第1話 日常からの非日常へ
女子高生として人生を送っていた、彩華と沙耶が突如として時空の歪みに飲み込まれてしまう。そして、そこで待ち構えていたのは…。
あたしの名前は、炬 沙耶。
何処にでもいる高校三年生だよ。
少しみんなと違うのは…あたしが病み系女子ってところかな?
一応姉妹で、一つ年下の妹がいます。
名前は、炬 彩華。
あたしと同じ、蓬莱高校に通う高校二年生。
そして、あたしとは、正反対の可憐な少女…。
そんなあたしたち姉妹は、いつも通りに学生生活を送っていたのだが…。
まさか、あんなことになるなんて夢にも思わなかった。
それは、ある日突然起きた。
―某日 炬宅―
「おはよう、彩華…。今何時?」
眠い目をこすりながら起きてきた、病み系女子である姉の沙耶。
「あ、ねぇね。おはよう今は七時半だよ。」
今何時という姉の沙耶の問いに答える妹の彩華。
こんな感じで、いつものように受け答えをしていた時だった。
突然、テレビから緊急放送が、流れ出す。
[番組の途中ですが…ここで、臨時ニュースをお伝えします。つい先程|、再び時空の歪みが確認されました。繰り返します…時空の歪みが確認されました。国民の皆様は、歪みに巻き込まれないようお気を付けください。以上、臨時ニュースでした。]
沙耶たちが住む街で、時折時空の歪みが起き、異空間へ飛ばされるという怪現象が、頻発していた。
そして・・・何名かの行方不明者が出ている始末であったのだ…。
そんなニュースが、流れてきたのを見た妹の彩華が、姉の沙耶に少し震えながら、話しかける。
「本当に怖いね。時空の歪み…。ねぇねも気を付けないと巻き込まれちゃうよ。だって、いつ起きるか分からないって物凄く恐怖じゃない?一応はさ、二人で一緒に行動しているから、もし巻き込まれたら、二人いっぺんに異空間行きだね。」
そんな、笑い話に出来ないような内容を話す妹の彩華の話に、姉である沙耶も少し震えながら話す。
「確かにそうだよね。でもあたし怖いよ。異空間へ飛ばされて下手したら戻れなくなるなんて…。幾ら、彩華が居ても戻って来れないんじゃあ、なおさら巻き込まれたくないよ。」
お互いに、少しプルプルと震えながら話を弾ませる二人であったが…。
ふと、彩華が時計に目をやると...八時二十分になろうとしていることに気付き、慌てて姉の沙耶に話しかけた。
「ねぇね、不味いよ。もう八時二十分だよ…。急いで、学校へ向かわなきゃ遅刻しちゃうよ!」
物凄く慌てふためく妹の彩華の様子を見た姉の沙耶が、ようやく状況を理解して沙耶も慌てて学校へ行く準備をするのであった。
―蓬莱高校―
まもなく八時半のチャイムが、鳴ろうとしている時に・・・
二人の女子生徒が学校の構内へと駆け込む。
そして、その女子生徒が急いで教室へと駆け込むのと同時に…。
“”キーンコーンカーンコーン“”とチャイムが鳴りだす。
「セーフ…。間に合った。」
彩華と沙耶の二人が、同時刻にボソッと呟く。
チャイムが、鳴り終わると担任の先生が教室へと入ってきた。
「みんなおはよう。」
開口一番に、そう挨拶をする姉の沙耶のクラスの担任である二階堂先生。
『二階堂先生。おはようございます。』
教室に居る生徒が皆立ち上がり、挨拶をする。
そして、二階堂先生から朝のニュースについて、話をされる。
「皆も朝、ニュースで見たと思うけど…。ここ一か月の間で時空の歪みの発生が、頻発しているから…。皆も気を付けて、登下校するように。これで、朝のホームルームを終わります。」
そう言って、二階堂先生は教室を後にしたのだった。
そして・・・一時間目の授業、二時間目の授業と、とんとん拍子に進んで行き…。
気が付けば、放課後になっていたのだった。
「ふぅ。ようやく授業も終わり、これで帰れる…。あーちかれた。」
そうボソッと呟く姉の沙耶。
そこへ、妹の彩華が来て、姉の沙耶に話しかける。
「ねぇね、帰ろうよ。放課後は特に用事ないでしょ?」
帰る気満々の彩華に応える姉の沙耶。
