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一途な恋(シーダ視点)

『私は明日から平民になる。先のことは未知だが酷くほっとしている。』


二国の戦争、クルート国の英雄の活躍により幕を閉じた。

シーダは戦争の首謀であったカヌイの親族として捕縛され、三ヶ月クルート国で幽閉されていた。

死刑執行されたカヌイのように自分も死を覚悟していたが、シーダはエヴリ女王様からの助言で減刑を許された。

シーダは平民に降格し、明日から平民として生きていくこととなった。


シーダは地位も領地も奪われ、何も当てもない人生の始まりである。

しかし何にも縛られない自由を与えられたことに、シーダの心は落ち着いていた。


シーダは牢獄での最後の夜、栄華を極めた一族から産まれた過去を振り返っていた。


シーダは、由緒ある重臣の一族の未子として産まれた。

カヌイと正妻である母親の間には五人の娘がおり、シーダは年が離れてやっと産まれた息子だった。

しかしカヌイには何人もの愛人がいて、自分より年上の婚外子の男子が数名いた。

シーダの母親はシーダを異母兄達に引けを取らない立派な後継になれるよう、厳しく育てた。


しかしシーダの母親は長年の心労が重なったのか、シーダが成人を迎える数ヶ月前に急死してしまった。

真面目で従順なシーダをカヌイは気に入って、常に側に置いてくれた。


ただシーダは内心、母親を苦労させたカヌイのことをあまり良く思っていなかった。

父親の聡明で王族の心の内に入り頭の切れるところは尊敬するが、自分は妻を心から一途に愛そうとシーダは決めていた。


そんなシーダには三才の時に約束した婚約者がいた。

それはアリセナ国唯一の王女様エヴリで、エヴリ王女様が産まれて間もなく交わされた婚約だった。


しかしエヴリ王女様は生後間も無く何者かに拐われてしまい、シーダはエヴリ王女様の顔さえも見たことがなかった。

ただ物心ついた頃からシーダはカヌイより、「お前は王配になる。」と断言されており、不思議に思っていた。


シーダがエヴリ王女様と再会したのは、一年前のことである。

カヌイに着いて行ったアリセナ国での帰路にあった田舎街の晩餐会で、シーダはエヴリ王女様出逢った。

アリセナ国に拐われていたエヴリ王女様は、田舎街の集められた若い美女の中でも一番目立つ魅力を持つ、気品の漂う女性だった。


まずシーダはエヴリ王女様の正体を知らぬままその魅力に惹かれてダンスを申し出た。

しかしお酒に弱いシーダは乾杯の時のシャンパンで既に我を失っており、未婚の女性の腕を触ってしまう失態を犯した。

それが要因で街娘がエヴリ王女様である事実を知ることができたのだが、そもそもカヌイが自分にエヴリ王女様を誘わせこうなることを仕組んでいたとシーダは勘付いてしまった。


そしてシーダはエヴリ王女様と母国に戻り、エヴリ王女様の正当な婚約者を超えて愛を育もうと思っていた。

しかしエヴリ王女が自分に嫌悪していることをだんだん気付き、しかも他に想い人がいることをエヴリ王女様の晩餐会で明らかになった。


エヴリ王女様の想い人は、容姿端麗なクルート国のセラ王子様であった。

晩餐会以降、二人は内緒で逢瀬を交わしており、シーダは自分の入る隙はないように思えた。

しかし自分は政略結婚とはいえエヴリ王女様に惹かれており、片思いでもいいからその思いを全うさせるつもりでいた。


そんな時、エヴリ王女様はとうとうセラ王子様と王城を出て密会し、事件に巻き込まれそうになった。

騎士団と駆けつけた自分が二人の身柄を助けると、つい感情的になってしまった。

シーダは叶わない愛を想うことの苦しさー、自分の母親がずっと耐えてきたものが分かったような気がした。


しかしエヴリ王女様の身に事件は次々続きに起こり、エヴリ王女様の部屋が火災でいっときエヴリ王女様が行方不明になってしまった。

シーダは懸命にエヴリ王女様を探したが、先に王城に戻っていたエヴリ王女様は明らかに人が変わっていた。

繊細でどこか脆さを感じるエヴリ王女様が、心を強くして帰ってきたのである。


シーダはエヴリ王女様が養母を亡くしてしまい自室も火事で失うという度重なるショックから、性格が変わられてしまったのだと思った。

しかし慕っていたセラ王子様が逃亡して王城を去ってしまったのに、未だエヴリ王女様はシーダの方を向こうとは一切しなかった。

健気な愛を大切にするエヴリ王女様にまたシーダは惹かれ守っていくことを決め、エヴリ王女様がマヤ王妃様とアデナ城へ篭城することになったときも自分の命に代えても守ろうと決意したのであった。


アデナ城での戦いが始まり、シーダは前線で剣を抜き戦い切った。

しかし戦いの途中で、エヴリ王女様のいる城内に大量の火の矢が打たれた。

シーダは周りの敵兵を追い払うと、エヴリ王女様を助けるため燃え上がる王城に入ろうとしていた。


しかし目の前には一足早く、周りの反対を押し切りながら城の中に入ろうとする敵兵がいた。

その敵兵の正体をシーダは知っていた。

それは幼き日から共に鍛錬した重臣ルーエンの子、ゼロだった。


「マリアを助けたいんだ。私の命に代えてでも。」

「しかし危険だ、ゼロ。」

「私はマリアと生きて再会したいんだ。」


シーダは城の影で敵兵の会話を聞きながら、混乱していた。

ゼロがエヴリ王女様を助けることを止めていたのは、エヴリ王女様と愛し合ってたはずのセラ王子様だったからだ。

しかも産まれて間も無く死んだはずのゼロの妹であるマリアの名前が、二人の会話には登場していることにシーダは心の奥に抱いていた疑惑が腑に落ちてしまった。


『エヴリ王女様の部屋の火災を境に、人が変わってしまったエヴリ王女様は実は別人であった。密かに生きていたマリア王女様にすり替えられたというのか。』


呆気にとられた間にシーダはセラ王子様に見つかり、一騎討ちしたが敗北した。

そして捕縛されている間に、右腕に大怪我をしたゼロが気を失ったエヴリ王女様を担ぎ共にアデナ城から戻ってきた。

シーダは胸から込み上げる思いがあり、目頭が熱くなった。

これこそが本物の愛だと、シーダは二人を見て痛感した。



それからシーダは二度とエヴリ王女様と再会することはなかった。

後にエヴリ王女様がキースというクルート国の使者と婚姻したと聞いた。

キースがゼロであることを薄々感じていたシーダは、それは自分が墓場まで持っていこうと決めた。


自分のエヴリ王女様に対する一途な愛は一度も振り向かれることなく、一人で燃えていただけで終わってしまった。

しかしいつかあんな運命の恋を経験できるかもしれない人生が残されたことは、なんという幸福だろうとシーダは思った。

それを希望に、シーダは平民として生きていくのであった。



二人の王女様に煙たがられていたシーダですが、ちゃんと信念を持って必死に生きてました☺︎


次回番外編ラストです。

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