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絶望の中で

マリアが悩んでいる間にも、セラの率いるクルート軍はリガードへ近づいて来ていた。

そしてオーウェン王様の病状も悪くなる一方だった。

圧倒的なアリセナ国の劣勢に、不安の募らせた重臣が王城から逃げて行った。


そしてマリアはマヤ王妃様が公務で王城を離れている時間を狙って、とうとうオーウェン王様へ直談判に向かった。

マリアはオーウェン王様の寝所の前で臣下に、謁見を申出し許可を得るまでここを離れないと言った。


数時間経ってようやく会うことができたオーウェン王様は、床に臥せた状態で、数人の医師が寄り添っていた。

しかしオーウェン王様はマリアの姿を見ると、首を動かして開けた目を細め、マリアを手招きした。


「こちらにおいで。」


その弱々しい声と姿から、本当にオーウェン王様の命はもう長くないことをマリアは悟った。

しかしマリアはオーウェン王様の近くに行くと、オーウェン王様から差し出された手を取ることなく、跪いて言った。


「オーウェン王様、無礼なことは承知していますがもう時間がありません。私エヴリに、アリセナ国の王権をお譲りください。」

「…そういうことか。」


オーウェン王様はそう言うと哀しそうな目をし、天井に両手を挙げた。

マリアはオーウェン王様の容体を微細も心配だと思えなかった。

無礼で傲慢なことだとは分かっていたが、マリアは自分が欲しいものだけ素直にオーウェン王様に告げたのだった。


「そうだな。こんな国の王座でよければ、くれてやる。」

「…オーウェン王様!!」


その時、オーウェン王様の部屋の扉が威勢良く開いた。

扉の前で仁王立ちしていたのは、マヤ王妃様だった。

そしてマヤ王妃様は真っ直ぐマリアの下へと向かうと、マリアの右頰を強く叩いた。


「ここはオーウェン王様の御前よ。勝手に中に入るなんて。無礼極まりないわ。」

「その言葉は貴方にそのまま返すわ。そして、私は今オーウェン王様から即位の許可をもらいました。」


マヤ王妃様に頰を打たれた勢いで投げ出されるように倒れたマリアは、すぐに立ち上がるとそう叫んだ。


「そんな。オーウェン王様。このドブネズミのような娘にはそんな大役務まりません。」

「マヤ。じゃあ一体誰が、アリセナ国の王権を継ぐのだ。」

「それは…。」


マヤ王妃は黙り、口を噤んだ。

きっとただエヴリ王女にだけは王権を譲りたくないマヤ王妃様の浅はかな想いがマリアには伝わっていた。


暫く沈黙が続いたが、オーウェン王は酷く咳き込み、いきなり大量の赤い血を吐いた。

医師が即座にオーウェン王様の駆け寄り、ぐったりしたオーウェン王様と慌てるマヤ王妃を背にマリアは何事もなかったのかのようにオーウェン王様の寝所から出て行こうとした。


一応オーウェン王様から王権を継ぐことに成功したマリアだったが、走り去ろうとするのをマヤ王妃様に止められた。

そして自分が叩いて赤く腫れているマリアの頬にマヤ王妃様は手を触れ、高笑いしながら言った。


「貴方は本当に私に似ているのね。」

「…。」

「何を不思議そうな顔をしているの?どこで育ったのか分からないけれど、よくまあここまでのし上がったわね。…貴方は本物の王女様じゃない。その首の痣はいくら化粧をしても隠せないわよ。」


マヤ王妃様の言葉にマリアは驚愕し、つい自分の白斑がある首下に手を触れた。


「産まれた時から白い痣を持った者は呪われているのよ。国を滅ぼすと云われている。だから母親の私が、産まれて間もない貴方を殺すよう指示したはずなのに。」

「私が貴方の…子供?」

「話は終わってないわよ。貴方を育てたのはきっとルーエンでしょう?ほーら、図星ね。」


マリアはマヤ王妃様が全てを知っていたこと、そして自分がマヤ王妃様の実子だという事実に呆然としていた。

そしてだんだんマリアは、マリア王妃様への憎しみが込み上げてきた。


「貴方は私をエヴリとすり替えた挙げ句、殺そうとしたのね。ルーエンは関係ないわ。」


しかしマリアがルーエンを庇うように言った言葉は、マヤ王妃様の耳には届かなかった。

そしてマリアはマヤ王妃に押されて、オーウェン王様の寝所から追い出された。



その日のうちに、オーウェン王様は息を引き取った。

衝撃の運命に拍車をかけるように、またマリアには悲報が届いた。

マヤ王妃様によりルーエンは、エヴリ王女様の部屋に火をかけたと偽りの罪を着せられ流刑となったのである。


また大切な人間を一人失ったことに、マリアは絶望した。

そしてマリアはメイドのアリアに命じ、禁断の計画を図ることに決めたのである。


「アリア、これは王命です。エステルが使った毒を私に渡しなさい。」


そして確かに亡きオーウェン王様から女王への即位を許されたマリアは、オーウェン王様の葬儀が落ち着くとすぐに即位し、王命を下した。

それは再起を起こすために、アデナ城に兵を集めることだった。

そしてマリアはアデナ城にマヤ王妃を連れ、二人で籠城することを決断した。


マヤ王妃様はアデナ城へ逃げることを始めこそ拒絶したが、このまま戦争で死ぬのは恐ろしくようで従った。

そんなマヤ王妃様の素直な態度に、アデナ城で密かに毒殺を計画しているマリアはほくそ笑んでいた。


「どうせ死ぬのは変わらないのにー。愚かな王族はどちらかしら?」


マリアの絶望は全てマヤ王妃様への復讐へと変わった。

そしてアデナ城に着いてもなお傲慢なマヤ王妃様の食膳に、マリアはエステルからもらった毒を少しずつ盛っていった。


アリアは死期間もないエステルの介抱のために、エルベラへと行ってしまった。

シーダはすっかりマリアの言いなりになっており、もうマリアを止める者は誰もいなかった。


そしてアデナ城に着いても半月も立たずして、セラ率いるクルート軍によって王城は鎮圧された。

マリアは最後の砦のアデナ城で、マヤ王妃を毒殺した後に死ぬ覚悟をしていた。

カヌイのように、マリアはすっかり心が壊れてしまっていた。



次回からレイ視点の話に戻ります。


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