表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
35/45

戦争の終わり

マリアは、二国の戦争に纏わる全ての事情をテン王様に話した。

マリアの証言により、二国の戦争の責任は捕縛されているカヌイの亡きマヤ王妃様に向けられた。

そしてアリセナ国はしばらくクルート国の属国として、政治的介入を受けることになった。



マリアはハルクで半月間、手厚く介抱された。

そして火事による大きな後遺症を残さず、マリアはアリセナ国へ戻れることとなった。

そしてマリアがアリセナ国へ旅立つ日、マリアはセラに呼ばれると、セラに仕える護衛騎士の一人を紹介された。


「キースです。アデナ城での火災で右腕を失っていますが、逞しく信頼できる者です。私も間も無く王位を手放しハルクを去りますので、マリア様がキースを一緒に国アリセナ国へ連れていってはくれませんか?」

「ゼロ…!?」


キースとセラ名前を呼ばれたのは、ゼロであった。


ゼロは周りの反対を受けながらもたった一人で、マリアを助け出すために炎の中に飛び込んだ。

意識の失ったマリアを抱えて逃げようとした時、ゼロの腕に瓦礫が落下してしまった。

ゼロは重傷の火傷を追い、右腕を失っていた。


しかしマリアはセラの提案に対して、迷わず首を横に振った。

マリアはゼロに対する変わらぬ想いを感じながらも、これ以上迷惑をかけたくなかったのだ。


「ゼロ。右腕のこと、私のせいで本当に申し訳ありません。私は貴方と一緒にいる資格がありません。」


マリアはそう言うと、目に涙を抱えながら頭を下げた。

しかしゼロはそんなマリアに近付き、マリアの右腕に触れると優しく微笑んで言った。


「マリア女王様も右腕に火傷があるじゃないですか。私と一緒です。こんな身体ですが、私の一生をマリア女王様に捧げさせてくれませんか?」

「ゼロ…。」

「これは最初で最後の、一生で一度きりの私の願いです。」

「分かりました。」


マリアはそう言うと涙が溢れ、ゼロの胸の中に飛び込んだ。

ゼロはマリアの頭を撫で、熱い抱擁を交わした。


そしてマリアとゼロが醸し出す甘い雰囲気に、ゼロは静かに去ろうとしたがマリアは呼び止めた。


「セラ王子様は、本当に王族の立場を退くのですか?」

「はい。迷いはありません。」


マリアはクルート国に着いて間も無くセラに、レイがレオと名乗る護衛を連れてエルベラにいることと、レイは身体に子を身ごもっていることの事実を告げていた。

驚愕の事実にセラは数日間動揺していたが、自分が決めた道を変えるつもりはなかった。


「私はレイを迎えに行くために、そんな不純な理由を持って王様になりたかっただけなんです。私は平民になり、ただレイを思い続けられる日々が来るのを、今から待ち遠しくてたまりません。」


