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30話 不穏の広がり

「『韋駄天の鉾』のギルドマスター、ドミニカ・ブルーネット。気軽にドミニカちゃん、と呼んでくれていいよ」

「韋駄天の鉾って5大ギルドの……!」

「え!? そうなのか!?」

「お、知ってくれてるんだね。嬉しいよ」


 ドミニカが笑顔で、ガーベラの頭を撫でた。

 

「私も改めて、ソニア・レゲルカディア。ソニアでいいよ」

「私はカンナ・オルテンシア。こいつと共同でクエストを追っている。カンナで構わん」

「了解、それじゃ……」


 くるり。と身を回転させ、ドミニカはリサを見つめた。


「なんなんだって顔してるしいきなり本題に入るね。私が今日ここに来たのは、スノースマイルという男に対しての情報を提供して貰うためだ」

「……ああ、つまり貴方のギルドが行くのね?」


 リサの問いかけに、ドミニカが不必要なほど大きく首を縦に振るった。

 

「その情報の報酬として、君たちには私たちが冒険で得たスノースマイルに関する情報を渡すこと、そして私のギルドの近くで安全な場を設けること。確認するけど、本当にこれでいいのかい?」

「──」


 リサが固まる。


「ああ、それで大丈夫だ」

「…ソニア」


 リサがソニアを見る。


「…先日も言ったけど、私はなるべくリスクを減らしたい。慎重に動きたいんだ」


 ソニアが胸の内を明かし始めた。


「それは当然君らの安全を優先したいからだけど……リサがそれを望まないことくらい私でも分かる。そしてツカサとガーベラも構わないと言ってくれた」 


 そしてリサの頭を優しく撫でる。

 

「だから、一緒に行こう。これなら私たちが道化師の元に乗り込まないまでも、情報は真っ先に得ることができる。それに……あいつが使役する魔物くらいなら、私たちでやれる。だから……やろう」

「ソニア……!」

「詳細はまだ聞いていないけど、ソニアから聞いた話じゃ相当やばい相手だろ? 私たちが一気に攻略完了、なんてこともないはずだよ。これなら協会よりも先に、誰よりも先に私たちの情勢を君たちが知ることができるだろう」

 

 リサが、ソニアに頭を下げた。


「本当にありがとう」

「……そんなことしないでよ、仲間じゃんか」

「……うん…!」


 そのやりとりを見てドミニカが大きく頭を振っている最中、カンナが割って入る。


「結論として、スノースマイルはお前たち『韋駄天の鉾』に任せ、その戦力をなるべく私たちが削る。勿論できる範囲で。これでいいのか?」

「ああ勿論それでいいとも。ただ、削りに期待し過ぎるなとだけは先に言っておこうか」

「ん?」

「なんで?」

「詳細を聞いてから話が変わるかも知れないが……相手の手の内がハッキリ知れない以上貴重な戦力を突っ込まない、というか突っ込みたくない。そしてA級冒険者でもなす術なくやられるような奴に仕掛けられる人間自体そう多くない」


 カンナとソニアが頷く。


「必然的に初めのうちは消極的な動きにならざるを得ない。他の国選がどう動くのかは知らないが……うちから得られる情報はそう多くないだろう。だから期待し過ぎるな、という話だ」

「それでも十分過ぎるほどだよ」

「私も異論ありません」


 ソニアとリサの言葉で最後の決定が下される。


「では、私は君たち2人のギルドと組もう。よろしく頼むね?」

「ああ」

「よろしくね」

「そっちの皆んなも」


 各々のギルドマスターに首肯した後、リサたちにも顔を向けた。


「あ、はい!」

「本当にありがとうございました」

「いいっていいって」


 リサとガーベラの頭をポンポンと叩く。そして。


「君も、よろしくな」

「こちらこそ、ありがとうございます。貴方のおかげで心置きなくリサを手助けできる。感謝しかないです」

「堅苦しいな〜皆んな。もっと気軽な感じでいいって」

「──それじゃ、よろしくドミニカちゃん!」

「──」


 全員が一度固まる。

 そして、ドミニカが笑った。

 

「うん!」

 

 ♢


 (くら)き森の中、強者たちが集う。

 

「これで、大方の戦力は把握しました」

「ようやくか。私に任せればもっと早く動けたものを」

「そう急かさないでくださいませんか? 私も1人の人間。同時に動けないのは当然です」

「ふん。これだから人間は」

「魔物なんですから余裕を持った対応をお願いいたしますね。人間と違って、ね」

「……ふん」

「ふふ」


 人型の魔物と道化師が不敵に笑う。


「喧嘩はその辺でもういいでしょ。揃ったんだから早く話を進めてよ」

「そうですね」

「手筈は整ったのだろう?」

「ええ、勿論。手始めに」


 道化の男の周りに数体の魔物たち。

 

「──冒険者を、潰しましょう」

 

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