「確かに用事はないわね。よしじゃあ、帰ろうか。」
沙耶は、そう言うと妹の彩華と手を繋いで教室を出て、学校を後にするのであった。
―炬 宅―
時間は進み・・・時刻は夜の七時。
妹の彩華が、夜ご飯を作っていた。
「ねぇね。ちょっと待ってね。もう少しでご飯できあがるから…。」
妹の彩華が、姉の沙耶に話しかける。
すると、姉の沙耶は今か今かとご飯ができるのを目を輝かせて待っていた。
「はーいお待たせ。本日は、煮込みハンバーグよ。ねぇねの大好きなやつ。」
すると、“待ってました”と言わんばかりに姉の沙耶が、目を輝かせてダイニングテーブルへやって来た。
「やったあ!!あたしの大好きな煮込みハンバーグ♡ありがとう彩華。いつも美味しいごはんを作ってくれて。」
姉の沙耶は、喜びながらも妹の彩華に感謝をして食べ始めた。
「もう、ねぇねったら。ホント、子供みたいよね。」
妹の彩華の言葉に反応を見せる姉の沙耶。
「妹の彩華にだけはは言われたくないわ。悪かったわね。子供みたいで!!」
拗ねた様子で、妹の彩華に言い放つ姉の沙耶。
そんな仲睦まじく話をして、ゆったりとした時間を過ごしていた。
そして、夜も更けてゆき…。
気付けば、朝になっていた。
「おはよう。」
いつも通りに起きた姉の沙耶であったが・・・ある異変に気が付いて妹の彩華に話しかける。
「ねぇ彩華…。なんか変じゃない?外。なんと言うか、異世界感があるような感じがする。」
その姉の沙耶言葉を聞いた妹の彩華が、そわそわし始めながら話だした。
「ねぇね…。もしかしてこれって・・・時空の歪みに飲み込まれた??そんな感じしない?」
その違和感が的中したかのように…。
二人が、異空間へ飛ばされてしまい気が付くと…。
家の内装に変わりはないのだが...
外の景色が別世界へ変わっていた…。
すると、いきなり家のチャイムが鳴り見知らぬ執事が訪ねてくる。
「炬様でお間違えないでしょうか?」
見知らぬ執事がそう話しかけてくる。
「ええ。炬ですが…。どちら様でしょうか?」
妹の彩華が、見知らぬ執事に問いかける。
すると、見知らぬ執事はハット帽を取って、話始める。
「これは失礼いたしました…。わたくしは、この世界の案内役兼貴女方の執事を務めさせていただきます。アストと申します以後お見知りおきを…。わたくしの事は、アストさんとお呼びください。いきなりで申し訳ないのですが、炬沙耶様。貴女を勇者としてこの国で迎え入れたいと国王陛下が申され、このような形でお迎えに上がりました。」
アストの言葉を聞いた瞬間に姉の沙耶が驚き、思わず声を上げてしまう。
「え?国王陛下様が?…。ちょっと待って、此処日本じゃないの?アストさん。」
沙耶が、疑問に思っていたことをアストへ問いかける。
すると、一呼吸おいて話始めるアスト。
「日本?ああ、それは貴女方が元居た世界の名称ございますね。ここは、ノーゼンカムイ王国です。」
アストの答えに戸惑いを見せる妹の彩華と姉の沙耶。
すると、沙耶が更にアストへ質問を投げかける。
「えーと、アストさん?ノーゼンカムイ王国って言いましたよね。そうすると、ここは…。もしかして、異世界ですか?」
姉の沙耶のその質問にも丁寧に答えるアスト。
「左様でございます。沙耶様。このノーゼンカムイ王国は、貴女方が居た日本という国と偶然にも繋がってしまった異世界…。並行世界とでも申しましょうか。ですが、時が満ちれば再び元居た世界に帰られますのでどうかご安心ください。」
なんと・・・沙耶と妹の彩華は、時空の歪みに飲み込まれたものの、偶然にもノーゼンカムイ王国という国へとたどり着く。
姉の沙耶が勇者としてこの世界に呼ばれてしまったことを知ってしまったのだ。
果たして、ノーゼンカムイ王国からふたりは脱出できて、元居た世界に帰れるのであろうか…。
日常から急転して、非日常へと落ちていくがふたりは無事に乗り切れることができるのか…。
そして、元いた世界に帰ることができるのであろうか。