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19話 自分の未熟と他人の踏襲

「……ふぅ」


 村の1つの建物を借りて、一夜を過ごす。

 そこでツカサは1人反省会をしていた。


「焦ってたな…」


 今回の反省を簡単にまとめるならそれだ。


 畑の被害を心配する声。ツカサはそれを感じ、自分の未熟さに焦りを覚え、プレッシャーを感じていた。

 

 そして内情を把握してないがゆえに事件の場に赴くのが遅れ、村民をスムーズに避難させられなかったから様子を見ることが出来ず接近するしかなかった。

 

 結果モンスターの攻撃に弾かれてその隙に逃げられた。


「次はこんなんじゃ…ダメだ」


 もっとキッチリしないと、ここにいる冒険者は自分だけなんだ。


 コンコン。と小屋にノック音が鳴る。

 ツカサがドアを開けると。

 

「どうしました?」

「お兄ちゃん、大丈夫?」


 開けたドアの先にいたのは、小さな少年だった。

 

「……うん?」

 

 ♢


「つまり、しばらく出てこない俺が心配だったと…」

「う、うん……お兄ちゃん、あいつの爪で引っかかれてたし…」

「それについては心配いらない……ほら」


 グッ、と一瞬少年は硬直する。そして謝罪した。


「ごめん…」

「心配してくれたんだな」

「うん……助けてくれたあと、顔を見かけなかったから…何かあったんじゃないかって思ったんだ…ごめん」

「──!」


 ツカサはクエストに挑むことしか気にかけていなかった。

 村の人たちがどう思っているか、今何を考えているかまで思考が及んでいなかった。

 シビアに、頼もしく──そう()()()()()振舞ったつもりだった。

 そこに相手の気持ちは入っていない。

 こちらの余裕は一切見せていない。

 

 そこでようやくツカサは気づく。

 

 必ずしも、ブライアのような頼もしさ、リサのようなシビアさを踏襲する必要はないのだ。

 ただ、自分には自分なりのやり方があって、彼らはそれをやりきってるだけだ。


「君…名前は?」

「ちゃ、チャーリー」

「チャーリー、ありがと。俺大人になろうなろうって焦りすぎてたみたいだ」

「そ、そう? よくわかんないけど、元気ならよかった! 俺の方こそ、父さんたちを助けてくれてありがとう!」

「ああ、チャーリーのおかげでこれ以上ないくらい元気になった!」


 それでいい、強く見せる必要なんてない。

 自分にできることをやるんだ。


「挨拶しに行きたい。家まで案内してくれるか? チャーリー」

「うん!!」


 それを、遠くの高場から見ていた女性が1人、呟いた。


「行動しましたね」

「うんうん、ちゃんと自分で気づけたじゃんか。これなら問題なさそうだね」


 そう言うと、人形使いの女性は姿を消した。


 ♢

 

「だからお前ももっと鍛えとけって言ったんだ」

「あーあー分かってるよ。私のせい私のせい。私が遅かったせいで冒険者さんの到着が遅れたんだよ」


 夫婦2人の口論。そこに初心者冒険者が割って入った。 


「ちょっといいですか」

「! あ、冒険者さん!」

「おいチャーリー何無礼なことしてる! すっすいません!」


 男の方が息子に対して怒ったように言うが、肩車でチャーリーを乗せるツカサが笑う。


「いやいや、むしろこの子に助けられました。それよりも、先ほどの襲撃で怪我はありませんでしたか?」

「あっ、ああ大丈夫ですよ、逆にこちらこそ申し訳ない、もう少し我々がしっかりしていたら……嫁が足を…」

「それは違います」


 男が体を曲げようとすると、ツカサが言い出した。


「そちらの女性は走った後とても息をついていました。魔物が近くにいるところまで。危険なのを承知で全速力で俺を目的地まで導いてくれてたんです」

 

 ツカサはその時の状況を鮮明に覚えていた。だからこそハッキリと言えるし、その言葉は2人に響く。


「むしろ失態で言うなら俺の方です。クエストを達成させようと前のめりになって村の状況把握より先に道具準備を優先させた」


 見様見真似で動いていたため気づくのが遅かったが、状況把握と地形の把握まで含めてブライアはおそらく初日にしていた筈だ。

 ただ、皮を真似するために、大事なことを見落としていた。

 ブライアは、ツカサたちと合流するより前に、ある程度交流を深めていたはずなのだ。


 討伐するために必要なのは相手の情報だけではない。そんなことにすら今更気付いた。

 少年に気づかせてもらった。

 自分のやり方を、ひとつずつ積み重ねていく必要があるのだと。


 自分が元気であっても、実際に見せなければ相手は分からない。それを教えてくれたからこそ大事なことに気づくことができた。


「魔物討伐……クエスト達成を意識するあまり、もっと大事なものを見落としていました」


 だが、もう気づけたのだ。遅いということは決してなく。

 

