亖之巻 決意
今回は緒虎がこの世界で生きる決意を固める話です。
今日は調子が悪いですが後一話は投稿しそうな勢いですw
と言うのも実は仕事でやらかしまして(−_−;)
私が謙信公に成り代わるのは不可能だ。
最初からそう肯定していた。
あの日以降どうにか色々考えてみたけど、やっぱりダメだった。
毘沙門天に何か言えれば……
そう思い毎日早くから寝床に就くも、ここ数日姿を見せなかった。
「……ふー……」
覚悟を決めねばいけないのかもしれない。
私は思った。
どう足掻いてもこの世界にいるのは私。
彼女の身体にいるのも私。
例え未来に戻った所で死人に口なし。
何もない。それなら……
それなら…私は……私は!!
林泉寺の一室
「本日の所はこれまで。では。」
「御住職様お待ち下さい。」
私は今さっきまで林泉寺住職・天室光育の授業を受けていた。
この時代では珍しいことではなく、私のような主君の子供を寺に預けて育てる事はよくある事であった。
「今日は最後に私めの夢をお聞き願えませんでしょうか?」
「ほっほっほ。これは珍しい風の吹き回し。では聞こう。其方の夢を。」
「はい。私の夢は日ノ本を統一せしめ、天皇陛下と公方様の下、男女が平等で國民一人一人が幸せ且つ安定した生活を送り、皆が一致団結してあらゆる脅威に立ち向かう。そんな冨國強兵の立派な世を私が導き、作って行きたいと思う次第で御座います。」
「まぁ、姫様ったらそげが言う事は殿型に任せておくがが良いのです。」
「そうはいきませんよ。ボクは腹を決めました。こうなった以上は掻き乱しませんと。」
お末は理解してない様子で頭に??を浮かべ首を傾げていた。
しかし和尚は違った。黙って話を聞きき、静かに口を開けた。
「緒虎。今の言葉は眞か?」
「はい。左様に御座います。」
「覚悟は出来ておるのだな。」
「……はい。」
物凄い剣幕で私の目を見つめてくる和尚。
私の心を悟り、目で答えを示せたと訴えてくる。
なら私も、と目で今の心情を訴えた。
「……うむ。よく分かった。正直今の其方に出来る事はない。心にも迷いがある。だが其方の目にはその先の未来を見つめている。ふむ…面白い!!ほっほっほっほ!!」
「何を申してあるがですか和尚!そげが事出来るわけ無ーがて!!緒虎様は女子に御座いますよ?」
「では乳母殿にお聞きするが、女が日ノ本を取れぬ理由をお教え願おう。」
「!!それは…そ、それは……」
和尚は乳母の言葉に反応し、再び覇気のある目で真っ直ぐにお末の目を見た。その恐ろしさに耐えられず答えも言えずにおろついた。
「よいですかな?人間には男と女がおります。故に男と女には出来る事と出来ない事が御座る。」
それを聞く時それ見なさいと言わんばかりにお末が立ち上がるが、和尚がさっと手を挙げると静かに座り直した。
「女と男に違いはあれど、大筋は変わらぬものに御座います。女に出来るものは男にも大体はでき、逆に男に出来るものは女にも大体は出来る。そういうもので御座います。」
「姫様は自由に生きなされ。他人の書いた筋書きに惑わされる事なく、何があっても挫けず、へこたれず前を向いて足を止めなさらな。自分の信じた道を行きなさい。
さすれば何、其方は夢を実現出来るほどの力を手にできる。じゃが。それで終わりでは何も変えられぬ。最期まで貫き通す意地を持て。諦めぬ心こそ、これ偉大也。」
「はい!」
こうして私は壮大な夢を実現する為に着実に動き始めた。
勉強にも剣術にも寺で教わるあらゆる事に真剣に取り組み、着実に力をつけていった。
一方、父のいる春日山にも私の変化の話は伝わっていた。
ー春日山城ー
「ほう、"男勝を卒業し、真面目に修行に励んでいる。"か。良いではないか。あやつもようやっと守護代様の娘という自覚を抱けるようになったのだな!感心感心。」
麓の林泉寺から送られた近況報告の文を見て父・長尾為景は満足そうに何度も頷いた。
そして「常識に反して寺に預けた甲斐があった」だの「今度会いに行こう!」だの終始明るく笑っていた。
しかし林泉寺からの書状を見て、爲景以外の家族は全員で眉間に雛を寄せていた。
書状には"武芸を嗜み早い事何でもこなせる立派な姫武将になれるよう、日々精進している。"と書いてあったからである。
数日後再び林泉寺
私は一生懸命日本刀で素振りをしていた。
この日本刀、とても重い。剣道三年の経験からしたら当然の話だけど竹刀や木刀なんて比べ物にならなかった。
疲れを知らない身体でも重さは感じるのである。
何故なら私、まだ一桁代の年齢だから!!
「緒虎」
優しく芯の通った声が聞こえる。
「あぁ…お久しぶりですね。姉上達」
綾姫達を中心とする姉達である。
「あの…今日はどんな御用でお寺に?」
実は私はこの三姉・綾姫が苦手である。
「貴女に話があります。お姉ちゃんとして」
「あ、はい。」
ー林泉寺・一室ー
「文に書いてあった内容は眞で御座いますか?」
「はい。眞に御座います。」
「そうですか。では貴女は女子だと言うことを理解しておりますね。」
「それは勿論で御座います。」
そういうと綾姉は強い口調で「では何故!」と声を荒げる。
すると側で縮こまっていた乳母のお末が口を開き
「わ、私は止めました!でも緒虎様が勝手を!!」
と言った。この裏切り者め。そう言う意味を込めギろっと彼女を睨む。それに気づいたのか彼女はそっと目を逸らした。
私は逃げられないと思い、大きく深呼吸した。
この度は本話をご覧頂き誠に有難う御座います。
次回も楽しみにして下さい。
知識不足の若造ですが、なんとか続けていけるよう頑張ります。