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32話 会話、そして刺客

「行くよ皆んな」

「押忍!」

「うん!」

「はい!」


 ツカサ、リサ、ガーベラ、ソニアが駆けていく。


 ♢


「報告聞いてきたよ、どうやら魔物が出たみたい。でも喋れる個体じゃないって」

「どうするんだ?」

「私たちで対応することになった。『麒麟の角』の皆んなはまだ待機で、他のが出た時にこっちの手があいてなかったらお願いするね。それまでサントリナのこともお願い。一応2人こっちからもつけておくけど、一応」

「了解した。そっちは任せるぞ」


 ♢


「あれだね」


 報告を受けた場所に着くと、聞いた情報通りの魔物がいた。


「……んじゃあ3人でやってみて、何かあったら助けるよ」

『了解!』

 

(…本当は私の存在もない方が成長に繋がるんだろうけど…)


 後ろ盾があると、安心感が勝る。

 それはわかっているが、そこはそれ。ソニアは余計な思考を振り払い、3人に任せた。


「足狙うわ」

「守りは私がやるよ」

「んじゃ俺は……アドリブだな!」


 水の弾丸を熊のような魔物の足に放つ。

 速度のある弾は足を撃ち抜き、体勢を崩した。


 そこに、ツカサの一撃。


「ガァア!!」


 だが、当然相手も黙ってはいないわけで。

 ツカサが拳を構えた直後に、魔物が渾身の一撃を振りかざす。


「ほいっ」


 フェイント。渾身の一撃は地面に叩き落ちる。 

 その隙だらけの魔物に、地の壁がぶつかる。


「今だよツカサ!」


 再度、攻撃に転じるツカサ。

 右手に魔力を集中させ、一撃。


 相手から攻撃を受けることなく、魔物を撃墜した。


「お見事」


 パチパチと拍手をするソニア。


「他に魔物はいなさそうだし一旦戻ろうか」

「そうね」

「この魔物って何級?」

「BかCじゃないかな…」

「ふーん」


 そんな会話をしながら、皆で拠点へと戻る。


 ♢


「そっちも何もなかったぁ〜?」

「ああ、特には」

「じゃあただの野良だったのか…」

「そうなるな」

「…とすると、捜索中のドミニカ頼りかな」


 ソニアの言葉にカンナが頷く。


 そして──9時間後。


「手がかり一切なし」

「マジか〜」


 魔物の発見情報が出る都度、ソニアたち、カンナたちが出撃し討伐していたが、そのどれもがただの野良だった。


 ドミニカの隊は捜索に専念していたが、それでも成果は見られなかった。


「多分逃げたっぽいけど?」

「だよね…」

「そうだな」


 周囲一帯、探し回っても知能を持った魔物とは1回も遭遇しなかった。


「私たちが揃ってるからかな?」

「……分かんない。けど、あいつは実験の為に私とサシでやり合うくらいなんだから、自分が出っ張らないでいい実験ならやめるとは思えないんだよね」

「つまり?」

「あいつは混ざりもの(キメラ)の実験をしてるって言ってたし、やっぱりそう遠くないどこかにいるとは思うよ」

「……うーん」


 イマイチ手応えのない成果に、ドミニカが苦い顔をする。


「明日は場所を少し変えて探してみよっか。2人もそれでいい?」


 カンナとソニア、それぞれが頷く。


 ♢


「という訳で、今日の捜索はここで終了だよ」

「そっかー」

「……わかったわ」


 ソニアも報告を終える。


「そんじゃ明日も早いから解散!」


 報告を受け各々、個人の時間を取る。

 ツカサは拠点の外に出ていく影を見て、その背中を追った。


「あれ? ドミニカちゃん?」

「ん、ツカサか! どうかしたの?」

「いや俺は単に外に行く影が見えたから着いてきたんだけど…」

「ああ、心配をかけたね。周りの気配を探っていただけさ、何か見落としてないかってね。一緒に来るかい? 私の部下が調査した後だ、どうせ何もいないけど」

「んじゃ、お言葉に甘えて!」


