第6話 沙耶の帰還と妖刀村雨の謎
女子高生として人生を送っていた、妹の彩華と姉の沙耶が突如として時空の歪みに飲み込まれてしまう。そして、そこで待ち構えていたのは…。
沙耶は、覚悟を決めて国を護ると誓い、謎の生物からの脅威からノーゼンカムイ王国を護ったのだが…。
現場の後処理を軍隊長にお任せをして、沙耶はいち早くカムイ陛下に報告すべく城へ急いでいた。
「この国って・・・何故か地下鉄はあるのよね。四路線|あって城へ向かうにはどれに乗ればいいのだろうか…。」
沙耶はノーゼンカムイ王国の広大な地下鉄の路線図を見ながら、城へ戻れる路線を探していた。
すると、駅員さんから話しかけられる。
「どちらまで向かわれるんですか?お客様?」
駅員さんから行き先を聞かれると沙耶は、広大な路線図に乗ってない城を指さすが…。
すると、駅員さんからあることを言われる。
「お嬢さん…。こちらへどうぞ。」
そう駅員さんに言われるがまま、沙耶は駅員さんについて行きある場所へとたどり着く。
そこは関係者以外立ち入り禁止の場所であった。
その注意書きを見た沙耶は疑問を投げかける。
「駅員さん。ここ、立ち入り禁止の場所ですよね。|大丈夫なんですか?」
沙耶の投げかける疑問に答え始める駅員さん。
「ええまあ…。問題はありませんよ。ここは、城へ直通する極秘路線でマップには載っていないんですよ。ちなみに、貴女の噂は聞いてますよ。ですからここまで案内を致したまでですよ。」
なんと、沙耶の噂が地下鉄駅の駅員さんにまで届いているというのだ。
しかもそれだけでなく・・・数々の噂も飛び交っていることを駅員さんから聞かされて、物凄く驚いてしまう沙耶。
だが、沙耶は素朴な疑問を駅員さんに投げかける。
「駅員さん?この地下鉄って、運転手居るんですか?」
その疑問にも親切に答える駅員さん。
「この地下鉄は自動運転です。勿論、他四路線も自動運転で動いてます。ですので、この直通路線だけは、ご乗車後運転室へ向かい、運転室の中にある運転ボタンを押すと動き始めます。他の四路線は、十分間隔で運転しています。」
沙耶は、駅員さんからの説明を聞き、深く理解をしてから、駅員さんにお礼を言って扉の中へと入っていく。
―極秘の直通路線―
沙耶は、扉の中へ入ると目の前にある階段を駆け下りていく。
するとそこには…。ラベンダー色の帯の車両が、片側だけ乗車口があるプラットホームに停車していた。
沙耶は、真っ先に運転室へと向かい車両に乗り込む。
「えーと…。確か、運転室の扉をこう閉めたところに…ドアロックがあって…。ロックが掛かったのを確認してから、運転台のところへ行き、椅子に座ると…。えーと、運転台のこのボタンを押せばいいんだよね?」
沙耶は、ひとつひとつ確認しながら、運転の準備を始める。
そして、運転台にあるボタンを押すと車両のエンジンが掛かり、音声が流れ出す。
「この列車は…ノーゼンカムイ王国直通快速、城内行きです。次は終着城内に止まります。ドアが閉まりますご注意ください。」
すると、開いていた扉が閉まり、ブザーが鳴る。
そして、もう一回運転ボタンを沙耶が押すと…。
車両が動き始めて、再度音声が流れる。
「この列車は…ノーゼンカムイ王国直通快速、城内行きです。次は、終着城内に止まります。列車五両編成で、全て自由席。車内はデッキを含めましてすべて禁煙です。トイレは、一号車、三号車の後ろ寄りにございます。車内での通話はデッキにてご利用ください。それ以外でのところではマナーモードに設定の上通話はお控えください。次は、城内に止まります。」
沙耶は、音声案内を聞き入ってしまっていたが、連絡をしなきゃと思い立ち運転台近くにある受話器を取る。
すると、受話器からアストの声が聞こえる。
「沙耶お嬢様ご苦労様でした。内容は、城の王座の間にて伺いますので…。わたくしは、城内駅のプラットホームにて沙耶お嬢様をお待ちしております。」
そう言うと、アストからの連絡が途絶えた。
沙耶は、じっと運転台の所から流れゆく線路を照らすライトや、信号機にそして制限速度表示に目をやり運転手気分を存分に味わっていた。
すると、再び音声案内が流れ始める。
「まもなく、終着城内に到着いたします。お忘れ物をなさいませんようご注意ください。ホームは右側です。本日も、ノーゼンカムイ王国直通線をご利用いただきありがとうございました。」
