第9話 帰還途中の襲撃
女子高生として人生を送っていた、妹の彩華と姉の沙耶が突如として時空の歪みに飲み込まれてしまう。そして、そこで待ち構えていたのは…。
沙耶は、東端門駅へと戻って来たがのだが…。
突如として人に囲まれてしまい軽いパニックに陥ってしまう。
「ちょちょちょ…。人多い…え、どうしよう。」
普段から、人に慣れてない沙耶は思考回路がショートしてしまいどうしようかとしていたところに・・・
なんと妹の彩華が駆けつけてくる。
彩華は、人の中を縫って、沙耶に向かって一直線に走って来て、沙耶を救い出し人気のないところに連れていき、沙耶を抱きしめる。
「ねぇね、大丈夫?怖かったよね。もうこれで、平気よ。」
妹の彩華は、そう沙耶に言うと沙耶の後ろの壁を軽く押すと…
下へ続く階段が現れて、二人はその壁の中へ入っていくのであった。
階段を降りると、そこには…。
乗って来た地下鉄の横に出ることができて、沙耶は一安心することができてパニックも少しずつではあるものの、収まってきた。
呼吸を整えてから話し出す沙耶。
「ふぅ…。ありがとう、助かったよ彩華。一時期は、どうなるかと思ったけど…。これで、一安心できるわ。」
沙耶は、妹の彩華に礼を伝え、乗って来た地下鉄に乗り込む…。
そして、アストに連絡を入れる
「アストさん。もう少しで、出発できます。そちらに着き次第、詳しいことをご報告しますので、よろしくお願いいたします。」
沙耶は、そう連絡を入れると地下鉄に乗り込み出発準備を始める。
妹の彩華は、地下鉄が動けるようになるまで、周りや降りて来た階段付近を見回りして、沙耶の身の安全第一を優先して警戒をする。
それから、五分後地下鉄の出発準備ができ、妹の彩華が乗り込み地下鉄の扉を閉める。
そして、ゆっくりと地下鉄が動き出し東端門駅を後にするのであった・・・。
沙耶は、ふぅと胸を撫でおろし少しだけ気を緩める…。
だが、突然警報音が鳴りだして、地下鉄が急停車する。
二人は、いきなりの事に慌てふためくが、沙耶の持っているタブレット端末に情報が流れてくる。
『地下鉄駅構内で、突如として人が暴れだして線路内に立ち入り、全線で運転を見合わせております。』
二人が、その文面に驚きを隠せないでいたが、沙耶がすかさずアストへ連絡を入れる。
「アストさん。大変です。線路内に人が立ち入った影響で、地下鉄が止まってしまいました。少し遅れます。」
沙耶は、そう連絡を入れると、運転席のモニターのところへと行き、車両の位置情報を見てどうするかと考えていたまさにその時だった。
車両の後方から、ドーンという音が聞こえて来たかと思うと妹の彩華が、慌てた様子で運転席のところへと走ってくる。
「やばいよ、ねぇね。”ドーン”って音がしたから窓の外を見たら、人ならざるものが…。」
そう言っている妹の彩華の後方、五両目に人ならざる者と思しき姿が、見えて更に妹の彩華が怯えだすが…。
沙耶は、妹の彩華に運転席に座って運転室のカギを閉めておきな。と伝え、車両後方へ向かいだす。
沙耶は、車両後方へ向かう最中に妹の彩華にあることを伝える。
「彩華…。多分、もうこの地下鉄動かせられるけど、城に着くまで、絶対に運転席から出ちゃだめよ。」
沙耶は、そう無線で伝えると、人ならざる者の調査を行う。
その頃妹の彩華は、沙耶の言い伝えを守りながら、運転席に付いてる運転ボタンを押す…。
すると、地下鉄が再度動き始めてホッと一安心するが、沙耶のことが心配で頭がいっぱいになっていた。
沙耶は、人ならざる者の調査をするために五両目にやって来たのだが、そこには人?だったものが、うめき声を上げながら沙耶の方へ向かってくる。
だが、沙耶は冷静に物事を判断していた。
「成程ね。これが、さっき言っていた人か…。いや、人ならざる者か。もう地下鉄は動き出しているから、こいつを倒すかしないとやばそうね。」
沙耶が、そう呟いたのと同時に人ならざる者が沙耶に向かって襲い掛かろうとするが…。
