新しい恋の花②(フィン視点)
フィンがナオと揃って自宅に帰ると、フィンの両親は涙を流し、フィンを抱き寄せた。
「フィン、よく戦争を駆け抜けて生きて帰ってくれた。私の娘として誇りに思うよ。」
フィンの父親は、フィンが過酷な戦争で大活躍し生き延びたことを褒め称えた。
そして懐かしい実家の従者達と話を弾みながら、今日だけは仕方ないと、フィンは華やかなドレスに身を包み家族だけの晩餐に向かった。
「え!ナオが求婚!?」
「あらー、ナオ。フィンのこと想ってたなんて。早くママに言ってよ。」
フィンがナオが迎えに来た帰路でプロポーズされた事実を話すと、フィンの父親は卒倒し気絶しそうになっていた。
ナオの母親は本気で嬉しそうに満面の笑みを溢し、ナオに目配せしていた。
フィンの父親が咳払いするとナオの母親は態度を正し、罰の悪そうなナオとフィンの父親は向き合っていた。
親バカな父親が自分の結婚など許すはずがないとフィンはまるで人ごとのように思い、久方ぶりの豪華絢爛な食卓を口一杯に頬張っていた。
「結婚の話、いいだろう。」
「…え?なんで?お父様?」
フィンは目を丸くし、口の中の食べ物を吹き出しそうになったのを必死に堪えた。
フィンの父親はすっかり穏やかな表情に戻っており、妻やナオに首を縦に振っていた。
「私もそれがいいと思っていたんだ。まさかナオからフィンに先に告白するとは思ってなかったよ。」
「私は家族内でも、フィンへのプロポーズを自分ではない人から告げられるのは絶対に嫌だったんです。」
「ナオー。男気あるわ。フィン、どうか不束者の息子だけどよろしくね。」
三人で和やかに自分の婚姻話が進められていくのに、無言で食事を進めていたフィンはだんだん堪忍袋の尾が折れた。
フィンは飲み込むようにデザートを食べ終わると立ち上がり、父親を睨みつけて言った。
「お父様。無礼なこととは承知ですが、私は誰かと結婚をしないといけませんか?」
「そうだなぁ…。そもそも二国を救った英雄の一人であった女騎士のフィンに結婚を求めるなんて恐れ多いのか。いい歳のフィンの婿にして欲しいという縁談の話が全くこない。お前がそれでも一人で家業を就くというならいいが、私やママは生涯支えてくれる伴侶を見つけて欲しいと思っている。」
フィンは父親が娘を思う真摯な発言に心を打たれ、今にも晩餐から逃げ出そうとしていたのをやめて黙り込んだ。
そしてフィンは少し頭の中で考えて、ナオに向かって言ったのであった。
「分かりました。とりあえずナオ。食事が終わったら、テラスに来てくれない?」
「あぁ。分かった。」
そして晩餐が終わり、花が咲き誇るテラスでフィンはナオと落ち合った。
フィンはベンチに座り、神妙な顔でナオを見つめて言った。
「あのね。結婚してもいいけど、一つ条件があるの。」
「何?」
「とりあえず笑わないで聞いてくれる?」
「あぁ。」
フィンは少し顔を赤らめ深呼吸をして言った。
「私に花を送って欲しいの。」
「花?」
「私産まれてこの方貰ったことがなくて…ちょっと憧れがあって。まあとりあえず私に送ってくれた花を見て、ナオと結婚をするか決めるから!」
フィンが柄にないことを話し取り乱し始めたのに、ナオは隣に座りフィンの頭を優しく撫でて言った。
「良かったー、決闘とかじゃなくて。俺はフィンより弱いから。フィンにぴったりの花を見つけるよ。」
「…ありがとう。笑わないで聞いてくれて。」
「そう言うウブなところも好きだよ、フィン。ドレスもすげー可愛い。」
すっかり安堵したフィンにナオは甘い言葉で攻め、そのまま頬にキスをした。
そしてナオはフィンに怒られる前に、颯爽と部屋の中に逃げていってしまった。
「なんなの。本当に。私は泣く子も黙る女騎士なのよ。」
フィンはそう言いながらキスをされた頬を抑え、庭園に咲いている花を愛でていた。
自分があんなことをナオにお願いしたのは、レイやミーナなど周りの女性に感化されたかのように感じた。
そしてフィンは、これから自分は領家の主人でありながらも女性として生きていきたいと、いつしか思うようになっていた。
そして一週間後の夜、フィンはナオにテラスに呼び出された。
ナオは落ち着かない様子で背後に隠していた花束を、フィンの胸の前に渡した。
「ごめん。いろいろ考えたんだけど。ありきたりなものしか思いつかなかった。」
ナオは頭を深く下げて言った。
フィンが渡された花束には、庭園に咲いてた向日葵とミニバラがあった。
「ふふっ。」
フィンはつい笑みが溢れ、初めて貰った花束をしっかり胸に抱いた。
「合格。」
「本当にこれでよかった?」
「自由で大雑把でいいじゃない。私やナオらしい。ありがとうね。」
フィンは無垢な笑顔でそう言うと、ナオの頭を撫でた。
ナオは顔を赤らめてそっぽを向き、そのままフィンを胸の中に抱き寄せた。
「これから一緒に生きてほしい。」
そしてナオはそう言うと一輪の赤い薔薇をフィンに渡した。
フィンは驚いた顔で花を受け取ると、ナオの腰に手を回して抱き締めた。
「本当に私でいいの?」
「それは俺の台詞だよ。でもさ、女は愛されてる方が幸せなんだって。お母様がよく言ってる。」
「ばーか。私もナオのこと好きなんだから、そんなこと言わないの。」
「えっ?本当に?」
ナオは動揺してフィンの身体を引き離し、フィンの顔色を覗いた。
フィンは顔中真っ赤になっており、白い髪に映えて綺麗だった。
「愛しているよ、フィン。」
そうしてフィンは地元で女性としての幸福を手に入れ、貴族の女主人としてナオと切磋琢磨し末長く幸せに暮らしていたとさ。
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ガサツなナオも個人的に好きです☺︎
フィンもまた後世は穏やかに過ごしていきました。