セラはそう言うとマリアに対して微笑み、その笑顔には不安の陰りは一つもなかった。


そして戦争の後処理が落ち着いた三ヶ月後、セラはテン王様と交わした約束通り王族の身分を退きハルクから去ろうとしていた。


セラは早朝、王宮騎士団の鍛錬場の前のベンチに腰掛けると、騎士たちの鍛錬を見ていた。

セラの隣には変わらず仕えるロクとフィンがいて、雑談を交わしていた。


「本当に王族の地位を退いて、後悔しない?セラ?」

「フィン…お前その話をセラにするの何回目だよ。」

「だって、ロク。浮気者のレイを探すため、王座を捨てるだなんて。セラは報われないわ。」

「フィン。」


セラ本人がいる前で愛する者を軽々しく侮辱したフィンを、ロクは睨みつけた。


二国の戦争に向かう前にセラがテン王様とした約束を、フィンとロクは勿論セラから聞いており理解していた。

しかしレイの現状を聞いたフィンは全く納得がいかないようで、セラに幾度となくレイの悪口を言っては、セラをハルクに止ませようとしていた。


「フィン、レイを浮気者なんて言わないでくれ。レイはレオを選んだんだ。」


そしてどこまでもレイを愛し続けるセラはレイを庇ったが、セラは少し寂しげだった。

セラは事実を知った上でもレイに会いに行きたいと強く懇願し、王位を退き平民となることをテン王様に許された。


しかしセラには、この数ヶ月の間にエルベラから出て行ったというレイを探す、途方もない一人旅が始まろうしていた。

セラは全く怖気いていなかった。

フィンに話した通り、レイだけを想って生きることができる日々が来ることを心待ちにしていたのである。


「フィンは実家に帰るんだろう?」

「そうね。じゃじゃ馬娘はセラのいない王宮には置いてられないと、お父様から言われたのよ。」

「何度聞いても笑えるよな、その話。」


ロクが大笑いしたのに対し、フィンはすかさずロクの腕を掴み、睨みつけた。


フィンは大貴族で多くの領地を持つ良家の一人娘だった。

これまでは父親からセラ王子様のために尽くすことを許されてきたが、さすがにフィンにはいずれは家の主人とならねばならない役目を果たす時がやってきた。


フィンは性格上、そんな息苦しい毎日からいつか抜け出してしまうような予感はしていた。

しかし自分が故郷に戻ることは今まで自由を許され生きてきたことの両親への唯一の奉仕だと、フィンは思っていた。


「ロクには弟を頼むよ。来月はリュートに気をつけて行って来てくれ。」

「あぁ。セラに比べたら素直で大人しい王子様で、俺には物足りないけどな。」


ロクは平民になったセラに着いていくことを切望していた。

しかしセラがロクに頭を深く下げ、国一の武人であるロクに、大切な弟のカラを守って欲しいと頼んだのであった。

なかなかロクは了承しなかったが、結局セラの強い意思に負けてしまった。

しばらく国を離れティナ島を超えた海の先の大国リュートに留学を許されたカラに、ロクは着いて行く事となった。


「それにしてもフィンもロクも、私の大切な人達のことを好き放題に言い過ぎだ。」

「「すまない。」」


心の広いセラでも、フィンとロクの態度はさすがに尺に触ったようだ。

セラは低い声でそう二人を牽制すると、ただひたすら鍛錬場での騎士達の練習を見ていた。

しばらくして落ち着いた頃、言葉を発したのはロクだった。


「でもなんでセラの最後がここなんだ?」

「思い出の場所だからさ。私がここまでくるのに、ロクとフィンや、多くの騎士達に鍛錬してもらった。何も取り柄のない私を皆は信じて、力を付けようと教えてくれたんだよな。」


セラはそう言うと目を瞑り、幼き頃の鍛錬の日々を思い出した。

人には決して言えない理由から王様になると決め、少しでも秀でた人間になるべく、セラは武を極めてきた。

そして今回の戦争で、自分の師となってくれた臣下の数名を亡くしてしまった。


「これから臣下達の墓前に行こうと思うんだが、着いてきてくれるか?」

「勿論だ。それこそ、セラらしい最後だな。」

「本当ね。はぁ。私はそんなセラが治める国を見たかったわ。もう少しで王様だったのに。」


最後までセラの失脚を惜しみ諦め切れないフィンは深く溜息をついた。

そんなフィンの姿にセラは苦笑し、ロクは咳払いをした。


「そういや、マリア女王様がゼロと結婚するって話、本当なのか?」

「本当だよ。マリア女王様がアリセナ国に帰り、一番最初にしたのがゼロへの求婚だったようだ。」


戦争が終わって間も無く、女王様が後ろ盾もない他国の臣下へ求婚するなど前代未聞だった。

しかしそんな夢のようなことを現実にしてしまうほど、変わらずマリアは強情でもう大切な物を失いたくなかったのだ。


「せめてマリア女王様の結婚式に行ったらよかったんじゃないか、セラ。」

「ロク。今日は二人とも未練がましいよ。」

「「それは…。」」


セラが少し不機嫌にそう言い放ったのに、ロクとフィンは次の言葉を失い俯いていた。

セラはフィンが目に大量の涙を溜めてていて、ロクも歯を強く食いしばっているのが分かった。


「これが今生の別れじゃないんだから。私はいつでもフィンとロクに会いに行くから。」


セラがそう微笑むと、フィンとロクは臣下らしからぬ行動に出た。

二人はセラの両側から、セラを強く抱きしめたのであった。


「フィン、ロク。ここまで私に着いてきてくれて本当にありがとう。私のかけがえのない相棒だよ。」


セラは落ち着いた口調で呟くと、一人遠い彼方へと去って行った。




本編はエピローグを残し、終了です。

次回、番外編です。

ストックに纏わる建国神話を綴らせてください。

三話完結になります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