 2人は道中歩きながら、対話する。


「最近冒険者になったんだって? どう? 楽しい?」

「まぁそうだな! 楽しいことばかりじゃないけど、やっぱり人を助けられるのは嬉しいよ」

「うんうん。穏やかでいいギルドだったしね」

「ドミニカちゃんは、楽しいの?」

「ああ楽しいよ」

「ギルドマスターでしかも5大ギルドって呼ばれてるんだもんな…そんな人が今横で歩いてるって、もしかしてすごいことかも…?」

「ふふっ」


 ツカサの言葉で笑いながら、ドミニカは語り出した。


「ギルドマスターと言っても、ソニアとは似ても似つかないよ」

「ふ〜ん?」

「元々私が冒険者になったのは、知らないものを知れる機会が一番多い職業だと思ったからなんだよね」


 その言葉に対し、質問する。


「それなら一番適してるのは研究者さんとかじゃなくて?」 

「私自身は未知のモノに対して結果が知れれば良いタイプだから、他の研究者に成果を渡して答えを知れればそれでいいんだ。だから冒険者の方が都合がいいかな」

「ああ、なるほど…」

「私が知りたいモノは私自身で探して、答えは他の人に教えてもらう。それを効率よくできるのは冒険者だった。だからまぁ、天職だった訳だね」


 そう発言しているドミニカの姿。

 ツカサからみたドミニカは、まさに冒険者という言葉を体現しているかのように見えた。


「私がそうやって冒険者人生を突っ走ってたら、いつの間にか共感してくれる人が増えて、気づいたら他のメンバーを従えるギルドマスターになってた」

「すご…」

「まぁ、昔と違って変わった考えもあるけど、それでもやっぱり未知のものや不可思議なものが好きなのは変わらないね」

「なんか、良いなあそういうの」

「ありがと」


 真っ直ぐに自分のやりたい事をひたむきに続けた末に仲間ができた。

 ドミニカの生き方は、とても気持ちのいい物だった。


「だから、今回の件に関して、不謹慎ながら私は少しワクワクしていたんだ。”未確認”の生物の未知の力。もちろんこれ以上人的被害を出さないためにっていう面もあるけど、私自身お目にかかってみたいという好奇心があったことは否定できないね」

「でも危険だろ? A級の冒険者でも勝てなかったんだから」

「危険ゆえの未知であるならば、なおさら私は超えたいと思うね」


 やはり、根っからの冒険者気質なのだろう、とツカサは感じた。


「ホント、すごいなぁ」

「そういう君も、ちゃっかりこの場に居合わせてるじゃないか」

「え?」

「まだ見習いの冒険者でこんな危険なクエスト受けてることだって、すごいことだと思うよ?」


 ツカサは一瞬考え、すぐに笑って返す。


「…このクエストを受けたのは…クエストが危険かどうかってことよりも、俺がやりたかったことだから」

「じゃあやっぱり君も冒険者さ」


 そうして、2人して笑い合った。


「さて……楽しい会話をしてる間にもうこんなとこまで来てしまったね」


 拠点を出て、暗い森の中に入った2人だったが、その森の中すらも突き抜けて川の流れる山の(ふもと)まできてしまった。


「明日はあっちの山を越えるつもりだったから、まあ一目見れただけでもいっかそれじゃ……」


 ツカサが辺りを見回してる最中。

 ドミニカがいち早く、異変に気づく。


「──下がって」

「おわっ!?」

「私の斜め後ろ4歩分の位置保ってね」


 ツカサの服を掴み、後ろに放る。


 そして、刺客が現れる。


「──死ね」

「やだね」


 地面から棘が伸びる。

 だが、ドミニカはすでに敵の目の前にいた。


「何ッ!?」

「遅いよ」


 蹴り。魔物はすぐに受け身をとり体勢を整えた。


「……やるな」

「君もね」


 お互い、戦闘態勢に入る。

 

 そしてドミニカは確信した。


 ──相手がS級格であると。



 

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