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〜方虎武神伝〜 戰國転生物語  作者: 蒼井玉薔
転異の章
7/11

陸之巻 爲景

やっと前の小説で書いていた最後まで追いつきました。


爲景の副題に反してそこまで深ぼってはいないですが、あまり気にしないで下さい。


近い内に登場人物まとめ作ります。


長尾爲景の死 その訃報(ふほう)は越後中を駆け巡った。


ー上杉館ー


「何!!信濃が死んだ!!それは眞か!」


「はい!確かな筋によれば先日床で倒れたまま二度と起き上がらず息を引き取ったと…」


「よぉ〜しでかした!!邪魔な信濃が消えたとあらばワシに逆らう奴はおらん。」


「はい。左衛門様が朝廷から紺色の日ノ丸の御前旗と公方様から諱を賜ったと知った時はもうどうなるかと…」


紺色の日の丸とは正式名称“紺地日の丸“といい、長尾爲景が息子・定景を連れ朝廷に挨拶をした際、献金の礼として賜った代物であった。

爲景はこれに天賜(てんし)の御旗と名付け、大切に保管していた。


更に爲景は幕府にも頭を下げ、賄賂(わいろ)を送りその結果、将軍・足利義晴より官位と偏諱を(たまわ)り"従六位上長尾左衛門尉平朝臣晴景"を賜っていた。


「ワシも同じよ。今更だがアイツには勝てんといい加減諦めておった故ww」


当時、長尾家と上杉家は新当主・弥六郎定景の下、長い対立から和解に向かっていた。


これを機に自身も隠居し、未来のある若いモノに任せようとした上杉民部大輔(みんぶたいふ)定実は、当時奥州一体に力を持っていた伊達左京(だてさきょう)大夫稙宗(だいぶたねむね)の息子の一人を婿養子に迎え、家督を譲ろうとしていた。


当初守護代の定景は守護・定実の意向に賛同していた。

しかしそれに待ったを掛けたのが先代の守護代であった爲景だった。


「伊達の(うつろ)王國に入れってのか!!」


「落ち着いて下さい父上。洞の何がいけないのですか。皆がお互い協力しあい、広大な奥州を統一しようとしているのです。

奥羽越で協力し幕府を支えられるのであれば、それに越した事はございません。」


「たっ分かってねーな!あのジジイはな、自分の言いなりにならない奴は邪魔だと処罰するんだ。そうして自分の言う事を聞く奴らを各家にばら撒き、そこら中のいい女をかき集めては夜な夜な楽しんでる変態だぞ!」


「あのジジイに越後は渡さん。。。そうだ!金庫の金をありったけかき集めろ!」


「父上?何を?」


「ちょっと朝廷と幕府にな。」


こうして守護代というNo.2の役割でありながら、朝廷や幕府に目通り、旗や諱を賜った。

あくまで守護代は陪臣の身であるが、それでも当時の公方・足利義晴は長尾定景に従六位上左衛門尉の官位と晴景の諱を賜ったのである。


これは一重に先代の守護代・信濃守爲景が、守護の定実より力を持っている事の証明であり、幕府や朝廷もそれを認めている証拠でもあった。


当然定実からしたら迷惑の他この上なかったのだ。幕府にも見放され朝廷にも見放され、力のあるものに縋る他道は残されてなかったとも言えよう。


そんな中、目の上のたんこぶが死んだと報告が届くと、「すぐ文を出す!」と言い稙宗宛に婚儀承諾の書状を送った。



桑折(こおり)西山城ー


「ふむ。"婚儀(こんぎ)の儀、謹んでお受け致す。"と書いてある。相分かった、直ぐ支度をさせよう。」


そう呟くと稙宗はそくさく動き初めた。

それを虚な目で睨みつける若者がいた。


「………」



一方その頃。春日山城


「最大級の警戒網をしけ!!決して油断と隙をみせるな!!」


「了解!!」


当主・晴景の命の下臣下女中しんかじょちゅうが慌ただしく動き回っていた。

葬儀を執り行うにあたり、父・爲景をよく思わないモノ達の蜂起に備え籠城の構えを組んでいる。


「ご報告いたします。兄上、籠城(ろうじょう)の支度整いまして御座います。」


「よし一門のもの達を全員広間に集めよ。これより父の葬儀を執り行う。」


長尾家の動きは早く、籠城の構えを組んだ。葬儀中に急襲(きゅうしゅう)されても対抗出来るように備えてである。


一方の上杉家でも養子縁組の支度が始まり、表立った対立は起こらなかった。


しかし爲景の葬儀に緒虎をはじめ多くのものが甲冑に身を包み葬儀に出席した事実は、下剋上の世とはいえ如何(いか)にこの時代が危険であるか物語っていた。


「緒虎、女子のお主が何故甲冑に身を包む?」


長兄上(あにうえ)、ボクは強いです。故に、万が一の時は、女の身は女子のボクが守ります。兄上達はいつでも戦に出向いて頂き結構で御座います。」


「そ、そうか…勇ましいな…」 「ははっ……」



再び一方ー上杉館ー


揚北(あがきた)御館(おやかた)様に従い御後継の受け入れを承認致しました。」


「うむ、御苦労。流石は越前。手際の良い事よ。」


「滅相もございません。」


そう呟くと越前と呼ばれたモノは頭を下げ、ニヤッ!っと口角をあげた。


彼は"中條(なかじょう)越前守平朝臣籐資(ふじすけ)"。何を隠そう伊達家から婿養子に入る時宗丸の母親の兄である。


つまり伊達稙宗の側室である。


越後最大の国人衆(こくじんしゅう)である揚北衆内において、大名の縁席である事は圧倒的な力を有しており、更にここに来て上杉の名跡(みょうせき)を甥が継ぐとあらば自然とその力は増大していくモノであった。


中条の取りなしで、新たな家紋と"七郎実元(しちろうさねもと)"という元服名を授かった時宗丸(ときむねまる)はいよいよ上杉家の次期当主としての地位を確率していった。


一方で……


「このまま好き放題出来ると思うなよ…クソ親父!!」


伊達家中にて怪しい動きを見せるモノがいるのもまた事実であった。


この時、とある一人を除き誰もが、先に起こる大乱を予測できたものはいなかった。


奥羽越を巻き込んだ大乱[天文(てんもん)の乱]は目と鼻の先である。



今話をご覧頂き誠に有難う御座います。


今話からルビの数を増やしてみました。


こんなマイナーな作品読む人ならある程度の知識はあるだろうと思い割とそのままにしていたのですが、この時代以外と読みにくいものも多いので増やす事にしました。


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