、村に入る直前の2人の前に立ち塞がった。

 

「いや俺たち正式にクエストを受けて……」

「それが不要だと言っているの」

『え〜……』


 2人は女性のいきなりの言葉に戸惑いを隠せない。


「えーっと……話を整理したいんですけど……」

「貴方1人なの?」

「……私は……」


 少女が答えようとした直後。

 

「あ! 着いたんですね! 冒険者の皆様! 私が責任者になります!」

「!」


 男が手を振って3人の元に近づいた。

 

「こんにちは!」

「私たち依頼を受けてきたんですけど」

「ああ、ありがとうございます。お待ちしていました! これでビオラベルさんの負担が軽減されますね……!」

「……アルボさん」

「同じ冒険者様同士での情報共有の方がよろしいかと思いますが……いかがですか?」

「いえ、アルボさんの方から説明をお願いします」

「分かりました! それでは。私はアルボと申します。今回のクエスト依頼はモーギュウとその子分たちの討伐です」


 若い男が説明を始める。


「初めに隣の村が襲撃されて、そこには冒険者の方がすぐに駆けつけてくださったんですが……命を落とされました」


 一瞬の間の後、更にアルボが続ける。


「この村は『ズッカ』と言うんですが、隣の村が襲撃され冒険者さんが亡くなられた後に、急いでお金をかき集めて救援を依頼して来て頂いたのがビオラベルさんなんです。そして何度も撃退してくださいました」

「なるほど……」

「私から出せる情報は以上になります……モンスターの情報など細かい部分はビオラベルさんにお任せしたいのですが」


 2人が頷く。


「何か聞きたいこと、必要なものがあればすぐに準備いたしますのでいつでも連絡してください! あ、宿はビオラベル様と同じ建物で構いませんし、横の空き家でも構いませんから!」


 そう言って男はすぐに去った。


「……それじゃあ後は……」

「……」


 ふぅ、と重苦しそうなため息のあと。少女が自己紹介を始めた。


「私はセシーリア・ビオラベル。B級よ」

「ビオラベル……」


 ツカサは簡潔に自己紹介を終えた少女に質問を重ねた。


「? ギルドの名前は?」

「ないわ。国選だもの」

「! おお、噂の…!」

「?」

「あ、気にしないで。ツカサは国選を知識としてしか知らなくて…」

「……」


 少し沈黙した後に、「そう」と言ってセシーリアが目を伏せる。

 

「改めて、私はガーベラ。B級です! よろしくお願いします!」

「ええ、よろしく」

「俺はツカサ! こっちの子と同じ『阿吽の花』に所属してます! ランクはD級!」 

「……はぁ!?」


 セシーリアが驚きの表情へと変化する。

 そして、喜怒哀楽の中で言うと怒の感情。それをツカサに向けた。


「貴方たちねぇ、このクエストの難度を知ってるの!? B級クエストなのよ!?そっちの子はともかく、貴方は 今すぐ帰りなさい!」


 D級と聞くなりグイグイと、ツカサをガーベラに押し付ける。


「ちょ……ちょ、ちょい…! 待って! 待ってビオラベルさん!」

「は・や・く!」

「ちょいストップ押しすぎ押しすぎ!」

「どわっおごっ……!」


 少し頬を赤らめながらも、セシーリアに抵抗するツカサ。


「──!?」


 セシーリアは自分が押し返されたことに驚き、一瞬硬直した。

 

「はぁ……はぁ……村に来たときも思ったけど、セシーリアさん、カンナさんくらい気が強いな! D級って言ってもそこそこやれるんですよ!? た、多分!」

「なんでその啖呵の切りかたで自信なさげなの……」


 イマイチ自信のないツカサの言葉にガーベラが突っ込んだ。


「……嘘よ」

「……んん?」


 プルプルと腕を振るわせているセシーリアにツカサが首を横に傾けた。


「私がD級に……押し負けるなんて……!」

「……いや、し、C級はあるもん…まだ、認定されてないけど……実力はC級くらいあるし」


 微妙な面構えのツカサの横から、ガーベラが真面目に補足をする。


「ここ最近ウチのギルドはバタバタしてて昇格の話ができてないだけで、ツカサは既にB級相当の実力はあります。ですからセシーリアさんの足を引っ張ることもないと思います」

「……D級でB級相当……!? さ、詐欺もいいとこじゃないの…!!」

「詐欺て……」

「何がそんなにショックなんですか?」

「……ツカサくん。貴方D級……なのよね」

「? はい……」

「……冒険者になって、どれくらいかしら……?」


 恐る恐るツカサに問いかける。

 ツカサは一瞬視線を右上にした後。


「3ヶ月とちょっとです」

「ぐほぁ!!」

「セシーリアさん!?」

(あ、そういうの気にするタイプの冒険者さんか……セシーリアさん)


 地面に倒れ込むセシーリア。それを見て慌ててツカサが駆け寄る。そしてその傍でガーベラがセシーリアの性格を早くも察していた。


「大丈夫ですか!?」

「……大丈夫よ、ごめんなさい、みっともないところを見せたわね」

「あ、それはさっきからちょいちょい見てるんで大丈夫です」

「──」

 

 白目になるセシーリアを2人で見つめる。


「……ふぅ、落ち着きましょう。このままじゃ良くないわ」

「いや俺たちはずっと平静なんですけど」

「ツカサ。シー……もうダメだよ。殺されちゃう」


 こめかみに血管が浮かび上がりながらも、セシーリアが笑みを浮かべていた。

 これはあと少しでも超えたら殺される気がする、と気が気でないガーベラはツカサをやんわりと止めるのであった。


「……実力は分かったわ。他の魔法はともかく魔力で強化した力は確かにB級並みの力があるみたいだし、2人ともクエストに対応できる力はあるみたいね」

「あの、1つ聞きたいんですけど、なんでさっき俺たちを追い返したんですか? 冒険者階級を聞く前から拒んでましたよね」

「……」


 露骨に苦そうな顔をするセシーリア。

 だがそれは決して敵意ではなく、己のうちに向けたものである、そのようにツカサは感じた。


「……あー…あの、理由はやっぱ大丈夫です。でも、俺たちも手伝えることがあれば手伝いたいし、協力したいです」

「私たちならクエスト攻略の力になれるかもしれないですよ?」

「……できれば──」


 セシーリアが立ち上がり言葉を続けようとした時。

 

『逃げろー!』


 大声を捉えた瞬間。

 

「モーギュウね!?」

「多分!」


 2人が走り出す。だが。


『早ッ!?』

「先に応戦するわ! 着いたら援護を!」


 セシーリアはそれよりも早く先駆けていた。

 

「すごいな、機動力高……!」

「さすがソロ冒険者ね……!」

 

 ♢


「下がれ下がれ!」

「冒険者さんが来てくれる!」


 群衆を掻き分け、セシーリアが魔物へと急接近する。


「ハッ!!」

 

 足に風の刃を纏い振るう。だがモーギュウは素早く後退することで避けた。


 そして、そのまま突進。


 セシーリアの剣とモーギュウの角がぶつかり合う。


「ぐっ……!」


(前よりキレが増してる……!)


 相殺。ではなく、セシーリアのみが擦り傷を負った。

 

「……間違えじゃなかった、貴方は経験を得て動きを変えているのね」


 再び武器を構え、モーギュウを見据える。


「やはり……貴方は私が責任持って対処しなきゃならないようね」

 

 

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