26話 冠絶した力を持つ者たち
「やばいやばい!」
「こっちも来てる!」
村の端。サイクロプスから逃げて来た者たちが、反対から来た魔物たちに追われていた。
「全員殺してやるよ〜」
「逃げてもいいぞ。遅い奴から1人ずつ楽しんでやる」
2匹の魔物たちは笑いながら、少しずつ村人たちの生存範囲を狭めていく。
そこに。
「下がれ」
「! ああ、ありがとう!」
「冒険者さんが来てくれたんだ!」
村民たちとは真逆の方向へと歩む者が1人。
「生意気だな?」
「折角ビビらせてジワジワ苦しんで死なせようと思ってたのにな」
ニワトリのような魔物と、二足歩行型のサイのような魔物二匹。
カンナは、一切動じることなく佇んでいた。
「お? どうした?」
「俺らにチビって喋れなくなったんだろ。ギャハハ」
「……強いな貴様ら」
確かな観察眼を持つその鋭い眼で2匹の魔物を見てから、冒険者は静かに呟いた。
「そうだよ俺ら強いんだよ」
「土下座するか? 今からでも」
ズンズン、と2体の魔物は歩みを進め、とうとうカンナの間合いに入った。
「ほら、謝れって裸で泣いて謝るなら許すかもよ〜?」
「──バカが」
一閃。剣を薙ぐ。
「あ、え……?」
「既に相手の間合いに入っていてその警戒度とはな。前言撤回する。貴様らは力を持て余しているだけのカスだ」
力や知能、そして魔力量だけなら間違いなくA級格の魔物。
だが、サイ型の魔物はカンナの放った一撃で綺麗に肉体が裂けた。
「恐らく他の冒険者たちを返り討ちにして自信をつけたのだろうが」
魔物故の驕り高ぶりが、容易に肉体を死へと運んだのだ。
「相手の実力も分からんなら死ね」
「ぎっ!」
「!」
ニワトリ型の魔物の爪が伸び、カンナに襲いかかる。
だが、その攻撃は彼女に容易く回避される。
「おい」
そしてカンナは迅速に相手の懐に入り込み、強力な蹴りを喰らわす。
「ぎゃっ!!」
「お前はまだ殺さない。聞きたいことがあるからな」
足を切り落とし、羽を引きちぎる。
あまりにも一方的な戦闘の末、カンナが問う。
「お前の仲間の数とそれぞれの力を全部教えろ」
「ひぃぃ……!」
「怖がらなくていい。話してるうちは何もしない」
「う、ぁ、ぁ…!」
「あ、おい……!!」
腕で地面を這いずって逃げようとする魔物の背中を踏む。
「余計な行動を取る意味がないことぐらい分かるだろ。お前は私に与えられた2つの選択肢を選ぶしかないんだ。このたわけがァ!!」
♢
「ふぅ……」
ツカサは地面に座り込み、怪我の容体をリサに診てもらっていた。
「大丈夫そうね、息苦しさもないんでしょ?」
「ああ。痛いけどまあそれは…当たり前だしな」
「それにしても、あいつの攻撃を受けてそれで済んでるのがすごいね……」
「壁があったのがデカかったな。あれがなかったら今頃、骨はバキバキ皮膚は青紫に、心臓が止まってはい死亡。なんてこともあったかもしれない」
「変に具体的なのやめなさいよ……」
「はは……」
リサのツッコミにツカサが笑う。
「ツカサ」
「あ、ブライアさん! あの時ぶりですね! 話は聞いてましたけど、こうして一緒にリベンジできて嬉しいです」
「ああ。俺も嬉しいぞ。あの筋肉に勝てたのは、お前たちがいてくれたおかげだ」
「私からもお礼をさせて、ありがと皆んな」
マタリーとブライアがお辞儀する。
「泣いて転げ回りたいほどスカッとした気分ではあるけど、今は後回しだ。な、リサ」
「そうね、2人はカンナさんの方に行って。こっちは私たちで大丈夫」
「承知した。何かあったらすぐに撤退するんだぞ!」
ブライアとマタリー2人の姿が消えるまで、3人は見送った。
「ツカサ、休んでていいよ私とリサで見ておくから」
「いややらせてほしい。そもそも俺から言い出したことなんだしさ」
「そう?」
勢いよく立ち上がった後パンと顔を叩くツカサ。
「一応1人は避難案内の方に行った方がいいよな? 多分マタリーさんとブライアさんたちが担当してくれるとは思うけど……」
「そうね、なら私が行くわ。何かあったらすぐに戻ってきて」
ガーベラとツカサがサムズアップで意思を示す。
「また後でね」
♢
アマリアの村から、少し離れた侘しい洞窟。
そのだだっ広い空間に、コツコツと響く高い音。
靴の音が反響する。
「──君が元凶?」
開口一番、ソニアは尋ねた。
「ようやく会えましたね」
待ち侘びた、そういうニュアンスで語りかける道化師に、一瞬思考した。
(? ……知り合い…な訳ないよな……ギルドマスターが狙いって意味か?)
この一瞬、その場に現存する者たったの2人のみ。
「悪いけど、人間だとしても手加減はしないからね」
「かまいませんとも」
だが、今目の前にいる2人こそは、互いに一騎当千の実力者。
そして、それをお互いにひしひしと感じ取っている。
故に、手加減することは不可能。
S級格の対決が、今まさに始まろうとしていた。
「『造魂開門──不八嬢』」
「『魔層界巡──名目上の群像』」
次回めちゃくちゃ文量が多いので明日19日の21時すぎに投稿いたします。




