祝勝パーティーで騒ぎました
「乾杯っ!」
私達は皆で一斉にジョッキを合わせた。
ノンアルコールビールを一気に飲み干す。
その夜は三冠達成の盛大なお祝いだった。
学食の一角を借り切って、騒ぎまくるのだ。
「リア、かんぱーーーい」
ヒルダが寄ってきてジョッキを重ねる。
「もう、リアのおかげよ。まさか、皇帝陛下から帝国に留学の招待受けるなんて思ってもいなかったわ」
ヒルダが喜んで言った。
「ヒルダは行くの?」
「うーん、それは判んないけど、私が帝国への留学を勧められたのよ。皆に自慢できるわ」
「リアはどうするの。皇帝陛下としてはリアに来てほしそうだったけど」
エイミーが聞いてきた。
「えええ、まさか。そらあ、薬学には興味あるけど、この前、おばあちゃんに色々教えてもらったのよね。超特級ポーションも普通に作れるようになったし、取り敢えず良いかなって」
「えっ、そうなの」
残念そうにヒルダが言った。なんか祖母は帝国でも薬学の権威みたいだし、ここにいても時々やってきては教えてくれるだろう。私がいなくなると騎士の皆が困りそうだし。表彰式の後に皆私のところに来て、出来れば行かないでいてほしいと頼むのは止めてほしかった。
「ベッキーらはどうするの?」
「リアがいるなら、この学園にいるわ」
私の質問に、ベッキーがあっさり答えた。
「どうして? 帝国に行けばいろんなつてが得られて、ヨーク商会にとっても良いんじゃないの?」
「うーん、それはそうだけど、リアと一緒に居たほうが人脈広がりそうだし」
「そうかな」
「そうよ、リアなんて勝手に、帝国第一皇子殿下と友だちになるし」
「あれは友達というよりも、喧嘩友達よね」
「悪かったな、喧嘩友達で。お前のせいでまたオヤジにどやされたぞ」
後ろからいきなり声をかけられて私は驚いた。
「これは殿下。今まで大変失礼いたしました」
私は頭を下げる。
「やめてくれ、破壊女。お前にそんな事されると背中が痒くなる」
エーレンフリート、そう彼の本名はエーレンフリート・アーデルハイトというのだと式の後にベッキーに教えてもらったのだ。帝国の年鑑まで覚えていないし、覚えるつもりもないけど。
「どういう意味よ」
「いや、まあ、出来損ないの姉に会えた気分かな」
「何よ、それ」
私には全然判らなかった。
「あんたもお姉さんいるの?」
「正式には会ったことはないけどな」
「なにそれ、よく判んないんだけど」
「帝国はでかいなりに色々あるんだよ」
「ふうーん、色々大変なのね」
まあ、帝国のことは他人事だ。王国でも第一王子と第二王子の後継者闘いがあるらしい。人物的にはどう見ても第一王子なのだが、第二王子は王妃の唯一人の子供で、後ろ盾が10大貴族の一人だ。でも、あれでは、だめだろう。今回も私の挑発にあっさり乗ってしまって馬鹿なのを暴露してしまったし。
「姉は何でも怪力で、ドラゴンを張っ倒したことがあるみたいだ」
帝国にも凄い怪物皇女がいるらしい。私より強いみたい。
「凄いのもね」
「お前もやったことあるんだろ」
エーレンが言ってきた。私の黒歴史をほじくり返すな
「一緒にしないでよ。私はトカゲだと思ってしばいただけよ」
「ちょっと待て、どうやってドラゴンとトカゲを間違えるんだよ」
呆れて煙男が言った。
「殿下。リアに常識求めても無理ですから」
ベッキーが横から口を出してきた。それもなんか、とんでもない事をいつている。どういう意味よ。
「本当だな。周りのやつは大変だな」
「そうなんです。いつも胃に穴が開いています」
ベッキーがありえないことを言っている。
「何言っているのよ。うちの第二王子張り倒したくせに。あんたの胃はドラゴンの胃並みに強力なんでしょ」
私が言うが皇子は話題を変えてきた。
「しかし、この学園に王子が二人もいるのに、一番目立っているのが、リアっていうのも凄いな」
「存在自体が天災クラスですから」
「まあ、そうだよな、あっやばい」
そこに帝国の近衛がかけてくるのが目に見えた。
「じゃあな、破壊女、暇だったら帝国に遊びに来い」
そういうや王子は逃げて行った。
「あのクソガキ、どこに行った」
ルーカスが叫んだ。
「あっ、剣のおじちゃん」
「これはリア様。今日のご活躍、素晴らしかったです」
ルーカスは直ちに態度を変えて、褒めてくれた。
「さっきから言うように、私はそこのベッキーらの言う通りやっただけだから」
私が事実を言うと、
「ルーカス様も大変ですね。仕えるものが手がかかって」
「まあ、手がかかるほど可愛いと申しますか」
「ですよね」
二人はお互いに笑いあった。
「ちょっとそこ、なんで私を見て言うのよ」
私は文句を言った。手がかかるってなんだ。私は自分で食事も作るし服も着れる。普通の貴族みたいに手はかからないはずだ。
そう言ったら二人に呆れられた。
なんか、解せない。
「リア、今度皆でクリスマスパーティーやるんだ。参加しないか」
オーガストが誘ってきた。
「良いわね。いつやるの?」
私が聞くと
「そんなの24日に決まっているだろう」
「あっ、御免、その日先約があった」
私は思い出した。カートから北にある初めてのダンジョンに潜ろうと言われていたのだ。
王都から馬車で1日のこところにある、新しいダンジョンだそうで、土ボタルがきれいなんだそうだ。まあ、どっかで1泊することになるけど、カートの胸に抱かれて焚き火の横で寝るのも良いかも。心配なのは寝相の悪い私と私の障壁なんだけど。カートを弾き飛ばさないかとても心配だった。
「ばっかね。オーガスト。リアがその日空いているわけないじゃ無い」
ベッキーが馬鹿にして言った。
「じゃあ、ベッキーは」
「ごめん私も先約がある」
「ちぇっ、セドリックかよ。エイミーは」
「ゴメン、私もだめ」
皆クリスマスは忙しいらしい。
「ちょっと女の子の参加率が低すぎないか。なあ、ベンジャミン」
「わるい、俺も参加できないぞ」
「な、なんでだよ」
「すまん。エイミーの家にお邪魔するんだ」
「えっ、お前らいつの間に・・・・」
オーガスト以上に私も驚いていた。
「オーガストもさっさとしないと皆、彼氏持ちになるわよ」
「ふんっ、裏切り者目。俺たちは俺達だけでやるよ。なあ、ガリ」
「ごめん、俺はその日は教会に行かなきゃならなくて」
「えっ、ちょっと待って。パーティーって騎士仲間だけなわけ。誰か一緒にやろうぜ」
オーガストの誘い声掛ける声がいつまでも続いていた・・・・・・




