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新たな旅立ち(レオ視点)

愛した人が愛する人と結ばれ、子供を宿した。

愛し合いながらも離れることを決意した愛した人を、自分は支えてきた。

しかし愛した人が自分ではない人を愛してようが、一番側にいて辛くなる時など一度もなかった。

しかし明日、とうとう愛した人と別れることになる。

それは今生の別れになるかもしれないと、レオは感じていた。



レオはサンを寝かしつけながら添い寝してしまったレイの頭を撫でると、部屋を出て暖かくなった月夜の中に蹲った。

元々レイが無事に出産し体調が落ち着いたら、実家に戻ろうと思っていた。


このままレイを一番近くで支えていきたい、レオはそんな欲張りな気持ちは心の底にはあるが一度も口にしたことはなかった。

しかしレアはレイとの別れを前にして、初めてレイを愛したことを辛いと思ってしまった。



レオはふと、レイがアリセナ国の王女様だと分かり街を去った日のことを思い出した。

生まれてこの方何も取り柄もなく、親に我が儘放題で育ってきた末息子の自分が、まさか愛する人を連れて逃げ出そうとしたことをレオは自分でも信じられなかった。


しかしレイを連れ去る、なんて突拍子のないことをすることはあっさりとレイに断られてしまった。

それはレイへの告白の答えのようなもので、レオは酷く落ち込んだ。

しかし落ち込む猶予など自分にはないと、レオは父親に強引に迫ったのである。


「どうにかして、レイとナタリーさんを街に連れ戻したい。なにかいい方法はない?お父様。」


ロイ子爵は正直どう見ても不可能に近いレオの発言に、顔色を曇らせ頭を抱えた。

一緒の部屋にいた嫡男で長兄のソラはあまりに無理な物言いに呆れたが、レオのこれまでにない真剣な表情に目が離せなかった。


「ナタリーさんのことを、お父様も救いたいだろう?」

「それはそうだが…。」


レオは父親がナタリーと元婚約関係であり、父親は昔ナタリーを本気で愛していたことを知っていた。

ロイ子爵は見合い結婚した母親を心から愛して現在も関係も良好だが、父親がナタリーに対して、自分のように振られても諦めきれない特別な感情を持っていることも知っていた。