「俺は弱くて経験も浅い。だから今回みたいなミスもしてしまう。頼りない人間だってことは、誰よりも自覚しています」


 今からなら、まだクエストを達成することは可能だ。


「だから、力を借してほしいです」

「冒険者の君に頼るしかないってのに、頼りにならないなんて、そんなことはないよ。君に頼めて安心だよ」

「そうそう。次現れたら、また私が全力で案内するよ!」

「わ、悪かったさっきは…」

「私も不貞腐れて悪かったね」


 2人は笑っている。それに釣られてツカサとチャーリーも笑っていた。


 こうして、ツカサは積極的に村の人たちと関わり、村を知り、地を知り、敵を知った。


 ♢


 そして。


「ツカサさん、あいつが逃げたのはこの方角だから、作戦通りここ一帯は俺ら腕自慢で見張っとくよ。」

「お願いします」

「罠も準備できましたもんね、これ、俺らが使っても大丈夫なんですよね?」

「はい、ポテンツァモールの退路を断つための罠なので、糸を引けるなら誰でも可能です」


 数人が筒状の道具を握りツカサに尋ねた。


「ただ、俺1人じゃできないことなので、皆さんの力をお借りすることになります」

「大丈夫大丈夫! それならなんとかなるぜ」

「ああそんなに近づかなくてもいいなら大丈夫だ! 攻撃されねえところまでなら余裕余裕!」

「アンタねえ! ツカサさんは直接戦うってのに何だいその発言はァ!」

「いだあ!」


 ギャハハ、と周りの人たちが笑う。

 

「ツカサさーん!! 来ました!! 西区のアダンの畑に接近してます!」

「! はい! 皆さん俺は先に行きます!」

「おう! すぐ近くだし逃げられる前には行けるぜ!」

「あっちにも罠持ってる奴らはいるしな!」


 言うなり、ツカサは討伐対象の元に近づく。


 モグラ型の魔物ポテンツァモールは、報告通り畑を荒らしていた。

 ツカサは、ポテンツァモールを村側に、自分は森側に位置するようにポジションを取った。


「よう、先日ぶりだな」

「…!」


 冒険者の姿に気づき、警戒態勢を取る。

 だが、ツカサは接近しない。あくまで様子見をしていた。


(今度こそ逃さん)


 ポテンツァモールを大きく迂回するようにツカサの背後に村民の1人が迫る。


「こ、ここから出てきてました!」

「了解です。同じルートで帰ってそのまま離れておいてください」

「はい!」

 

 出現した位置を見ていた男から報告を受け、万全を期した。


「お前は逃さないし、誰にも傷つけさせない」


 魔力強化した、その瞬間にポテンツァモールはツカサを危機対象とし、強靭な爪で襲いかかる。


 以前と同じ構図。だが、以前とは情報量が違う。

 爪を避け、ツカサは一撃入れる。


「ギャウ!」

「もう弾かないぞ。その爪の威力は知ってる」


 蹴り、蹴り、突き。

 直撃した三撃はポテンツァモールの肉体を激しく損耗させた。


「! 逃げる……!」

 

 唸り声を上げながら、平原の方へと走っていく。


「お願いします!!」


 ツカサが叫ぶと、村民たちがポテンツァモールに向けて、罠を放った。


 それは、糸を引くと同時に網が出る単純な構図の筒状の罠。

 

 網は上手くポテンツァモールを引っかける。


「いよっし!」

「しゃあ!」


 だが、まだ逃亡の危機は終わらない。ポテンツァモールはその鋭利な爪で網を切り裂き逃亡──。


「──遅い!」


 する時間など、なかった。

 罠はただの陽動、一瞬の硬直を担うための策に過ぎない。


 ツカサはすでにポテンツァモールの前に立っている。


「壁!」


 逃亡しようとしていたポテンツァモールと激突寸前のツカサ。だが、その魔物の眼前に一瞬だけ土の壁が現れ、勢いを残したまま魔物の体がぶつかり上空へと浮く。


「はぁ……はぁ……これで詰みだ!!」

 

 上空から地面に着く寸前。絶対に避けられない態勢へのかかと蹴り。


「……どうだ?」

 

 確認するまでもなく、魔物は地面に横たわっている。

 そう、ポテンツァモールを討伐することに成功したのだった。


「やった…!」


 瞬間、村の人たちから歓声が湧き上がった。

 


「ツカサさん、ありがとうございました。本当に…!」

「いえこちらこそ、今回のクエストで俺も大事なことが学べました、ありがとうございました」

「今日は好きなだけ食ってくれ〜! 肉もいっぱい用意してっから!」

「はい!」


 わいわいと賑やかな村。


「そういえば……ソニアさんどこだろう…?」


 まあどこかで見ていることだろう、と割り切ってツカサは村の人たちと一緒にご飯を食べたのだった。

 

 ♢


「おいおい冒険者いるじゃねえか。チャンスチャンス〜殺せるチャンス〜」


 狼のような容姿の魔物、ワルウルフと呼ばれる魔物が一匹、ツカサのいる村を見ている。

 

「できないよ、それ」

「……あ?」


 2人の女性、正確には1人は人形、が魔物の背後から声をかける。

 

「誰だお前…?」

「ソニア・レゲルカディア。ギルドマスターだよ。私も聞きたいことがあ──」


 言い切るより先に、ワルウルフの魔力の弾丸が2人を襲う。

 

「はっはっはー! 粉々だろ!? やっぱり俺って強……」

「まだ話の途中だから、続けていいかな?」


 だが、砂煙が晴れた先では、無傷の2人が立っていた。

 

「……は?」

「君の仲間、どこにいる?」


 

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