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〜方虎武神伝〜 戰國転生物語  作者: 蒼井玉薔
転異の章
3/11

貳之巻 緒虎

登場するキャラクターに出来るだけ方言を使わせたいけど殆ど知らない人ですw


また本作は史実に基づき、極力通称や官位で名前を呼ぶ事にしており他の作品に比べると見にくいかもしれませんが、ご了承下さい。


また上記の通り通称や官位を重視する都合上、諱しか伝わってない人物にも、親族等を参考に官位や通称を創作し、名付けております。すいません。


「実は目覚めてからというもの記憶がすっぽり抜けておりまして」


正直に伝えた。

ただ本当に本当の事を言ってしまうのはタブーだと思い、一番分かりやすく、そして影響が少なく限りなく事実に近い言い方で。


するとつい先程まで半泣きだった殿と呼ばれた男の顔は、見る見るうちに鬼の形相へと変わり「己、光育(おのれ、こういく)!!やってくれたな!!」と叫んだのだ。


「殿!」「おめ様」「「落ち着き下さい!!」」


男は脇差から刀を抜き和尚に斬りかかろうとした所を二人の女性にはがいじめにされた。


「己離せ馬鹿物!!誰か!誰か!!このハゲ坊主を斬り捨てよ!!此奴だけは許さん!!」


「んぐ!和尚様!早うお逃げくだされ、そして出来れば剛の物を連れて来て下され。春日山にお連れ致します。」


「畏まりました!!奥方様しばしご勘弁。」「うぇ〜ん父上怖いよぉ〜」


…まさに修羅場だな…なんでこんな事に……


(しばら)く後、いかにも屈強な男達に担ぎ上げられ男と泣き疲れた小さい男の子と共に部屋を出た。


最後まで「この事はお館様にもご報告致す。お前の首は必ず()ねてやる〜!!」と叫んでいた。


静謐を取り戻した部屋で二人の女性は大きくため息をついた。


「……はぁ。あの癇癪(かんしゃく)さえなければ良いお人なのですが…」


「全くです。そりゃ嫌われるがて…」


酷い言いようですね…随分辛辣(ずいぶんしんらつ)


「所で、緒虎?先程の事は誠ですか?」


「え?!あ、はい。自分の名前…その…"おとら"?にもピン…あっ、え…合点がいってないというか…何というか。

もう少しヒント…じゃなくて分かりやすいなんかこのもう少し把握できる材料があればよいのですが……」


今更だけど、多分間違いなく過去に飛ばされてる。

でもだからといってこれがいつの時代かも分からない。

室町か?戦国か?江戸か?

一体どうなってるのかも…


「奥方様…」


「えぇ分かっております。困りましたね…」


二人は顔を見合わせ雛を寄せ考え込んでしまった。

そして同じくどうしたらいいか分からない自分も、焦ってただニコニコしながら汗を流した。


「うぅ〜む、取り敢えず貴女は"緒虎"。先程の暴れ馬みたいな方・長尾信濃守(ながおしなののかみ)様の末娘よ。」


「長尾…信濃守?信濃守…信濃守…って、まさか爲景(ためかげ)!!」


「いいっ!!コラァ、何ちゅう事言うがね姫様。もし殿がまた戻ってでも来たら何言われるか(^_^;)

いくら親子でも人前でそう簡単に"諱"をくちにするもんじゃないですよ!!」


「お末。(顔で威圧)…とにかく、(いみな)でも何でもそれ程までに父の名前は緒虎の記憶にこべりついていたのでしょう。確かに言われてみれば、女子の身で女人禁止のはずの寺に、乳母と入れられ挙句、まともに父を見ずに育てばそりゃそうなりますよ。」



長尾信濃守爲景。


伊勢宗瑞(いせそうずい)斎藤道三(さいとうどうさん)織田信秀(おだのぶひで)毛利元就(もうりもとなり)松永久秀(まつながひさひで)武田信虎(たけだのぶとら)宇喜多直家(うきたなおいえ)尼子経久(あまごつねひさ)ら戦国時代を代表する九人の梟雄の一人として、『越後の梟雄』の異名を持つ。


父を死に追いやった守護・上杉房能(うえすぎふさよし)に反旗を翻し、自身に味方する周辺豪族の力を借り、激闘の末に下剋上を成し遂げると、越後上杉家の一門・上条館の上杉定実(うえすぎさだざね)を新たな当主に据え、実権を握っている。


当初は協力的だった新守護・定実も自身が傀儡(かいらい)である事に不満を募らせ、幾度も春日山を囲ったが、その都度撃退され益々求心力が下がっている。


一方の爲景も越後を完全に掌握(しょうあく)しているわけではなく常に周囲を敵に囲まれており、自由は少ない状況であった。



「父上は強くて立派な方です。故に春日の御城から出ないといけなくなる事はないでしょう。ですが、だからこそ家族の前ではあーして弱くなるがです。ですから、我々がしっかり支えてあげねば直ぐにダメになってしまうのですよ。」


成る程、しんどい時に悩みの種を増やしてしまったということか…なんか申し訳ない。


「あの男の子は?」


「兄の雨松ですね。長兄の左衛門尉殿に似て本当に優しい子です。正直性別を間違えて産んじゃったと思ってるくらいで。それに比べて貴女は、お転婆ゆう事聞かないからと、お寺に放り込まれたんですよ。挙句木登りして転落なんて…」


「そ、そうですか…」


そうか"私"は木登りをしていたのか。枝でも折れたか足でも踏み外して、頭でも打ったのだろう。その表紙に私が入ってきたと。そんな感じかしら?…あれ?じゃあこの身体の持ち主は?


「とにかく!今は安静にしとりんしゃい!良いわね?!」


「はい」


「じゃあ、私は城に戻ります。お末、何かあったら直ぐ連絡頂戴ね。」


「は、はい!」


そう言ってニコニコしながら母親は屋敷を出た。

すると少しモジモジしながら乳母の女性が話しかけてきた。


「えぇ〜、改めまして私お末と申します。なんだかな…姫様が赤ちゃんの時以来ですね。」


「あ、宜しくお願いします。」


「何が知りたいとか、御座います?私が答えられるがは答えますがに、仰って下さい。」


「あのぉ、虎千代って知ってる?」


「えっ……」


虎千代…有名なあの上杉謙信の幼名である。

緒虎、何も関係がないはずがない。

兄妹で似た名前をつけるのは昔から普通にあること。

でも確か長尾に虎の名を持つ子供は一人しかいなかったはず。


「思い出さんでいいです。その名は…」


「?えっ?何で?どーしてよ?謙信に何かあったの??」


「けんしん?と・に・か・く!その名は思い出さなくて大丈夫がーて!大体、女の身でありながら"虎千代"虎千代"とちやほやされて、貴女は男ではないがですよ!!貴女様が意識を失ったって聞いた時はもうどーしたらええかと……」


あー成る程、虎千代って所謂渾名(いわゆるこんめい)だったわけか。


…………ん?  …んん??


「えぇえぇえぇ〜〜〜!!!」


そう、何を隠そうこの緒虎という元気な女の子こそ、後世(こうせい)において戦国最強と揶揄(やゆ)される軍神・上杉謙信その人である。



もしご感想ありましたら頂けると幸いです。

頑張って続けていきます。

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