それがレイがこの街に来ることができた理由であることも。


ロイ子爵は息子に悟られていたナタリーへの感情を恥ずかしく思いながら、一つ咳払いをし神妙な顔つきで言った。


「ちょっと考えさせてくれ。またお前に話に行くよ。」

「ありがとう、お父様。」


ロイ子爵は真面目で正直、決して人に嘘をつくことができない人だ。

レオは希望を感じて明るい表情になり、ロイ子爵に深く頭を下げ部屋を出て行った。



そして数日後のことだった。

レオの下にロイ子爵が現れ、自分の妹がアリセナ国の魚師と駆け落ちしたこと、そして海を介してアリセナ国へ不正入国できることを告げた。


「お父様、ありがとうございます。俺、レイとナタリーさんを助けに行きます!」


その話を聞いて、レオには躊躇いはなかった。

しかし街からろくに離れたこともなく温室で育てたような末息子のことをロイ子爵は酷く心配した。


「航海もしたことがないだろう?妹の夫が行きは迎えに来てくれるようだが、本当に一人でアリセナ国で生きて戻ってこられるのか?」


ロイ子爵は落ち着いた表情でレオを見つめ、自分で言い出したのにもかかわらず可愛い息子が諦めてくれることを心のどこかで望んでいた。

しかしレオは首を縦に振り、真っ直ぐ前を見つめていた。


「安心してください。叔母の旦那さんから、みっちり教えてもらいます。必ずライトナタリーさんを助けてきますから!」


レオはそのままロイ子爵に説き伏せ、一人で旅に向かうこととなった。

ロイ子爵を始め母親や兄達はレオの身を案じて、護衛を仕えさせることを提案したがレオは自分の問題だからと断った。

レオはただ一人、険しいアリセナ国へ密入国し囚われた者達を助けるために故郷を旅立ったのである。


そしてクルート国北部の辺鄙な船場で、レオは叔母の父と待ち合わせし、小さな船で航海技術を教わりながらアリセナ国へ不正入国をした。

そしてアリセナ国に不正入国あと間も無く漁村に住む叔母家族と会い、裏ルートを通じてセラ王子様の護衛騎士、ロクを紹介された。


ロクはいずれ二国の戦争が始まり、人質としてアリセナ国に囚われている世羅王子様が幽閉され処刑される未来を案じていた。

最悪の未来が訪れる前に、ロクはセラ王子様を連れアリセナ国からの不正出国を考えていた。

レオはその不正出国を助ける代わりに、王城から二人の大切な人を助け出してもらうことをロクと約束した。


貴族の息子であるレオが王城に忍び込み厳重な警戒態勢を抜けて、大切に守られているだろうレイと囚われたナタリーを助けるのは無謀なことであった。

ロクは頭の切れる者でセラ王子様を大切に思っており、その思いを信じてレオはロクと約束を交わすこととなった。


しかしロクが助け出したのはナタリーだけであった。

レオは憤怒したが、セラ王子様自らレイを殺さずに攫ってくるだろうとのことを聞き信用することにした。

そして先にナタリーを叔母の父に依頼して、アリセナ国へと送還してもらったのである。


数日して約束は叶い、レオはレイと再会することができた。

しかし再会とともに、いつしかレイが話していたセラへの憧れは初恋であり、二人は愛し合っていることを知ることとなる。

しかし未来は険しいだろう二人を見守りながら、レオはセラの護衛騎士として生きていく道を決めてハルクに赴いた。


そして数ヶ月、セラの帰りを待ちながら、厳しい鍛錬に励んでいた。

しかしハルクに帰ってきたのはセラ一人だけだった。

セラは身寄りのないレイをエルベラに置いてきたというのだ。


レオはレイに対して抑えていた想いが溢れ返ってしまった。

すぐにハルクを出たレオは、エルベラに行く方法を聞いて回りながら、一度実家に戻った。

そしてエルベラに手紙を出し続け、リリィの目に留まったレオは、身重のレイを支える者としてエルベラでレイと再会することとなった。


しかしレオにはエルベラで辛い事実を聞くことになる。

レイは命に代えて子供を産もうとしていたのだ。

愛する人が本当にこの世からいなくなってしまう未来に、レオは絶望した。


しかしレイは愛するセラとの子供を大切に想い慈しんでいた。

レオはその姿を見て、愛する人の最期の時間がくるまで側で支えられることは、なんて光栄なことだと思えるようになった。


そしてレオは、エルベラでレイの側で支える穏やかな日々を過ごした。

一方で戦地ではセラと護衛騎士をはじめとした一行が勇者のように戦火を鎮圧し、二国のために戦争を終わらせようとしていることを知った。

レオはレイとセラの互いの選択をいつしか受け入れられるようになった。


ただレイの強い意思により最後の戦地であるアデナ城に赴くこととなり、レオも支えながら大切な任務を遂げることができた。

しかしさすがの無理が祟ったのか、レイは予定より早めに陣痛が来てしまい難産で母子の命を彷徨った。

レイを本当に失ってしまうのかと、レオは恐ろしい気持ちで二人の生を願った。

そして大聖女になるべきであった赤子が双方の命を救ったことによりレイは後遺症を残しながらも、子供とともに生き続けることができた。


それからレオはナタリーと再会し、二人でレイとサンを支えてきた。

そしてレイの体調が落ち着いたことにより、レオはずっと自分の安否を心配してくれていた実家に戻ることを決めたのだ。


今はナタリーが側にいてくれるが、レイのことだからきっと一人でサンを育てていくのだろうとレオは思っていた。

後遺症を抱えたレイとサンの未来への不安は絶えないが、ナタリーからしばらくレイ達を支えていく決心を聞き、レイとサンの前にいつかきっとセラが現れるだろうことをレオは願うばかりだった。


「レオ、幸せになってね。」


レイはサンを抱きながら満面の笑顔でそう言った。

レイのいない未来で自分が幸せになることなど、ずっと想像できなかった。

しかしもうレオは二人から離れることを決めたのだ。

レオは溢れる涙を堪えながら、レイのサンを優しく抱きしめた。


「レイ、もし何か困ったことがあったら遠慮しないでフィッセルに帰って来てを欲しい。」

「ありがとう、レオ。」


レイを見つめると、レオと同じように目に涙を溜めていた。

別れ際になっても、レオはレイを愛する気持ちが溢れて胸が苦しくなった。


「行ってきます。」


レオはやはり、これがレイとの今生の別れになどならないと思うようにした。

きっといつかまたお互い幸せな形で再会したい、愛した人がずっと幸せになれますようにと、レオは願ってやまなかった。


「また会える日まで。」


そして数年が経ち、セラと再会できたレイは、レオから結婚をすることを聞いてフィッセルに赴いたのであった。



長くてすみません。

レオ視点の物語の回想でした。


報われなかったレオの一途な恋の末路を描きましたm(_ _)m


実は最初は、レイとレオは逃げて、でも囚われてレオは帰らぬ人になる設定でした。

レオはbrillranceで重要なキャラクターです。


レオに愛された奥様はきっと幸せでしょうね…♡


改稿後、多くの方に目に止まり、お気に入り登録とても嬉しく思っています。

もし番外編で書いて欲しいものがあればリクエストください。

ご閲覧ありがとうございます♪

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