その頃、アストが待つプラットホームでも放送が流れていた。
「まもなく、当駅止まりの列車が参ります。黄色い点字ブロックの内側まで下がってお待ちください。この列車は回送列車です。ご乗車にはなれませんので、ご注意ください…。まもなく列車が参ります、ご注意ください。」
そう放送が流れると、スピードを下げながら沙耶が乗っている列車がホームに侵入してくる。
そして、目標定位置のところにピタリと止まる。
すると、沙耶が運転室から顔を出す。
沙耶の姿を見たアストが沙耶に話しかける。
「お疲れ様でした。沙耶お嬢様。降りる前に留置ブレーキをかけてから、運転ボタンを長押ししてください。」
沙耶は、アストの指示に従い実行してから、車両から降りる。
そして、二人はカムイ陛下が待つ王座の間へ向かうのであった。
―王座の間―
カムイ陛下が沙耶の到着を今か今かと待っていた。
そこへ、沙耶とアストが到着する。
「カムイ陛下…。只今現場より帰還いたしました。」
その沙耶の言葉を聞くなり、真っ先に沙耶に言葉をなげかけたのは…妹の彩華であった。
彩華は、姉の沙耶の事をとてつもないくらいに心配していて、姉の沙耶に抱き着くや否や、泣き出してしまう。
「ねぇね…。無事でよかった。うわああああんんん。」
泣きじゃくる妹の彩華の頭を撫でながら、沙耶はカムイ陛下に現状報告をする。
「カムイ陛下…。ご心配をおかけしました。ですが、現場の方は軍隊の方々に後処理をお任せしてきました。今回の事案についてでありますが、謎の生物基…。ゴブリンと思しき生物によるものでした。数は、およそ三百で頭も討伐済みです。」
沙耶の報告を真摯に受け止めて、カムイ陛下が答える。
「うむ。沙耶よ。ご苦労であった。沙耶が到着する前に、軍隊からようやく連絡があって後処理も終わっているとのことだ。それより沙耶…身体は大丈夫か?大勢の敵を一人で相手したのだから疲れてはいないか?」
カムイ陛下は、沙耶の身体の状態を一番に心配して、沙耶に問いかけるが沙耶は、笑顔で返答する。
「いえ。問題はありませんよカムイ陛下。あたし、能力を一切使っていませんので、ただ…単純にあれだけ激しく動くのが久々過ぎて、少し疲れただけです。」
カムイ陛下は沙耶のその返答に、少し疑問を持ちながら再び問いかける。
「沙耶…能力を使っていないと言ったが…。軍隊の報告によると、刀に炎を纏わせたりとかしていたと聞くがそれはどう説明するのだ?」
カムイ陛下は沙耶が能力を一切使わずに、魅せた芸当について沙耶に聞くが…。
「なんと、言えばいいのでしょうか。カムイ陛下から渡されたこの妖刀村雨…。これに手を触れた瞬間、インスピレーションが頭の中に流れて来たんです。口では説明しずらいですが、前の持ち主の意思を感じました。上手く呼吸と刀から出る波長を合わせた結果・・・あのような芸当ができたまでです。」
沙耶、自身がカムイ陛下から渡された妖刀村雨に手を触れた瞬間、頭の中に流れて来たインスピレーションを元に動いたと説明すると、カムイ陛下がなにか思い当たるような感じで話始める。
「まさか…。まさかな。物には意思が宿ると聞いてはいるが・・・その妖刀村雨にも、意思が宿っていたとは。成程…。前の持ち主の意思を感じ取ることができたという事は…。もしかしたら沙耶には、その刀があっているのかもしれない。沙耶の前に、何人もの人がその刀に触れてはきたが…。意思を感じ取る以前に、不慮の事故が起こったりして何人もの命を奪ってきたその妖刀村雨だが・・・ついに安心できるご主人が見つかったってことだな。」
そうカムイ陛下が言った瞬間、沙耶の持つ妖刀村雨が一瞬紫色に光ったかと思うと直ぐに元の色へと戻る。
あまりにも一瞬の出来事に沙耶たちは、一切気付きもしなかったのであった。
ついに、沙耶は帰還してカムイ陛下に報告まですることができたのだが…。
沙耶にとってこれからが試練だと思うのは、まだ先の事であった。
果たして、沙耶は妖刀村雨を上手く使いこなして勇者候補から勇者へと成り上がることができるのであろうか…。
日常から急転して、非日常へと落ちていくがふたりは無事に乗り切れることができるのか…。そして、もといた世界に帰ることができるのであろうか。