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帰還した本物の王女様

半年前の王都リガードに、時間は遡る。


マリアは未だ燃え続ける王城を前に、門の真正面に立っていた。

王城の門前の屈強な護衛に近付き、マリアは意識を失うかのように地面に倒れた。

この状況を卒なくこなすためにマリアは何度もシュミレーションをして、演技力を培っていた。


「貴方は、エヴリ王女様ではないですか!!」


マリアが目を瞑りぐったりと意識を失った素振りをしている間に、若い護衛がそう叫んで取り囲まれた。

若い護衛にはゼロが多額のお金を渡し、前もって手を回していた。


いとも簡単に自分の身元は見事に消えたエヴリ王女様だと勘違いをされたマリアは、そのまま運命に身を委ねた。

そしてマリアは見る見るうちに王城内に匿われた。

辺りの落ち着いた雰囲気を見計らってマリアは目を開けると、変わった世界の姿にマリアはつい声を漏らした。


「ここが王城なの…!」


マリアは幼い頃からただ一人小さな家の中に住み、ほとんど外の世界に出たことはなかった。

王城の想像以上の煌びやかな住まいに、つい笑みが溢れていた。


「ゼロありがとう。やっと、ここまで来れたわ。」


ゼロとの心苦しい別れを胸に抱きながらも、やっと手に入れた地位にマリアは歓喜した。



マリアはしばらく呆然とし火事で燃えた王女の部屋にあてがわれた客間の艶やかな装飾を見ていたが、すぐにメイドのアリアが現れた。

そしてマリアはアリアの一言により、今この瞬間から新たな人生が始まりだという確固たる事実に気付かされる。


「エヴリ王女様。オーウェン王様がお呼びです。」


すぐにマリアはアリアの手により豪勢なドレスに身を包み、髪を綺麗に解かされ高く結われた。

ただマリアには生まれた頃から首に白斑があり、白斑を隠すため王城に入る前に念入りに化粧を催していた。


マリアは息を飲んで、オーウェン王様がいる王宮へと向かった。


「エヴリ!」


マリアの姿を見たオーウェン王様は思わず立ち上がり、身を乗り出そうとしたのを斜めに座っていたマヤ王妃様が止めた。

娘を溺愛している事実は本当だったとマリアは心の中でオーウェン王様を揶揄し、外面は満面の微笑みを浮かべて言った。


「オーウェン王様。こうして、王城に生きて戻ることができて本当に良かったと思っています。」

「私も安心したよ。エヴリ王女、本当に良かった。」


偽りでしかない言動に歓喜する愚王オーウェンに、マリアは笑いを堪えるのが必死だった。

そしてマリアは興奮からか変な冷や汗まで出てしまい、深呼吸をして身を制した。


そして釣り上がった細い目をする悪役にピッタリな容貌を持つマヤ王妃様の向かいにマリアは座った。

意地汚いマヤ王妃様に言われるであろう、嫌味の一つや二つをマリアは事前に想像し覚悟をしていた。


しかしマリアを見つめ目が合うとすぐに逸らしたマヤ王妃様は少し顔を緩め、小さな声で呟いた。


「…生きていたのね。」


マヤ王妃はその言葉を最後に言葉を発せず、オーウェン王様が愉快に話す避暑旅行についてただ頷いていた。

マリアがマヤ王妃様の言葉の意味を知ったのは、もう少し先のことだった。



マリアは初めて会うオーウェン王様とマヤ王妃様の前で粗相がないよう緊張しながらも、自信を持って乗り切った。

そして自室に帰るとまだアリアがいるのにも関わらず、全身の力が抜けたようにベッドに倒れ込んだ。


そんなマリアの姿に、アリアは表情を曇らせ見下して言った。

アリアは右手に護身用の短剣を持ち、手が震えていた。


「貴方は何者ですか?」


アリアに早々と正体を見透かされてしまったマリアは、アリアを強く睨んだ。

アリアはさすがエヴリ王女様にずっと付いていたメイドだ。


瓜二つの顔をしていても騙すことは難しいようだと気付いたマリアだが、それもマリアにとっては想定内であった。


「貴方こそ、先に身分を明かしなさい。アリア。貴方のお母様は、どうして一緒にリガードに戻られなかったの?」

「そ…それは。」


アリアは動転し、すっかりマリアと立場が逆転し追い詰められた。

マリアは口元を綻ばせ、ベッドに座り込むとアリアに隠された真実を話した。


「貴方はエステルの娘なのでしょう。ねぇ、エステルはどうしたの?私と貴方で、秘密の交換をしませんか?」


そう口角を上げて高笑いし意地悪に告げたマリアの姿は、まるでマヤ王妃様のようだとマリアは自負した。



マリアは火事を原因にレイと自分が身分を交換した事実を告げた。

その事実を引き換えにアリアは、自分の出生の秘密と母エステルが旅行中にマヤ王妃様に行った大罪を告げた。



アリアは、エステルとオーウェン王に仕えている護衛騎士との間にできた隠し子だった。


そしてエステルはマヤ王妃様とアイナの乳母のように、小さい頃から側仕えし教育していた。

しかしマヤ王妃様とアイナは確執を作り、アイナとマリア王女様は悲惨な最期を遂げた。

エステルはその事実に心を痛めたが、いつしか自責の念を超えてマヤ王妃様を恨むようになっていた。

そしてとうとうオーウェン王様らの避暑旅行に着いて行ったエステルは、マヤ王妃様の食卓に致死量の毒を盛ったのである。


しかしマヤ王妃の側近がそれにいち早く気付き、食事の毒味役をエステルに強要した。

エステルはそのまま致死量の毒を受け、意識を失った。


エステルの表向きは体調不良を理由に、避暑旅行先の城で匿われているようだった。


「ふぅん。この王城にはマヤ王妃にそんなことをする輩もいたのね。そのまま死んでしまえばよかったのに。」


マヤ王妃様を憎むマリアは、残酷な言葉を放ち高笑うった。

アリアはつい鳥肌が出て恐怖を感じ、必死に握っていた短剣を床に落とし、四つん這いに倒れた。


「ねぇ、私がアリアの仇をとるわ。」


アリアは自分には恐れ多く望んでいない非行を、マリアが成し遂げるとを宣言したことに身を震わせた。

そして逃げるようにアリアは息を荒げ、去って行った。



マリアは早くも待ち受けていた新たな真実に心労が吹っ飛び、夜な夜な一人で今後の作戦会議をするのだった。


「私もマヤ王妃にその毒を盛ろうかしら。」


しかしマリアは被虐な事を考えれば考えるほど、気分が悪くなった。

マリアはふとどんな時もいつも側にいてくれたゼロを思い出し、泣きそうになるのを堪えた。


『私はアリセナ国のために強くならなければいけないー。』


マリアはそう何度も何度も暗示をかけるように心の中で自分に語っているうちに、眠りについてしまった。


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