「これ以上先には、行かせないわよ。あたしが、死なない限りはね…。」
そう捨て台詞を言って、沙耶は人ならざる者を殴ろうとするが…。
人ならざる者が沙耶の手を嚙もうとする仕草を見せたことによって、沙耶は危機を察知して、間を開ける。
「これは、不味いわ。こいつゾンビじゃん。なんてものを乗せてしまったんだ…。いや、そんなこと考えている暇はない。早くこいつを倒して、彩華のところに行かなきゃ。」
沙耶は、覚悟を決めてゾンビ相手に戦いを挑む。
「一体じゃないよね。」
沙耶が、呟いた瞬間車掌室の場所から、五体のゾンビが飛び出してくる。
それを見た沙耶はため息をつきながらも、戦おうとする。
「はぁ…。六体も相手にしなきゃいけないわけ?とりあえずさっさと、首はねちゃわなきゃ…。」
そう呟き沙耶は、妖刀村雨を引き抜くと…。
ゾンビに向かって特攻する。
「おりゃああああああ!!」
勢いよくゾンビの首をはねるのだが…。
何故かゾンビたちは、平然と動いていることに驚きを隠せない沙耶。
「噓でしょ…。こいつ等、動けるの?何?身体を何等分もしなきゃだめか…。でもな、この車両を汚すわけにはいかないけど…。仕方ない。微塵切りにしてあげるわよ。」
そう言うと、沙耶は勢いよく刀を振りまくって斬撃を生み出す。
すると、斬撃を浴びたゾンビからどんどんと、肉塊から肉片へとなっていくが…。
血しぶきが、窓や座席に飛び散り沙耶は思わず眉をひそめるが、攻撃の手を休めることはなくゾンビたちに斬撃を喰らわせ続ける。
「消え去れ!!!」
そう言った直後、最後まで残っていたゾンビが肉片となり、それ以降動くことはなかった。
それから、沙耶は妹の彩華の居る運転室へと戻り、万が一の為に備えてカギを閉めて運転室にこもるのであった。
「彩華、ごめんね。血生臭いでしょ、あたし。城着いたらシャワー浴びるから我慢して。」
沙耶は、戦闘で浴びた血が服についていることに、運転室に来てから気付き慌てて妹の彩華に謝るが…。
「ううん、気にしてないよ。お疲れ様、ねぇね。」
妹の彩華は、気にしてない様子であった。
そして、その後は何事も起こることはなく、無事に城へと辿り着けた。
城に着いた瞬間に、アストが飛んできて二人に話しかける。
「ご無事でありましたか、御二人さん…。えーと、随分五両目が汚れていますが、何かあったのですか?」
アストは、五両目が汚れていることに、気が付き沙耶に問いかけると、沙耶はありのままあったことを話始める。
「実はですね。あの急停車した後に、それこそ五両目にゾンビが襲来して、倒した跡なんですよ…。ごめんなさい。」
沙耶は、アストに誠心誠意謝るが…。
アストは、正直に話してくれた沙耶の誠意を見て察して、それ以上追及はしなかった。
それから、沙耶は急いでシャワー室へと駆け込み、妹の彩華はカムイ陛下にあった出来事を話すために執務室へ、アストは汚れてしまった車両の清掃と、修繕作業をするために地下鉄に向かうのであった。
三人が同時刻に、それぞれの事をして…そして、一時間の時が過ぎた頃、三人は王座の間に集合していた。
それはカムイ陛下に報告するために集まっていたのだが、三人とも打ち合わせをしたわけでもなく偶然にも同時刻に集まってしまい誰から話すという雰囲気になっていた。
そこへ、公務を終えたカムイ陛下がやって来て、三人を見るや否や???を頭に浮かべながら、話始める。
「ん?三人ともどうした?彩華は、先程話は聞いたが、沙耶とアストはどうしたんだ?」
カムイ陛下は、沙耶とアストにそう問いかけるが…沙耶とアストはお互いに目を見合わせて、どうします?状態に陥っていた。
沙耶と妹の彩華は、無事に東端門駅からゾンビの襲撃はあったものの、怪我ひとつなく城へと戻ってくることができたが…。
この一件を皮切りに、ノーゼンカムイ王国に対しての脅威が、数を増して行くのであった…。
日常から急転して、非日常へと落ちていくがふたりは無事に乗り切れることができるのか…。そして、もといた世界に帰ることができるのであろうか。